min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

和田竜著『村上海賊の娘 上・下』

2014-08-19 19:03:59 | 「ワ行」の作家
和田竜著『村上海賊の娘 上・下』 新潮社 2013.10.20第1刷 

おススメ度:★★☆☆☆

横浜市立図書館に今年の初めに予約し手元に届いたのがなんと8ヶ月経ってのことであった。さほどに人気の小説であったのだが結論としてはそれほどおススメしたい本ではない。
小説の舞台背景は信長の大坂本願寺攻めの過程で起きた。いわゆる“木津川合戦”である。
主人公の村上景姫は野島村上家の当主、村上武吉の娘で、兄と弟がいる。
ごく一部の歴史資料の村上家家系図でかろうじて景の名が出てくるが、実際どのような女性であったのかの記述はない。
作者和田竜氏はこの歴史にほとんど名を残していない女性にスポットを当て、かって誰も書かなかったであろう村上海賊の船戦を描こうとしたようだ。
彼女に関わるその風貌、容姿、性格は作中では“悍婦で醜女”と表現されているのであるが、あの当時もそれ以前以降も日本人女性としても“美しさ”の規格から大きく外れていただけのこと。
どのような容貌かと言えば説明がちょっと難しいのであるが、しいてビジュアル的に申せばモデルの富永愛のボデー(長い手足)に北川景子の顔を乗っけたとでも言おうかw
現代的にはかなり受けそうなのだが、当時この容姿が受けたのは敵側の泉州海賊だけであったというのが面白い。彼らの美的基準から言うとえらい別嬪と映った。
さて、この破天荒な生きざまを望んだ姫であったのだが、思想的にはほとんど何も持たず、ただただイケメンの海賊に輿しいれしたかったのと、女人禁制の軍船にのって船戦をしたかっただけのあばずれ娘と言っても良い。
ひょんな縁で助けた門徒衆の少年のために一命をかけるのであるが、その理由に確たるものがなく読者を説得出来るものではない。
とにかく登場する歴史上実在した人物の言動がまるで劇画マンガのようで、戦いぶりもマンガ的とも言える内容だ。いっそこれはマンガの原作であると言われたほうが納得出来る。
村上海賊という僕の中でのロマン的イメージが脆くも崩れ去った一作である。