***サントリー美術館「蔦屋重三郎展」其の一***
11月3日からスタートした「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は
蔦屋重三郎」展へ出掛けました。会場のサントリー美術館は、六本木駅から地下で繋がる東京ミッドタウン・ガレリアの3~4階にあり、初めて行った私は迷わないようにB1の案内カウンターで最短の行き方を尋ねました。女性コンシェルジュは美人の上親切丁寧で、提示するだけで100円割引になる「あとろバッジ」をくださいました。当日券で入場するつもりだった私には嬉しい特典!ガレリアの商業施設を見ながら教えられたエレベーターで3階へ。このフロアもショップが立ち並んでいて、その一角にありました。
入口。左にミュージアムショップが。
チケット売場の正面にロッカーがあり、百円硬貨を入れて後で戻ってくるシステムのものでこれも観覧者にとって嬉しい配慮です。
時間帯にもよるのでしょうが、結構混雑していました。浮世絵とか江戸時代の書物とか地味な展示物ですが、お年寄りが少なかったのが意外でした。もっとも場所が場所だからかもしれません。これが江戸東京博物館ならば若者が少なかったんじゃないかと。
展示物が書物なので、絵画と違い硝子ケースの中に展示してあるものを覗き込まなくてはならないので、列を成して順番にのろのろと見ることになりました。じっくり見たいものは、後ろの人に「お先にどうぞ」と声を掛けて抜かしてもらいながら、何か新たな発見(自分にとっての)がないかと探しながら見ていたら、蔦重直筆の短冊がありました。この短冊を蔦重が手に持ったんだと思い、何年かは表記されていないのでわかりませんが1780年代終わりから1790年代へ魂が飛んでいきました。や、字上手いです。
これは『書画述壁』の中の蔦重(狂名:蔦唐丸つたのからまる)自筆狂歌の頁
書籍は、喜三二や春町、京伝などの作で展示されている頁も図書館で借りた本に載っていて(全ての画が載っている訳ではない)このブログにも登場してるものが多かったのが物足りませんでした。京伝の「人間胸算用」がなかったし。そのかわり、馬琴の「心学草紙」が見れたのは嬉しかったです。
書物は古本屋で売られた時に個人コレクターがセットでなくバラで(例えば本を入れた袋だけとか)購入されることが多かったのか、個人蔵の展示品にかなり貴重なものが多いように思われました。
狂歌絵本や浮世絵は、歌麿の美人画、写楽の役者絵を中心に状態の良いものがずらりと並んで豪華。中でも歌麿画・宿屋飯盛(公事宿主人で国学者・石川雅望:いしかわまさもち蔦重の親友で墓碣銘[死者の姓名生い立ち人と成りを石に刻んだもの]を書いた)撰の豪華絵入り狂歌本『画本虫撰(がほんむしえらみ)』(1788年天明8年刊)文学的にも美術的にも素晴しいもので、その画はとても木版画とは思えない繊細さ美しさで目を奪われました。彫師は名匠藤一宗。昆虫植物図鑑でも通用しそうな緻密さです。
それから山東京伝の画才に改めて感歎。京伝作品は単独で。
私が行った期間は展示されてなかったけれど、図録に載っていてラッキーだった一枚。葛飾北斎の描いた一九先輩。
『五十鈴川狂歌車』1802年2代目蔦重刊
狂歌会では狂歌人は趣向を凝らしたおかしな仮装(コスプレ)をして歌を詠んでいました。十返舎一九も頭に扇子を乗せて一句。このとき37歳。北斎42歳。