TheProsaicProductions

Expressing My Inspirations

Life of an Amorous Man Ⅲ-final

2010-06-30 | bookshelf
 好色一代男 3-終章
  
  女郎たちの会話を盗み聞きする世之介
 『源氏物語』が紫式部という教養高い女性の書いた小説で、女性向であったのに対し、『好色一代男』は男性向きに書かれたものであった。
 そこには、男が知りたい遊女の生活などが詳細に書かれてある。遊女のみならず、性欲が満たされない女達がどうやって欲求を満たしたか、ということまで赤裸々に書いてあるのだ。こういう逸話を西鶴は「人並みな女性には内緒だ」と四巻『昼のつりぎつね』で叙述している。また、年中無休で働かされる遊郭の女郎たちは、お客の前で食事をするのはご法度なので常にお腹を空かせていて、空き時間に彼女たちの話している事といえば、「胡桃あえの餅を飽きるまで食べたい」だの「私は骨抜き鶏の丸焼きか山芋の煮しめ」「山鳩」「鮑のふっくら煮を重箱に一杯食べたい」などと食い意地の張ったことばかりだと六巻『寝覚めの菜好み』で暴露していたりする。
 女性が読めば「さもありなん」な事も、男性ならば、綺麗な女がそんなことをしてるのか…と興味津々だろう。現代ならば、食事もしないトイレも行かない屁もしないと思われるスーパーアイドルたちの本当の姿を知ることができる本なのだ。

 子供が出来たら女を捨てるとか、飽きたらさよならだとか、平気で赤ん坊を捨てるとか、倫理的に許されないことも至極あっさりと描かれていて、世之介が女護の島へ船出する船に乗せたものは、沢山の*堕胎薬、性関係の道具・薬だったりと、男性本位な描き方に始終している。
 これら倫理面での感情論を抜きにすると、これらは公けでは知ることの出来ない当時の風俗的資料として貴重なものだと思う。例えば、文明開化以前日本人は肉を食さなかったと思っていたが(英国の女性探検家イザベラ・バードによると維新後も山中の農村部では鶏も食べなかったそうだが)、江戸時代にも鳥料理は沢山あったという事実がわかるなど、性風俗以外の江戸時代の庶民生活も垣間見ることができて興味深い。

 読み終えてみて、『好色一代男』から官能色を薄めて道中の風俗を多く書き加えた男にも女にも楽しめる読み物として120年後に登場した『東海道中膝栗毛』が大ヒットしたのも当たり前、と言ったら一九先輩に失礼だろうか?と思った。

 *因みに堕胎薬の一つに水銀が用いられていた


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Life of an Amorous Man Ⅱ

2010-06-29 | bookshelf
 好色一代男 2

 大阪の裕福な町人出身だとされている井原西鶴は、1682年天和2年に出版された『好色一代男』の成功後、「好色ものは西鶴」と言われるほどの人気作家になり、小説集『日本永代蔵』を述作する。しかし、この出世作『好色一代男』は、実は日の目を見るような作品ではなかったそうである。
 版下を担当した水田西吟(落月庵西吟:生年?-1709年兵庫県出身。西鶴の俳諧の門人。)の跋文(ばつぶん:後書き)によると―
 摂津国(兵庫県山陽側)に住んでいた西吟が、41歳の西鶴の庵に泊まった時、枕代わりに昔書いた文章を束ねたものを出された。それを読んだところ、その中に性風俗を書いた転合書(いたずら書き)を見つけ、面白かったのでその部分だけ集めて適当に写して農家の主婦に読み聞かせたら大爆笑だった。
―つまり、西鶴がボツにした文章を西吟が発掘して出版させたものなのだ。
 西鶴にしてみたら軽い気持ちで承諾したのかもしれないが、挿絵も描き、大坂思案橋の荒砥屋孫兵衛可心という書肆としては無名な処から刊行して、海賊版が出るくらいヒットした。

