min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

佐伯 泰英著『徒然ノ冬-居眠り磐音江戸双紙(43)』

2013-07-07 11:18:49 | 「サ行」の作家
佐伯 泰英著『徒然ノ冬-居眠り磐音江戸双紙(43)』双葉文庫 2013.6.16 第一刷 各648円+tax

オススメ度 ★★★☆☆

今や我が読書生活の中では完全に癒し系読み物?と化したかに思えるシリーズの43作目。
今回は際立った切り会いシーンもなく子梅村の坂崎一家と尚武館に関わる者たちの徒然が語られるので、一部ファンから物足りない!という不満が聞こえてきそうな内容となっている。
しかし、前回田沼一派との闘争の中で矢毒に倒れた霧子の様子が気にかかっていた自分にとっては本書の実に半分近くを費やして描いてくれたのには大いに満足した。
霧子が本シリーズの中では異色の魅力を持った存在であることに今更ながら気づかされた。
彼女は幼少の折、多分浚われて雑賀衆のくノ一として育てられた。磐音らと出会ったのは雑賀衆が西の丸家基の命を狙って襲撃して来た時であった。雑賀衆は磐音らの手によって全滅したのであったが、ひとり霧子だけが生き残った。
磐音は彼女に憐憫の情を抱き、その後見人として磐音を影に日向に守っていた御庭番であった弥助の手に委ねた。
霧子は佐々木道場の門下として道場に寝起きするようになった。その後磐音一統は田沼一派の手を逃れ西国に向けて下京し、おこんの出産も間近にせまり切羽詰まった折、霧子がかすかな記憶を辿って生まれ育った熊野の“姥捨て郷”へと一統を導いたのであった。
佐々木道場の若手筆頭門下生のひとり利次郎といつしか相思相愛の仲となるのだが、今ここで大切な霧子を失う訳には行かない。
磐音らはそれぞれの方法で霧子の意識が戻ることを祈願するのだが、圧巻は磐音の「直心陰流奥義法定四本之形奉献」を密かに始めたことと、最後に門弟衆の前でそれを披露したことであった。
これ全て霧子の意識が戻る為に行われたことは特筆すべきことである。ま、結果は言わずもがなではある。
とまれ、物語の進行は尚も足踏み状態ではあるが、50巻に近づくに従い、大きなうねりとなって進むことを願っている。