min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

スティーヴン・ハンター著『黄昏の狙撃手(上・下)』

2009-11-13 07:05:37 | 「ハ行」の作家
スティーヴン・ハンター著『黄昏の狙撃手(上・下)』 扶桑社ミステリー 2009.10.30 第1刷 各800円+tax
原題:「Night of Thunder」(爆音の夜)
オススメ度:★★★★☆

言わずと知れた「ボブ・リー・スワガー」シリーズの最新作である。前作『四十七人目の男』にて現代日本を舞台にしたチャンバラ小説に挑戦?したもののあえなく頓挫。同シリーズの熱狂的ファンをがっかりさせたものだ。
著者のハンターさんもいよいよお終いか!?という周囲の危惧を覆すべく帰って来たのが本作である。
ボブももう63歳となり、往年の馬力、しなやかさそして鋭さは陰を潜めたかに描写されるも、「ここ一番!」という時の“爆発力”と“練度の高い技術”はしっかりと持っていることを証明した一書である。

さて、ストーリイであるが舞台を再びアメリカに移し、ボブは愛妻と新たな養子の女の子ミコ(日本人)と共に田舎暮らしを楽しんでいた。
そんな中、長女ニッキが交通事故に遭い意識不明の重態となった旨の一報が入り、ボブは一瞬自らの過去の亡霊の仕業か?と戦慄した。
ニッキはNYの大学を卒業しヴァージニア州ブリストルの新聞社に就職して記者となっていた。その彼女は最近地元に蔓延する覚醒剤を追って取材しており、どうも事の真相に近づき過ぎた為刺客が送られたものと思われた。
ボブは単身、独自の捜査に乗り出す。
正体不明の敵はそんなボブの命もつけ狙うことに。果たしてニッキは意識を取り戻すこが出来るのか、そしてボブは自らと家族を守り切ることが出来るのか!?ということになる。
原題からも推察されるが、舞台となるブリストルは「ナスカレース」が開催される地である。同レースには馴染がないが「インディー500マイルレース」のようなものであろう。
仕組まれた犯罪はこのレースに絡むようであることから、激烈なカーチェイスと銃撃戦が展開されよう事が期待できる。
だが、どうも本来のこのシリーズが持つ“重厚さ”に欠ける、という印象を持ったのは私ひとりであろうか?
この先本シリーズが存続する可能性を語る時、著者ハンター氏の健康上の問題さえなければ今後の展開は日本人の養子ミコの成長にかかっている!と断言しても良いのではなかろか?
というのもこれ以上スワガーサーガを続けるネタはなく、ボブ自身は引退せざるを得ないのが現状であるからだが。とまれ、異色でありかつ秀逸な同シリーズが存続することを切に願うものである。