 西鶴の浮世草子は、私が親しんでいる草双紙より百年程前の元禄文化(1688-1703年)時代の大衆小説だが、少年時代から文学に親しんでいた西鶴の知識は広く、公家や幕臣などの武家出身の者にも引けをとらないものだった。特に俳諧では「阿蘭陀(おらんだ)流」と揶揄されるなど、当時の日本の常識からはみ出した人物であった。
 彼が34歳の時、9歳下の妻が子供3人を残して亡くなった。彼は妻への哀惜の念から追善のため独吟一日千句を興行した。そんな愛妻家の男が何をキッカケに『好色一代男』の基となるような文章を書いたのだろうか。

 裕福な町人出身の西鶴の経済状況がどうなっていたか私は審らかではないが、41歳の時には客用枕もないような貧しい庵に住んでいた。妻に先立たれた後子供達をどうしたのかは知らないが、約6年間貧しい庵に男独り悶々と暮らしていれば欲求不満も募るだろう。そういえば西鶴も日本をあちこち旅行していた。
 そこここで見聞・体験したことをそのまま書いても能が無いので、当時誰でもが知っていた『源氏物語』『伊勢物語』など古典文学になぞらえて、面白可笑しく書きなぐっていたんじゃないかと想像する。私は『源氏物語』も『伊勢物語』も教科書でしか知らない。『源氏物語』は現代でも女性中心に人気があるが、あんなエグいハーレクイン・ロマンスみたいなのはどうも好きになれない。『伊勢物語』は江戸時代には春本として捉えられていた向きもあったそうである。
 古臭い常識や型に捉われず阿蘭陀西鶴(当時オランダ=異国)と自ら名乗っていた西鶴のこと、格調高い文学作品とされている古典文学も、何の事はない色欲から生まれたものじゃないか、と彼を揶揄した教養人たちへ穿ち(うがち)を込めていたのかもしれない、と感じられた。
 そういった反体制意識(=ROCK魂)を秘めたエロ小説は、武家の子息の勉学の合間にも読まれ、男の欲求不満に大いに応えてくれてたんじゃないか。
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Life of an Amorous Man Ⅰ

2010-06-28 | bookshelf
好色一代男 1
 『東海道中膝栗毛』からスタートして、朋成堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)・山東京伝(さんとうきょうでん)など江戸後期の草双紙(くさぞうし)を読むようになって、もっと馬鹿話を読みたいという欲求から、江戸時代の書籍を紹介した本に載っていた井原西鶴(1642-1693年)の『好色一代男』の挿絵を見て、これは絶対笑えるだろうと踏んで図書館で借りて読んだ。
  主人公が女護の島へ出帆する図
 好色本というとエロ本かと思うが、浮世草子というジャンルの文学で、でも当時のエロ本には違いない。しかし現代のエロ小説と違って、行為そのものの描写が中心ではなく、その時代の男女の愛情または性の考え方や風俗などを主人公・世之介の目を通して語るといった趣向になっている。
 あらすじは単純である。但馬国(兵庫県日本海側)の鉱山持ちの大富豪で遊蕩者の父と、その父が身請けした3名の遊女のうちの1人を母として生まれた世之介が、放蕩の限りを尽くして好色の道(男色女色の両道。江戸時代までは両道を極めてこそ色道の大通だったそうだ。)に生きる一代記である。
  世之介9歳。召使女の入浴を遠眼鏡で覗く図
 早熟な世之介は7歳で性に目覚め、11歳で初体験、15歳で後家に産ませた赤ん坊を捨て子し、19歳で勘当。男色仲間や上手く垂らしこんだ女達の世話になりながら流浪遍歴。金銭が無くなって25歳で新潟県出雲崎(佐渡の金山への船が出る港)で魚売りになったり、山形県酒田入って福島~宮城と回り、その間もやることはやって下働きの女を孕ませているが妊娠したと知るや捨てている。遂に人妻を手篭めにしようとした現場を旦那に見つかり片小鬢(鬢は頭の左右前側面の髪のこと)を剃り落とされる制裁を受け、その後長野県の関所で「片小鬢を剃られた胡散臭い奴」として牢屋へ入れられてしまう。が、懲りない世之介は、隣りの牢に入っている女につけ文をしたりしている。この年28歳。将軍家の法事で囚人の赦免があって事無きを得たが、30歳になった世之介はそれまでに騙しすかして関係してきた女達の怨念が怪異になって現れた怪物に襲われたりもする。
  女化物に襲われる図
 そんな目にあっても反省という事を知らない世之介は、伊勢の海女たちと関係を持って、捨てられて恨みを言う海女たちを慰めようと一緒に船に乗って海に出たところ嵐に遭って死ぬ思いをしてしまう。幸い浜に打ち上げられて、助けてくれた者が昔の召使だったので、世之介の父親が死んだことを聞き、実家へ帰ると勘当を許され相続した巨万の富で女遊びを続ける。
 一生金をばら撒いても使い果たすことのできない財産があり、めぼしい遊郭も遊び倒し、日本の女にも飽きて、放蕩仲間6人と共に、女だけが住んでいるという女護(にょご)の島に向けて出帆。その後の消息は不明である。世之介60歳。

