min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

司馬遼太郎著『坂の上の雲 (2)』

2009-12-14 07:35:13 | 「サ行」の作家
司馬遼太郎著『坂の上の雲 二』 文春文庫 2009.11.5 第37刷 638円+tax
オススメ度:★★★☆☆

二百数十年続いた江戸時代の鎖国状態を打ち破り、明治維新によって一挙に近代国家を目指した日本は、何より海軍力に力を注いだ。
そもそも明治維新を断行した最大の理由は、当時の欧州の帝国主義を標榜する列強が次々にアジア、なかでも中国を侵食しはじめた状況であった。
このままでは日本は彼ら列強の餌食になる、という恐怖感が「富国強兵」政策を推し進めた。
維新政府の若き官僚たちをフランス、ドイツ、そしてイギリスへ留学させ、当時の先進的な政治・経済、そして軍事を研究させた。
維新後わずか二十数年にして、当時の列強に伍する海軍力を築いた、というのは驚嘆すべきものがあった。
明治の日本にはこれと言った基幹産業があったわけでもなく、どうやってこれらの巨額な軍事資金を生み出したのであろうか?この辺りの事情を作者は多くを語らないのだが、事実としては絹を主体とした繊維産業が大いに寄与したはずだ。いわゆる「絹で軍艦を買った」わけだ。

さて、秋山兄弟はこの頃何をしていたのか?
兄好古は陸軍少佐となり騎兵を率いて大陸へ渡る。弟真之は海軍少尉として洋上に出て日清戦争の端役ではあるがその一端に触れる。その後かれは勇躍米国へ海軍留学のため向かうのであった。
ここでやや不満として残るのは、真之が米国留学中の私生活のことや、現地での一般米国市民との交流(多少はあったであろう)など、それらが一切語られない。これはやはり不自然であろう。
米国の海軍の事情は別として真之の目を通した当時の米国社会を描いてほしかった。

一方、正岡子規は重度の肺病に病みながらも近代短歌と俳句の新境地を開くべく古い体質の勢力に果敢に挑むのであった。

物語はいよいよ当時の最大の脅威の的であったロシアとの決着にむけ進んでいく。実際、この時代のロシアの対外膨張政策は露骨であり、日本が極東で生き残るためにはどうしても対峙せざるを得ない存在であった。
今後の日本の存続を賭けた一戦の時機がひたひたとせまってくる。