min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

真保裕一著『発火点』

2008-09-22 08:38:57 | 「サ行」の作家
真保裕一著『発火点』講談社文庫 2005.9.15一刷 819円+tax

オススメ度★★★☆☆

父親が殺された場合、単に病死した場合とは違い、かくも残された子供は卑屈になってしまうのだろうか。
僕も7歳の時親父が病死し、その後同級生の母親から「お父さんは何をしておられる方?」と聞かれ「死んでしまいました」と応えた時の相手のうろたえる姿が今になっても憶えている。幼心にもかえって相手が気の毒に思ったくらいだ。だが、殺されたとなると反応はやはり劇的に違ったのであろうか。

本編の主人公はこの時12歳であった。彼にはもうひとつ事情があった。それは父親の殺害に自分も関与したのではなかったのか、という思いがあった。
父親を殺害したのは父の小学校か中学校時代の同級生であったのだが、ある夏の日その同級生が自殺に失敗し彼を自分の家においてあげたらと母親と共に提案したからだ。

12歳の少年敦也は今21歳となり、どうして父の友人が犯行に及んだのであるか、その真相を確かめずにおかれなくなった。
結局、事の真相を突き止めない限り今までの自分のあまりにも卑屈な人生を修正できないと感じたからだ。それほど父亡き後の9年間は悲惨な状況にあった。

本編は主人公敦也の、失われた9年間を取り戻すための真相究明のミステリーなのであるが、著者があとがきで書いている通り、
【作者の愛着と評価は別物だ。作者が過剰な思い入れを込めてしまうと、作品が窮屈になってくる面がある】
まさにその状態になってしまった感がある。

ところで最後の最後に再会した子連れの相手は一体どっちだったのであろう?
未だに釈然としないのは私ひとりであろうか。




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