min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

樋口明雄著『ブロッケンの悪魔』

2016-08-06 15:29:07 | 「ハ行」の作家
樋口明雄著『ブロッケンの悪魔』 角川春樹事務所 2016.2.8第1刷 1,800円+tax


.おすすめ度: 星4つ


著者が最も得意とする山岳冒険小説である。加えて主人公は山梨県警の女性山岳救助隊員とその相棒ボーダーコリー犬。そして退役現役の自衛隊員によるテロによっって東京都民1300万人がその人質とされるというスリリングな物語展開となる。
テロの首謀者鷲尾元一等陸佐が経験したカンボジアPKOでの部下の死また3.11大地震による福島原発での息子の死。どれをとっても自衛隊上層部そして政府の対応の酷さは鷲尾をして「復讐するは我にあり」という思いに至ったのは無理もない。そして作中でも述べられるのであるがこうした政府だけではなく彼らを影で支え続けた国民にも大いに責任の一端があることをしてきする。ちょっと引用させていただくと「無気力でむかんしんqで刹那的に生きてきて、自分で未来を選ぼうとしない愚かな日本人に、われわれが見てきたものをわからせたかった。無責任という逃げ道を作りながら開く事なき暴走を続ける政府と、それをなし崩し的に容認する無自覚な日本人そのものが、われわれの標的だった。」
誠に共感する一節である。日本の現行政治そのもの、それを支える愚民そのもの現状。いつも思うのだが、小説世界の中ではかまわず殺戮してほしいw。綺麗事の物語展開よりも作者が真に臨む方向で突き進んでほしい。日本人は多大な犠牲者が出ない限り真剣に受け止めやしないのだから。