min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

大沢在昌著『鮫島の貌』

2015-06-05 10:54:33 | 「ア行」の作家
大沢在昌著『鮫島の貌』光文社文庫 2015.5.20

おススメ度:★★★☆☆

「新宿鮫」シリーズは1990年の「新宿鮫」から2011年の「絆回廊」までの10作品がある。初めて「新宿鮫」を読んだ時の衝撃は今も忘れない。
いわゆる警察小説というジャンルは当時既にあったものと思われるが、同シリーズの主人公鮫島刑事のような人物にお目にかかったことはなかった。
キャリア試験に受かり、公安警察に配属となった鮫島がそこで出会った公安警察の光と影。その影の部分でどうしても自分に納得のいかない事案に遭遇し、その闇を抱え込んで警察内部に踏み止まった鮫島を待っていたものは新宿署生活保安課への左遷であった。
「男の矜持とは何か」を真剣に問いかける警察小説に自分も大沢ファンの一人としてハマっていった。第一作発刊と同時にリアルタイムに読んだ同シリーズは大沢作品の中でも一際好きな作品であった。
本シリーズの再開はもうないものと諦めていた折に刊行された本作品は短編集とサブタイトルが付けられてはいるものの、鮫ファンへのサービス譚が語られている。ファンであればこそ「ほ、ほー」とうなずかれる場面が多々あり、同シリーズを一度も読んだことのない読者には何のことは分からないであろう。
特に印象に残った作品は「雷鳴」であろうか。特に最後のフレーズが良い。それと「幼な馴染み」で登場した人物にびっくり!なんと漫画「こち亀」の両さんではないか!?ドタバタ漫画の主人公との共演とは茶目っ気を通り越しているかも知れない。もう一作「エンジェル・ハート」という漫画とコラボしているとは言われたが、この作品に関しては一切知らないのでコメントは避けておく。
いずれにしても話題性にあふれる作品となったようだ。
さて、前述したように「新宿鮫」シリーズは大沢作品の中でもお気に入りの作品なのであるが、更に同シリーズの以前に書かれた初期作品群もなかなか面白い傑作がある。
が、しかし、である。近年の大沢作品のふがいなさは一体どうしたものであろうか?
以前のような作品はもう書けない、ということであれば絶筆されてはいかが?もう既に過去作品群の印税だけで十分に暮らせるでしょうに。