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2020-05-27 | bookshelf
『本能寺の変 431年目の真実』明智憲三郎著
文芸社文庫 初版2013年

新型コロナウィルス禍で図書館も閉館していたので、自分のものではない家にある本を読んでみました。
 今年の大河ドラマで注目の人物「明智光秀」。
歴史的大事件である本能寺の変は、学校で習うので日本人なら誰でも知っています。そのため、さほど新鮮味がなく興味もありませんでした。一連の事件は、織田信長の重臣明智光秀が主君を裏切ったという謀反、というのが明白な歴史的事実だからです。明智光秀が信長を裏切った理由には様々な説や憶測があり、その代表的なものが光秀の感情的なものだというのが一般論になっています。その他、黒幕説や生存説など現代人が発想した面白おかしい説もありますが、400年以上経った今となっては「真実」など誰にもわかるはずないであろう、と思います。ただし、真実に迫ることは可能です。その真実に迫ったのが明智光秀の子孫とあらば、歴史学者よりも信憑性があるのではないか、と興味をそそられました。
 ひとつ心配だったのは、血縁が故にご先祖様を贔屓目に見てしまう事でした。しかし、著者は自らのやり方を「歴史捜査」と名付けて、権威ある歴史学者によって編纂された歴史書に記載されてある「定説」に囚われることなく、孫引き資料を排除して信憑性の高い史料を1から研究しなおし、導き出された全ての証拠を辻褄が合うように復元するという作業方法は、合理的で読者を納得させるに足るものでした。そのように導き出された「答」(著者は結果を「答」と書いています)は定説と大きく異なり、著者自身驚いたそうです。
 私が関心を抱く古代史(聖武天皇時代より前)の書籍にしても、著名な歴史学者が著した本に記載されたものが定説となっているものの、その原典が疑問に思われるもの、また学者自身の考えに政治的な時代背景が見え隠れするのを感じることがあります。勿論、「銅鐸の謎」「邪馬台国の謎」「聖徳太子の謎」だとか古代史ファンの興味をそそる突飛な説を唱えて、それを生業にしている怪しげな歴史家もいますので、それよりは信頼できます。時代が変われば見方も変わりますし、明治大正昭和の定説が正しいとは断言できませんから、新しい発見や史料などから昔の定説とは異なる説が浮かび上がるのは合点がいきます。また、そうやって導かれた「答」が自身の立てた仮説と違ってしまう、というのは証拠に忠実に従ったが故の結果ですから、信憑性が高いと感じます。「歴史捜査」というように、信長殺害を刑事事件として捉えて証拠を探していく手法は、読者も刑事か探偵になった気分にさせられ、先へ先へと難なく読み進めることができました。だからといって、内容は決して軽いものではありません。一般人が学校では習わなかった、戦国武将の「闇」を理解しなければなりません。そして近代の政治的な「歴史」の利用も。
 明智光秀が何故本能寺の変を起こしたのか?なぜ信長を殺さなければならなかったのか?という核心に迫るあたりを読んでいたら、マザーグースのWho killed Cock Robin? (誰が殺したコックロビン)の一節が頭の中に浮かんでいました。この童謡は、コマドリcock robinを殺した犯人はスズメだと最初に唄っていますし、目撃者もいます。その後さまざまな鳥たちがコマドリの葬儀に関わりますが、スズメが何故コマドリを殺したのか、犯人のスズメがどうなったのか、という事には一切触れられていません。
 本能寺の変はこれと似ていると感じました。犯人は明智光秀だとわかっています。でも動機がいっこうに掴めません。衝動的な犯行だったのでしょうか、それとも計画的だったのでしょうか?
 定説では、光秀は信長に疎まれるようになってから彼の事を恨むようになり、茶会を開くため上洛した信長の警備が手薄だと知っていた光秀は天下取りのチャンスだと思い、誰にも告げずに独断で兵を本能寺へ向かわせた、という単独犯行説になっています。有名な「敵は本能寺にあり」ですが、そもそもこの一連のストーリーは、誰の記録したものだったのでしょうか。

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