穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

最後の者たちの国で

2019-07-19 11:20:31 | ポール・オースター

 オースターの初期の作品である該書を読んだ。彼の作品は出来るだけ執筆年代順に読んでいるのであるが、何故今頃読んだかと言うと書店で見かけることがなかったからである。

  オースターの本はおおきな書店でもあまり品ぞろえがない。せいぜい新潮文庫で初期作品が3冊くらい、たまに5,6冊あるところがあるが単行本はまず見かけない。自転車にぶつけられないで一日一万歩を稼ぐには大型商業モールか大型書店の中を歩くのが一番安心である。そんなわけで大型書店も毎日覘くのであるが「最後の者たちの国で」は見たことがない。

 一度店員に調べてもらったら絶版で再版の予定もないとのことであった。図書館に行けばあるだろうが、図書館から本を借りることはしない。古本屋とかアマゾンで調べれば古本はあるだろうが、古本も買わないから今まで読む機会がなかった。それが先日某所某日に某書店の棚にあったので贖った。

  訳者は例によって柴田元幸氏であるが、あとがきに読者からこの本が一番好きだと言われたと書いてある。どうしてだろう。人気がないから書店に出ないのか、ほかに理由があるのか。この後書きによるとアメリカでもこの本は「埋もれてしまっている」そうである。

  ディストピア小説(ユートピア小説の反対)という世間の評価があるらしい。一読荒廃した国というか地域というか、小説の舞台を読んで北朝鮮を連想した。読後の印象だがほかの作品に比べて市場性がないということはないと思うのだが、どうして書店に表れないのだろう。念のために奥付を見ると、2005年7月20日第七刷発行とある。再版ではない。すると、何かの拍子に書店の倉庫の中から店員が見つけて並べたということかな。

  例によって失踪がキックオフになっている。ジャーナリストの兄が取材にいった国で音信不通になったので妹が探しにいくというわけ。この辺も北朝鮮みたい。

  もっとも、最近はオ-スターの単行本でも古い年月の奥付のものが書店に出てきた。需要が出てきたのだろうか。

 

 

 

 

 


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