深緑野分著『戦場のコックたち』東京創元社2015.8.28 第1刷1,900円+tax
おススメ度: 星4つ
欧米を舞台にした小説で日本生まれの日本人作家で、登場人物が全て外国人というか日本人が一人も登場しないという小説は、僕が知る限りヨーロッパの中世を中心に描く作品群で知られる佐藤賢一氏を思い起こす。
それも年齢は不詳ながらまだ30代と思われる女性が描く題材が第二次世界大戦での米軍内の青春群像というのも驚きだ。
そして主人公コールの軍隊での職務はコックなのである。米英を中心とした連合国軍のノルマンディー上陸からベルリン陥落まで描いているのであるが、戦場におけるコックという立場でどのような物語展開をするのであろうか?と読む前から想像してわくわくしたものだ。だが良い意味で大いに予想を裏切られた。
この作家の感性と創造力には感服した。
戦争小説としては題名から推して激しい戦闘場面など想像できないが、戦争を通しての戦友との友情、人類愛、敵兵への憎しみ、内輪の裏切り、などなどあらゆる事柄が主人公の周りで起き、彼を翻弄する。
しかしそれらを一つ一つ乗り越えながら主人公は成長して行く。そして最後に彼を迎える運命とは。戦争小説である以上過酷な戦闘場面も登場するし、残虐行為も描かれるのであるが、やはり主人公そして周囲の人々の心理描写の中から女性としての優しさが伝わりそれが心地よかった。望外に感動した一作となった。
おススメ度: 星4つ
欧米を舞台にした小説で日本生まれの日本人作家で、登場人物が全て外国人というか日本人が一人も登場しないという小説は、僕が知る限りヨーロッパの中世を中心に描く作品群で知られる佐藤賢一氏を思い起こす。
それも年齢は不詳ながらまだ30代と思われる女性が描く題材が第二次世界大戦での米軍内の青春群像というのも驚きだ。
そして主人公コールの軍隊での職務はコックなのである。米英を中心とした連合国軍のノルマンディー上陸からベルリン陥落まで描いているのであるが、戦場におけるコックという立場でどのような物語展開をするのであろうか?と読む前から想像してわくわくしたものだ。だが良い意味で大いに予想を裏切られた。
この作家の感性と創造力には感服した。
戦争小説としては題名から推して激しい戦闘場面など想像できないが、戦争を通しての戦友との友情、人類愛、敵兵への憎しみ、内輪の裏切り、などなどあらゆる事柄が主人公の周りで起き、彼を翻弄する。
しかしそれらを一つ一つ乗り越えながら主人公は成長して行く。そして最後に彼を迎える運命とは。戦争小説である以上過酷な戦闘場面も登場するし、残虐行為も描かれるのであるが、やはり主人公そして周囲の人々の心理描写の中から女性としての優しさが伝わりそれが心地よかった。望外に感動した一作となった。