バリー・アイスラー著『雨の牙』ヴィレッジブックス 2002.1.20初版 760円+tax
原題:『Rain Fall』
オススメ度★★★★★
本編は著者のデビュー作である。僕は先月書店にて何気なく見かけた第4作『雨の掟』を読み、そのあまりにもの面白さに読了後「このシリーズは最初から全部読みたい!」と心底思った作品であった。
こうして一年に一度あるかないかの、優れた味読の作家との偶然の邂逅は人生における無上の喜びのひとつでもある。
さて、デビュー作の本編であるが、期待した以上の見事な出来栄えの作品である。
何よりも主人公を含め全ての登場人物が魅力的に描かれている。ストーリーも抜群に面白いし、この手の“謀略もの”に付き纏う胡散臭さが微塵も感じられない。
それは著者が全てのディテールを丁寧に描いているところによるものが大とみた。
今回は日本の政治の背後に潜むまだ誰も掘り起こしたことのない“タブー”の領域に、外国人作家であるが故の「歯に衣を着せない」表現でズバリと病巣を抉り出している。
戦後一貫して政治の構造的な“腐敗”“汚職”“癒着”の数々の「疑獄事件」が、あるとことまで到達しても多くの真実が闇に葬られてきた事実を我々はじっと眺めてきた。
真実を語るべき立場の人間たちの、なんと多くの部分が自殺を初め謎の死をとげてきたであろうことか。
その背後に蠢く「闇の勢力」が存在するであろうことを僕自身信じて疑わない。ただし、本編に登場するものとは違うであろうが。
ジョン・レイン(日本名、藤原純一)は今フリーランスの殺し屋として、東京の大都会というジャングルに“捕食獣”のようにひっそりと棲息している。
彼は日本の政権政党のある秘書を通じ、いくつかの殺しを請け負ってきた。彼の“特技”は自然死に限りなく近い殺しをしてのける点にあった。
本編で彼が日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれ、米国、日本という東西文化のはざ間でいかに翻弄され生きてきた様と、17歳のときに年齢を偽ってヴェトナム戦争に志願兵として参加したこと、更にヴェトナムにて特殊作戦部隊に投入され、この世の地獄を経験し、もう絶対に正常な世界に戻れない自分を発見したことなど、彼の生い立ちが断片的に淡々と描かれる。
彼は米国にも日本にも「帰るべき地」を持たぬまま、現在東京にてひたすら魂と肉体を彷徨させるだけである。
そんな彼が今回依頼された殺しとは・・・
この殺しにより、みどりという新進ジャズピアニストとの運命的な出会いがあり、日本の警察、右翼組織、そして在日CIAを敵に回した孤立無援の戦いが始まる。戦いの過程でけっして記憶に消し去ることが出来ないヴェトナムの亡霊が彼につきまとう。
余談であるが著者の日本、日本人への深い洞察力に驚かされ、東京の街の情景描写は見事である。例えば夜の東京恵比寿界隈の夜の情景はなかなか日本人には表現できないものがある。著者バリー・アイスラーの感性に強く惹かれるものがある。
さて、第二作、第三作を求めて街の本屋に出かけようか。
注)掲載した文庫本の表紙デザインと現在書店に出回っているものは違います。
原題:『Rain Fall』
オススメ度★★★★★
本編は著者のデビュー作である。僕は先月書店にて何気なく見かけた第4作『雨の掟』を読み、そのあまりにもの面白さに読了後「このシリーズは最初から全部読みたい!」と心底思った作品であった。
こうして一年に一度あるかないかの、優れた味読の作家との偶然の邂逅は人生における無上の喜びのひとつでもある。
さて、デビュー作の本編であるが、期待した以上の見事な出来栄えの作品である。
何よりも主人公を含め全ての登場人物が魅力的に描かれている。ストーリーも抜群に面白いし、この手の“謀略もの”に付き纏う胡散臭さが微塵も感じられない。
それは著者が全てのディテールを丁寧に描いているところによるものが大とみた。
今回は日本の政治の背後に潜むまだ誰も掘り起こしたことのない“タブー”の領域に、外国人作家であるが故の「歯に衣を着せない」表現でズバリと病巣を抉り出している。
戦後一貫して政治の構造的な“腐敗”“汚職”“癒着”の数々の「疑獄事件」が、あるとことまで到達しても多くの真実が闇に葬られてきた事実を我々はじっと眺めてきた。
真実を語るべき立場の人間たちの、なんと多くの部分が自殺を初め謎の死をとげてきたであろうことか。
その背後に蠢く「闇の勢力」が存在するであろうことを僕自身信じて疑わない。ただし、本編に登場するものとは違うであろうが。
ジョン・レイン(日本名、藤原純一)は今フリーランスの殺し屋として、東京の大都会というジャングルに“捕食獣”のようにひっそりと棲息している。
彼は日本の政権政党のある秘書を通じ、いくつかの殺しを請け負ってきた。彼の“特技”は自然死に限りなく近い殺しをしてのける点にあった。
本編で彼が日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれ、米国、日本という東西文化のはざ間でいかに翻弄され生きてきた様と、17歳のときに年齢を偽ってヴェトナム戦争に志願兵として参加したこと、更にヴェトナムにて特殊作戦部隊に投入され、この世の地獄を経験し、もう絶対に正常な世界に戻れない自分を発見したことなど、彼の生い立ちが断片的に淡々と描かれる。
彼は米国にも日本にも「帰るべき地」を持たぬまま、現在東京にてひたすら魂と肉体を彷徨させるだけである。
そんな彼が今回依頼された殺しとは・・・
この殺しにより、みどりという新進ジャズピアニストとの運命的な出会いがあり、日本の警察、右翼組織、そして在日CIAを敵に回した孤立無援の戦いが始まる。戦いの過程でけっして記憶に消し去ることが出来ないヴェトナムの亡霊が彼につきまとう。
余談であるが著者の日本、日本人への深い洞察力に驚かされ、東京の街の情景描写は見事である。例えば夜の東京恵比寿界隈の夜の情景はなかなか日本人には表現できないものがある。著者バリー・アイスラーの感性に強く惹かれるものがある。
さて、第二作、第三作を求めて街の本屋に出かけようか。
注)掲載した文庫本の表紙デザインと現在書店に出回っているものは違います。