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after reading "Das Spiegelbild theater" 1

2021-01-14 | bookshelf
逢坂剛 著『鏡影劇場』新潮社2020年9月刊

新聞の書評欄で、久しぶりに私の尊敬する評論家の名前を見つけました。
逢坂剛という作家の『鏡影劇場』という本のレヴューで、掲載されたコラムの真ん中には、"ドイツ文学への愛"と大きな文字が書かれてありました。
最近の小説家に疎く、恥ずかしながらこの作家の名前の正しい読み方も知らない私は、お堅い学術書の類いなのかと思いましたが、E.T.A.ホフマンという文字が目に付き、食指を動かされ読んでみました。どうやら学術書などではなく、19世紀ドイツの文豪E.T.A.ホフマンの伝記+ミステリーという趣向の日本が舞台の現代小説だと判明。ちょうど本を読む余裕ができた頃でもあったので、ネットで中古本を取り寄せました。
書評の最後に、謎が解けるくだりから袋綴じになっていると書いてありましたが、中古本なので期待はしていなかったものの、何と新品同様の代物が届きました。ハードカバーはお高いので、よい買い物をしました。
さて、19世紀ドイツの作家の作品を読んだことがない人、ホフマンなんて作家聞いたこともない人にとってはハードルが高そうに思われそうなこの作品。確かに作中に出てくるホフマンに関する報告書や、その報告書の翻訳をこなす、この『鏡影劇場』を書いたとされる本間鋭太(ホンマ エイタ)なる人物による注釈の部分は、ホフマンに少しも興味がない人にとっては退屈かもしれません。
しかし、そこはミステリー小説たるこの作品の強みで、「ホフマン文書」とも云える報告書を書いたヨハネスの正体は?本間鋭太とは何者なのか?報告書を発見し翻訳を依頼した倉石夫妻との関係、さらに本間と倉石夫妻の仲介をする本編の主人公(?)古閑沙帆や謎めいた登場人物(名前しか登場しない者もいます)たちとの因果関係等々・・・謎解きのためにとりあえず先へ先へと読み進んでしまいます。ショートカットしたくても、そこはほれ、袋綴じになっているので作者の意のままに読み続けるほかないのです。
本物であれば大発見になるかもしれない「ホフマン文書」の謎解きと、本編に登場する人物たちの不思議な因果関係が同時進行し、更に本間鋭太による「ホフマン文書」の内容に関する考察などが組み込まれ、読者の脳は少々混乱させられるかもしれませんが、勘の鋭い人ならば、ドイツ文学の知識がなくても、ちりばめられたヒントを基に登場人物たちの相関図がおぼろげに浮かび上がってくることでしょう。その頃には、袋綴じを開封するところまできているかもしれませんが。
そして遂に綴じられていたページをピリピリと開くと、「ホフマン文書」を書いたヨハネスの正体が明かされます。登場人物たちの謎は何となく早い段階で察しがつきましたが、ヨハネスの正体は思いつきませんでした。何故かという説明もされているので、ナルホドと納得。
謎は解けたのでこれで終わり、と思いきや、本当の"謎"はここから始まるのでした。
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