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found a sensational old issue 3 excursus

2014-12-14 | bookshelf
先の記事found a sensational old issue の余談です。
 ターディスに乗って偶然訪れた200年後の日本。
お騒がせな古書を見つけたために、よく見ることもできませんでしたが、帰りのターディスの中でDoctorが面白い事を教えてくれました。
 書店から印刷本が消えたのは、読書人口が減った為でも紙資源の節約からでもなかった、という事です。

 この200年の間に増え続けたゴミ対策問題は世界規模で対応することになり、CO2排出の早急な削減も相まって、先ず可燃物を極力生産しない政策が、国際廃棄物対策委員会によって各国に通達されたそうです。
 これによって直ちに実行されたのが、読み捨ての確率が高い印刷物の発行禁止でした。ゴシップ週刊誌はもとより学校で使う教科書が全世界から消えたそうです。小説の類いは、幾度となく起きた世界規模の災害によって都市が崩壊(!)した際、紙媒体の書籍が被害を受けてしまい、それを契機に電子化することに決め、国際図書出版連盟が選出した作品のみ印刷物として出版されることになったそうです。私が日本橋の書店で見た「○○賞おめでとう!印刷本で発売です」の意味が、ようやく理解できました。
 短い滞在だったので、街中がどうなっていたのかよく見ていませんでしたが、日本列島を襲った、巨大地震と津波、火山爆発による災害などは、東京のような大都市にも多大なダメージを与えたようです。耐震構造がしっかりした建物は倒壊はしなかったものの、高層建築物から落下したガラスが、悲惨な結果を招いたといいます。また、高齢者の多くが避難に手こずり犠牲になりました。それ以来、超高層建築物の建設は禁止されました。高層マンションの上の方に住みたがる人がいなくなったのも一因だったという事です。

 私はターディスの中で、そういえば日本橋界隈の空が開けているような気がしたことに気がつきました。Doctorの説明は英語だったので、私の理解が正しいかどうかは定かではありませんが・・・
 教科書が印刷本じゃなくなった、というのが意外でしたが、考えてみれば教科書ほど時代や権力によって内容が変化する、当てにならない読み物ってないなぁ、と思いました。特に「歴史」なんて。
 少し前、5歳児並みの疑問を解くため関連本を読んでいたら、古代史へ足を突っ込むことになってしまいました。日本国の歴史・・・え?私が教えられてきた日本国の歴史って何だったんだろう? 『日本書紀』恐るべし、です。
 
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found a sensational old issue 2

2014-12-11 | bookshelf
『平成うろ覚え草紙』の断片
左に「吊上駕籠」、右に「回り階段」と書いてある

 Doctorにお礼の言葉とさよならを言って、早々にパソコンで『平成うろ覚え草紙』なる本を調べてみました。結果は・・・
「著者は歌川芳細(うたがわよしこま)という江戸時代の浮世絵師。出版されたのは安政七年二月、西暦になおすと1860年になります。(略)
不穏な情勢が災いしたためか、この本は、すぐに幕府から発行禁止の命令を受けました。発行数が極端に少なく、今まで現物が発見されずに、題名と出版にまつわる不思議な逸話だけが伝わっていました。その逸話というのは、このようなものです。
 ある絵師が、誰も見たことがないものを描きたいと神仏に願っていた。すると、あまりの情念のためか、本当にはるか未来の世に迷い込んでしまった。しばらくして戻ってきたはよいが、ショックのためか、どうにも記憶があやふやである。しかし、取るものも取りあえず筆をとってあらわした。それが、『うろ覚え草紙』である。
(略)さて、それから百年以上も経った昭和四十六年のこと。群馬県前橋市の旧家で、蔵の解体作業中にその幻の『うろ覚え草紙』全五編が発見されたのです。当初は、意味不明な絵も多く、荒唐無稽なものとして学者たちの研究対象から外されていたのですが、ここ数年の再調査で、平成以降の社会と符合する点が新たに数多く見つかり、歴史、いや科学の根幹を揺るがす一大発見なのではないかということで、一躍、あらゆる学界を巻き込んでの大論争が起きているところなのです。
 本書は、その時発見された『うろ覚え草紙』を、翻訳し紹介するものです。(以下省略)」
という前書きを、館林大学文学研究センターの洞田創(とだはじめ)なる人物が書き、文化・文明・流行・子供など幾つかのカテゴリーに分類し、編集された『うろ覚え草紙』が現代語訳・注釈とともに掲載されていました。
 この本がパロディであることは、一目見てわかりましたが、著者には騙されました。本当にそういうセンターに属する研究者か大学の先生が、お遊びで作ったのだと思ったのです。それほど、この本はよくできています。改めて紹介します
 『平成うろ覺え草紙』洞田創 著 2014年飛鳥新社刊 1389円+税
 特に、途中に挟まれた、草紙が発見された経緯や、学界や研究者からの扱われ方、時代の流れに伴う草紙への見解の変化など、著者(ここでの監修者)による解説は、もちろん創作文ですが、この分野の専門書を読んだことがない人なら、「なるほど」と納得させられ、読み慣れている人は苦笑感心することでしょう。洞田研究室では「赤外線吸収インキを用いた文献鑑定」で年代を測定していましたが、できれば、放射性炭素C14年代測定法を採用してほしかったですが(笑)。
 本文(うろ覚え草紙)中にも突っ込み処はありますが、そこはご愛嬌でしょう。例えば、「男の妓楼はやること」では婦人が吉原で遊ぶ様を取り上げていましたが、幕末では地方の豪商婦人たちが吉原のお座敷で一席設けて遊んでいましたし、男芸者(男の格好をしたままの)もいたので、芳細にはさほど驚くことでもなかったのでは、と感じました。
 しかし、これだけネタを集めるのも一苦労だったと思います。本文は、一種の「絵解き」で平成の世の風刺とも捉えられます。『ガリバー旅行記』と比較するのは大袈裟でしょうが、そんな意味も含まれているのかなぁと感じました。
 著者のプロフィールによれば、イラストレーターさんだそうです。本文の浮世絵調挿絵は全て著者の作なので、よほど江戸の絵草紙などがお好きなようです。芳細のように文才もあるので、このような面白い本を作れたのだと思いました。医学書編、本草学編など作ってもらえたら、面白いなと思いました。
 
