好色一代男 3-終章
女郎たちの会話を盗み聞きする世之介
『源氏物語』が紫式部という教養高い女性の書いた小説で、女性向であったのに対し、『好色一代男』は男性向きに書かれたものであった。
そこには、男が知りたい遊女の生活などが詳細に書かれてある。遊女のみならず、性欲が満たされない女達がどうやって欲求を満たしたか、ということまで赤裸々に書いてあるのだ。こういう逸話を西鶴は「人並みな女性には内緒だ」と四巻『昼のつりぎつね』で叙述している。また、年中無休で働かされる遊郭の女郎たちは、お客の前で食事をするのはご法度なので常にお腹を空かせていて、空き時間に彼女たちの話している事といえば、「胡桃あえの餅を飽きるまで食べたい」だの「私は骨抜き鶏の丸焼きか山芋の煮しめ」「山鳩」「鮑のふっくら煮を重箱に一杯食べたい」などと食い意地の張ったことばかりだと六巻『寝覚めの菜好み』で暴露していたりする。
女性が読めば「さもありなん」な事も、男性ならば、綺麗な女がそんなことをしてるのか…と興味津々だろう。現代ならば、食事もしないトイレも行かない屁もしないと思われるスーパーアイドルたちの本当の姿を知ることができる本なのだ。
子供が出来たら女を捨てるとか、飽きたらさよならだとか、平気で赤ん坊を捨てるとか、倫理的に許されないことも至極あっさりと描かれていて、世之介が女護の島へ船出する船に乗せたものは、沢山の*堕胎薬、性関係の道具・薬だったりと、男性本位な描き方に始終している。
これら倫理面での感情論を抜きにすると、これらは公けでは知ることの出来ない当時の風俗的資料として貴重なものだと思う。例えば、文明開化以前日本人は肉を食さなかったと思っていたが(英国の女性探検家イザベラ・バードによると維新後も山中の農村部では鶏も食べなかったそうだが)、江戸時代にも鳥料理は沢山あったという事実がわかるなど、性風俗以外の江戸時代の庶民生活も垣間見ることができて興味深い。
読み終えてみて、『好色一代男』から官能色を薄めて道中の風俗を多く書き加えた男にも女にも楽しめる読み物として120年後に登場した『東海道中膝栗毛』が大ヒットしたのも当たり前、と言ったら一九先輩に失礼だろうか?と思った。
*因みに堕胎薬の一つに水銀が用いられていた
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/60/d0/96c2704cf5f121067944042097e430bc.jpg)
『源氏物語』が紫式部という教養高い女性の書いた小説で、女性向であったのに対し、『好色一代男』は男性向きに書かれたものであった。
そこには、男が知りたい遊女の生活などが詳細に書かれてある。遊女のみならず、性欲が満たされない女達がどうやって欲求を満たしたか、ということまで赤裸々に書いてあるのだ。こういう逸話を西鶴は「人並みな女性には内緒だ」と四巻『昼のつりぎつね』で叙述している。また、年中無休で働かされる遊郭の女郎たちは、お客の前で食事をするのはご法度なので常にお腹を空かせていて、空き時間に彼女たちの話している事といえば、「胡桃あえの餅を飽きるまで食べたい」だの「私は骨抜き鶏の丸焼きか山芋の煮しめ」「山鳩」「鮑のふっくら煮を重箱に一杯食べたい」などと食い意地の張ったことばかりだと六巻『寝覚めの菜好み』で暴露していたりする。
女性が読めば「さもありなん」な事も、男性ならば、綺麗な女がそんなことをしてるのか…と興味津々だろう。現代ならば、食事もしないトイレも行かない屁もしないと思われるスーパーアイドルたちの本当の姿を知ることができる本なのだ。
子供が出来たら女を捨てるとか、飽きたらさよならだとか、平気で赤ん坊を捨てるとか、倫理的に許されないことも至極あっさりと描かれていて、世之介が女護の島へ船出する船に乗せたものは、沢山の*堕胎薬、性関係の道具・薬だったりと、男性本位な描き方に始終している。
これら倫理面での感情論を抜きにすると、これらは公けでは知ることの出来ない当時の風俗的資料として貴重なものだと思う。例えば、文明開化以前日本人は肉を食さなかったと思っていたが(英国の女性探検家イザベラ・バードによると維新後も山中の農村部では鶏も食べなかったそうだが)、江戸時代にも鳥料理は沢山あったという事実がわかるなど、性風俗以外の江戸時代の庶民生活も垣間見ることができて興味深い。
読み終えてみて、『好色一代男』から官能色を薄めて道中の風俗を多く書き加えた男にも女にも楽しめる読み物として120年後に登場した『東海道中膝栗毛』が大ヒットしたのも当たり前、と言ったら一九先輩に失礼だろうか?と思った。
*因みに堕胎薬の一つに水銀が用いられていた