荻原浩「砂の王国」。正確に言うと「教団を作って壊される(壊れる)はなし」である。上下二冊(文庫)。PR(Position Report )、上巻読了。平成22年下半期直木賞候補。その二年前に出た先行作品がある(設定が似ている)ということで落選した。良い線までは行ったらしいが。
作者はその後別の作品で直木賞を取っているから筆力はある。先行作品というのは篠田節子の「仮想儀礼」である。この本は直木賞の評を見て当時読んでみた。当ブログでも取り上げたが肝心の「砂の王国」は最近まで未読であった。
もうよく記憶していないが、それほど似ているとも思えない。この程度を先行作品(模倣という意味だろうが)とするなら類似のケースは多いのではないか。同じようなテーマ(ストーリー)を扱っても歴然たる差異があるものと、本当の模倣とは違う。ま、すっかりと忘れているので「仮想儀礼」はもう一度読んでみよう。例によって読後該書は捨ててしまったので現在は手元にない。文庫になっているらしいからその内に再読するか。
とにかく、上巻を読んでいても篠田版を思い出すことはなかった。読書興趣が尽きないというわけではないが、読み続けさせる腕力は筆者にはある。
お断り:井上夢人の『ダレカガナカニイル』を80ページほど読んで書評を載せたが、こちらの方は読み続けさせるだけの内容からはほど遠い。中途半端になっていることをお詫びする。いずれ暇になったら続けるかも知れない。大森望氏が絶賛しているが理解出来ない。京大クランだからかな、ご推奨になるのは。