 こうして大筋だけだと笑えないストーリーであるが、実際のストーリー展開は一章ごと繋がりの深いものではなく、各ストーリーが、京都の遊郭・島原の○○太夫の事だったり、江戸吉原の高名な花魁の事だったり、場末の遊女の話だったりと、当時高名な遊郭は文化サロンだったのでそこで働く遊女は一般の女達とは別次元の、今で言うスーパーアイドルみたいな存在だったので、そういった遊女の知られざる世界・裏話・覗き見的な話が挿入されて構成されているから、一般庶民はドキドキ・ワクワクで読んでたんだと想像できる。例えば花魁の屁のひり方なんかも暴露されているし。

※挿絵は全て西鶴の自画
 西鶴の描く世之介は全くハンサムではなく、体躯も貧相。一番上の船の絵は、右の花印の幟の下で指差してる男が世之介である。
 ついでに、絶世の美女である吉野や高尾といった花魁も皆同じ下膨れ顔で華やかさに欠ける。西鶴の絵心は大したものなかったと察する。

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TV program“53stages of Tokaido”

2010-06-26 | prose
            

 6月26日のテレビ東京『美の巨人』は歌川広重の東海道五拾三次の前編でした。
東京広尾にある山種美術館で5月末から7月11日まで保永堂版東海道五拾三次の完全セット55枚の浮世絵を公開しているそうです。完全セットで表紙を見たのは初めて。保永堂が場末の書肆だったことも初めて知りました。
 東海道五拾三次の浮世絵企画を持ち込んだのは広重自身で、彼はこれを当てて風景浮世絵師として歴史に名を残すまでになりましたが、十返舎一九も最初は売れないとされて挿絵も自画、版下も自分でやるという条件で何とか出版にこぎつけた「膝栗毛」が当たってベストセラー作家に、あの井原西鶴の「好色一代男」もボツ作品だったのを門人が発掘して正式の書物屋だかわからない荒砥屋孫兵衛という無名の者が刊行して大ヒットした、という例をみても、人間どこでどう成功するのか知れないものですねぇ。
 来週の『美の巨人』は、広重の五拾三次の後半。「北斎漫画展」で浮世絵摺り体験をして以来、版画に挑戦している私には、グッドタイミングな番組。

 浮世絵版画は線が細くて細かい為、彫刻刀を巧く使えるようになるまで試行錯誤で2回試して失敗し、3度目にようやく刀の動かし方のコツがわかり楽しくなってきましたが、肩が凝る凝る....

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History novel

2010-06-17 | bookshelf
                        城山三郎著『冬の派閥

昨日NHKの歴史番組で、尾張藩主徳川慶勝とその兄弟の事をやっていました。
まさにその題材を描いた歴史小説「冬の派閥」を読んだばかりだったので、これは見なければ…と思い見ました。
幕末―ちょうど大河ドラマ「龍馬伝」と同時代―薩長(勤皇)と幕府(尾張藩は徳川御三家筆頭)に挟まれた、幕末の動乱期に光を当てられず、維新後もそれから現代になっても歴史的に注目されなかった尾張藩(慶勝を含む高須藩松平家4兄弟)の処世術と辛酸と藩士のその後などが描かれた、「もうひとつの幕末」云わば「勝てば官軍」的歴史の裏から見た幕末がよくわかる、とても興味深い小説です。
現在コインになってる旧札に印刷されていた歴史的政治家は、現在の歴史観では全く偉くもなんともない人物だったというのもわかります。
私達が知識として知っている歴史は真実だとは限らないので、別の立場から見た歴史を知るのも面白いことだと思いました。
※高須藩は現在の岐阜県海津市

