穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

前戯がながい叙事詩、D.フランシスの名門

2010-03-25 07:49:09 | ミステリー書評

Who’d done itではない、howである。前技(戯?)*が長い。400ページを超える本で300ページ近くになって本筋に挿入。ペースは緩やか、叙事詩ペースと言ってもよい。

*このことばは広辞苑公認ではないらしい。

此処まで読めば、布石からwhoは分かっている。よほど鈍い読者出ない限り。Howの興味で最後までページをめくらせるのがフランシスの腕力である。

原題はBanker、これを名門と訳すのはどういうつもりか。このハヤカワシリーズは首をかしげるようなタイトルの訳が多いが、この名門はおかしい。せめて言うなら名血だろう。

出てくるのは中規模ブリーダーが超名血の種馬を購入する。それに異例の巨額融資を行う若手銀行家。インチキ治療師。馬に民間療法の薬草を与えたり、インチキ薬を与えたり、手当(手かざし)療法をするテレビで人気の馬医者といった顔ぶれである。

さて、予想どおり悪いのはインチキ馬医者ということが分かるわけだ。DF全作に言えることだが終局はごたついてよくない。本筋への突入突入部あたりは期待を持たせたのだが。