min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

志水辰夫著『引かれ者でござい』

2011-07-08 00:25:00 | 「サ行」の作家
志水辰夫著『引かれ者でござい』 新潮社 2010.8.20 第1刷 各1,600円+tax

オススメ度:★★★★☆

副題に「蓬莱屋帳外控」とある。実は、本書『引かれ者でござい』の前に『つばくろ越え』というのがあって、こちらが蓬莱屋帳外控の第一作らしい。
いずれにせよシミタツ氏(志水辰夫氏の通称)が『青に候』以来の時代小説分野へ挑戦する新シリーズである。
「蓬莱屋」というのは通常の飛脚業とは違い、ひとりの飛脚が届け先へ最後まで一人で届ける、といういわゆる“通し飛脚”というもので、何故かいわく因縁のあるカネやモノを運ぶケースが多い。
この蓬莱屋に雇われた幾人かの飛脚の目を通した江戸時代の人々、社会、事件を描く物語で、サムライ社会とは離れた種々の階層、職業を持つ庶民の物語はなかなか新鮮で興味深い。
何よりシミタツという稀代のハードボイルド作家(あ、この方をこういうジャンルにひとくくりは禁物なのだが)による江戸時代に生きる人々が、どうしても僕には“シミタツ”調の語り口になるのが面白い。
主人公が現代であれ近代であれ、生き方が不器用なのである。特に女性に対する主人公の不器用さには苦笑せざるを得ない。