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found a sensational old issue 1

2014-12-08 | bookshelf
江戸末期に発禁になり、平成時代に研究まとめられたという書籍
『平成うろおぼえ覺え草紙』2014年10月初版
右下に「館林大学文学研究センター 監修 洞田創」と書いてある

それは、まだ薄手のジャケットでも汗ばむような季節のことでした。
戸外の木々の彩りに誘われて、ふらふらと外を歩いているとターディスがありました。
 Time and Relative Dimension In Space 通称TARDIS
 
何故こんな所にターディスが?・・・深く考えずに入ってしまったのが後の祭り。
外へ出たら、200年後の日本でした。
 もちろん、最初はいつだがわかりませんでしたが、過去ではないことは明白でした。でも街の風景は近未来的でもなんでもなく、違和感は覚えませんでした。そこは見たことのある場所で、どうやら日本橋の本屋のビルの前だと気付きました。
 驚いたのは店内に入ってからでした。本が一冊も置いてなかったのです。いえ、本や雑誌は売っているのですが、紙媒体ではなかったのです。棚には見慣れた陳列の仕方で、本の背表紙が並んでいましたが、よく見るとそれはボードに印刷してあるだけでした。
 どうやって本を買うのか観察していると、客がタブレット端末をタイトルにかざして、ひとしきり画面でチェックした後、画面をタップしてそこを立ち去って行きました。どうやら現代(平成の世)の図書館蔵書検索機能のような画面が見れて、更に試し読みもでき、購入はネットショッピング形式で、荷物を持たず帰れるような仕組みでした。それならわざわざ書店に来る必要がないと思われますが、特に読みたい本がない場合、本の背表紙を眺めて面白そうな本を見つけたい、という人間の欲求は変わらなかったようです。
 それに、よく見ると、紙の本も置いてありました。紙の本、私たちが普通に文庫本と呼んでいる本ですが、古典の棚には見慣れた明治の文豪の名作、昭和・平成時代に出版された名著といわれたような本が並んでいました。それから、この時代の作家の本でしょうか、「○○賞おめでとう!印刷本で販売です!!」と画面に映し出された文字を背景に、平積みしてありました。
 そのビルに、アンティークブックを扱う書店が入っていたのを思い出し、行ってみました。果たして、Y堂は存在していました。「今月のおすすめ品」のコーナーに、絵草紙が陳列してありました。その中に「江戸時代にコンピューターが?! 謎の絵草紙発見!」と書かれたキャプションがあり、横にばらばらになったページが幾枚か並べてありました。
  
左の画には「鼠の手を借す」、右の画には「吸屑桶 家の屑を吸う」
と江戸変体文字で記されていました。
 なんと、この本は平成時代に見つかった江戸時代末期の草紙を編集したもので、その内容がこの時代(平成から200年後)が認識していた日本の歴史と科学技術の進歩を覆すものだと、物議を醸しだしていたのでした。
 私も初めて見た(知った)絵草紙でした。ばらばらになったページ数枚と薄汚れた表紙しか存在しないために、この本については調べようがなく、「館林大学文学研究センター」という機関の情報もでてこない、という事でした。
 題箋に「平成」と付いているから、平成に戻れば何かわかるかもしれないと思い、せっかくの未来見物も打ち切ってターディスに乗り込むと、幸いにもDoctorがいたので元の場所へ戻してもらいました。
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