穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

いやったらしいアカに心が染まるとき

2015-01-03 15:51:04 | ティファニーで朝食を

原文で「ティファニーで朝食を」を見たらredsとある。色を複数形にするとどういう意味になるのかな。英文法を知らないので分からないが。

ホリーが言っている意味は前々回紹介した通りだが、これを村上春樹のように「アカ」と訳すのはどうみても不適切である。ブルーはカタカナで書いてもほかに日本語に該当するものがないが、アカは垢、赤、紅、閼伽などポピュラーなものでも沢山の単語がある。

また、共産主義者をアカというのも一般的に使われた。今ではあまり見かけないが。何しろこの本が出た1958年というのはアメリカでもマッカーシー議員の「アカ狩り」が猖獗を極めた頃ではなかったか。 

ブルーが日本語として通用するように、現代日本人にはレッドというカタカナも伝わる。せめてアカとせずに、レッドな不安な気分、あるいは嫌ったらしい気分とでも訳すまでが許容された限度だろう。 

こういう不適切な訳に一カ所でもぶつかると、翻訳全体がかなりいい加減にやっつけているのではないか、という疑念もわく。

流していてつい訳し間違えるということは有るが、この箇所は訳していてどうしても引っかかるところだろうから、ちょっと翻訳全体の信憑性に疑問符がつく。



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