Brothers Quayが映像を発表し始めた1980年代、私は音楽(洋楽ROCK)につかっていました。リスナーでもあり趣味でバンドもやってました。
1980年代はRock不毛の時代と言われていましたが、70年代までのいわゆる「反骨精神」としてのRockでないROCK(もっとキャッチーでポップなもの)が生まれた年代でした。メインストリームではMTVの普及によってヴィジュアル的なスター(M.ジャクソン、マドンナ、シンディ・ローパー、デュラン・デュラン、ボン・ジョヴィetc.)が子供でも観ることが可能になった時代でもありました。
同時に、アンダーグラウンド・シーン(インディー・レーベル)の動きも水面下から浮上してきました。
多分84年頃だったと思いますが、DepecheModeの「PeopleArePeople」のクリップを観て、衝撃を受けたのを憶えています。あのハンマービートに私の頭も打たれておかしくなってしまったのです。それ以来その手のサウンドに感応するようになりました。80年代中期から90年代初期にかけて、80年代の最初へ戻ったりしながらEinsturzende Neubauten(もっぱらヴィジュアルに惹かれた)、Ministryなどのインダストリアル・ロックの虜になって聴いているうちに、どういう訳かクエイ兄弟の映像が目に浮かんでくるようになったのです。どこに共通点があったのか?
クエイ兄弟の映像にネジや歯車といった金属的な物質が多用されていたのも事実ですが、おかしなことに私は彼らの映画に使われていた音楽がエイドリアン・シャーウッドの音楽だと錯覚していたのです。
Depecheの歌詞カードのネジのイラスト&ノイバウテンのブリクサ&Ministryジャケット
それで、当時エイドリアンが係わっていたインダストリアル・ミュージックとクエイ兄弟の映像の残像が相乗効果となって、クエイ兄弟の人形アニメを再び観たいという衝動にかられることになりました。しかし、この時私は、Quayの名前も映画のタイトルも何一つ憶えていなかったのです。
私の頭の中は、数年のあいだ、得体の知れない不気味なオブジェの映像とエイドリアン・シャーウッドの砕け散ったようなサウンドがぐるぐるグルグルとまわっていました。そして、どういう経緯か憶えてませんが、美術館で無料試写会の情報を知って、そしてこれもどういう理由かわかりませんがその試写映画が自分の探している映像だ、と直感的にわかって美術館に観に行きました。
ビンゴ!
しかし、音楽はエイドリアンではなかったし、インダストリアルでもロックでもなく、クラシックと現代音楽(オリジナル)でした。