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Reading a kusa-zoushi

2010-06-16 | bookshelf
 種村氏の人形についての著書をひと通り読んで、人形→美女人形→エロスという図式の理論展開に食傷気味になったので、打ち切りにしました。

 同時に読んでいた草双紙についての本は、図絵(草双紙は絵本のようなものなので絵が付いてないと意味が無い)がたくさん紹介されていて、初心者でも解り易く面白かったです。
 木村八重子著「草双紙の世界 江戸の出版文化」 
江戸の時代の文化人のブラックユーモアたっぷりで破天荒な発想は、現代人にはとても新鮮で驚かされることがいっぱいです。子供や庶民が面白おかしく読めるだけでなく、学ある人が読めばそこに秘められた洒落や雅の文学や社会風刺などが読めるので、奥が深い読み物&絵解きです。子供の読み物だった草双紙が大人の読み物へ変貌した原因は、江戸幕府の町人文化・娯楽・風俗への厳しい取締りがあったからこそ。
      赤本「桃太郎」回春型
 童話「桃太郎」は、桃から生まれる桃太郎(果生型)と川から拾ってきた桃を食べた爺さんと婆さんが若返って桃太郎を産む(回春型)とあるそうで、古いものほど回春型が多いそうです。ということは、桃太郎のオリジナルは「桃から生まれる」という非現実的なものではなく、「女性から生まれる」というリアリティのあるものだったのでしょう。それがどうして時代を経ると桃から生まれてしまうのか?思うに、子供が読むお話として不適切と判断する人によって変えられたんじゃないでしょうか。
 たぶん、昔の日本人は性に関して今では考えられない程おおらかだったから、桃を食べた爺さんと婆さんが若返って子供を作ったといっても別段なんとも感じなかったんだと思います。それよりもっと注目すべきことは、「桃のパワー」です。どうして川から流れてきたのが桃でなくてはならなかったのか。桃を食べるとどうして若返るのしょうか。果生型にしても、どうして桃太郎が生まれる植物は桃なのでしょうか。知識の無い私は審らかにできませんが、中国の伝承に、桃には不思議な若返りパワーがあるとかいうのがあるのではないでしょうか。
       
 画像下の絵は山東京伝の「松梅竹取談」(1808年文化5年)で、八百屋お七の物語に色々付会した作品。佐々木判官が蚊や蚤や虱の妖怪に悩まされてる場面です。この蚊の絵は画像左上の森島中良(このブログにも度々名が出る桂川甫周の実弟)の「紅毛雑話」(解体新書を出版した申椒堂須原屋市兵衛1787年天明7年刊行)の蚊の絵とそっくりなので、これを利用したとされています。
この「松梅竹取談」のこの場面を見た時私はふと、泉鏡花はこのお話を読んで細菌恐怖症みたいになったんじゃないかなぁと思いました。

 さて、これから私は「桃太郎後日噺」や悪玉善玉で有名な「心学早染艸(しんがくはやそめぐさ)」などを読みます。

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Great!!

2010-06-15 | sports
よーやった、日本代表!!!
本田選手の1ゴールは値千金。
川島選手のナイスセーブもよかった。
最初カメルーンもディフェンシヴで、日本は引き分け狙い、カメは後半で1ゴールして勝つ、みたいな感じを予想していただけに、日本選手が勝ち点3を取りにいく気持ちがあってよかった。岡田監督も試合開始直後はこわ~い表情だったのが、試合終了直後は目が潤んでたように見えたけど・・・。
次のオランダ戦も、勝ち点3を狙って強気のプレイをしてほしい。負けたって失うものなどないんだし。当たって砕けろです。
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wish

2010-06-06 | prose
政権交代してもやっぱり2世3世総理は軟弱で、辞任すれば済むとでも思ってんのか無責任に職務から逃げてしまう。
 新首相には、「辞任」ではなく「慈忍」(徳川宗春著『温知政要』より)の精神で施政してほしいと思う。


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