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鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う

2009-04-06 | product
                  鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う

            卵殻、針金、木工用ボンド、エナメル、ラッカー、羽、金属タワシ、ミニチュア籠(市販品)
                 本体:高さ約8センチ(籠なし)

『鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアブラクサスという』---「デミアン」第5章鳥は卵の中からぬけ出ようと戦うby Hesseより

ドイツの小説家へルマン・ヘッセが1919年発表した作品「デミアン」は、大戦前の欧州の退廃的で惰性的な文化や既存の社会倫理観や宗教観を批判している部分があるので、当初は作品の登場人物名エーミール・シンクレール作『デミアン、ある少年時代の物語』として発表されました。やがて、作者がヘッセであることがわかり、『デミアン、エーミール・シンクレールの少年時代の物語』と改題されました。
「少年時代の物語」というタイトル通り、主人公シンクレールの少年時代から戦争で兵隊として従軍、負傷して自分の半生を思い返す…という設定になっています。
しかし、テーマは「思春期」ではなく、もっと深い世界---人間とは何か、自己とは何なのか、という命・魂を起源にしています。
青年時代を自由奔放に過ごしたヘッセ自身の経験も重ね合わせ、「自分は何のために生まれてきたのか。何をすべきなのか。自分は本当は何をしたいのか。」を追求した作品です。「はしがき」の最後の方に書かれてある文章を引用します。
すべての人間の生活は、自己自身への道であり、一つの道の試みであり、一つのささやかな道の暗示である。どんな人もかつては完全に彼自身ではなかった。しかし、めいめい自分自身になろうとつとめている。ある人はもうろうと、ある人はより明るく。めいめい力に応じて。誰でも皆、自分の誕生の残りかすを、原始状態の粘液と卵の殻を最後まで背負っている。ついに人間にならず、カエルやトカゲやアリにとどまるものも少なくない。(省略)しかし、みんな、その深みからの一つの試みとして一投として、自己の目標に向かって努力している。われわれは互いに理解することはできる。しかし、めいめいは自分自身しか解き明かすことができない。

私が、このオブジェを作るきっかけとなったのは、ある人が言った「自分は籠の中の鳥だった」という言葉でした。「籠の中の鳥」に対してはそれぞれ意見があると思いますが、私はその時はあえて何もいいませんでした。自分の考えを表す適切な言葉がなかったからです。その後、数ヶ月して子供の頃読んだヘッセのDemianを読み返していて、第5章のタイトルに出くわしました。主人公の少年が自分の家の玄関の鳥のレリーフをモチーフに描いた絵をデミアンに送ったら、不思議なかたちでデミアンから返事の手紙が届いた・・・その手紙が上記の『鳥は卵の中から~』です。
ヘッセは、主人公に「絵」を描かせました。私のイメージは平面ではなく、立体で、飛ぶ鳥ではありませんでした。頭の中でイメージはありましたが、それをどうやって現実に表せばよいのか、しばらく思考し、立体物を創ることに決めました。
だた、専門的な知識も技術も教育もないので、材料から考え試行錯誤して創りあげた作品です。
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