min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

ギャングスター・レッスン

2007-02-22 00:05:47 | 「カ行」の作家
垣根涼介著『ギャングスター・レッスン』2007.2.15文庫化

本作は「ヒートアイランド」の続編である。またこの後の「サウダージ」とも関連している。
本編の主人公アキは「ヒートアイランド」では渋谷のチーマー百人以上を束ねて「地下格闘技」のエンタメ興業で活躍した若者である。
アキは渋谷での「事業」をたたみ、ぶらりと東南アジアへ旅立った。一年後、かの事件で知り合った犯罪プロの柿沢と桃井との約束「もし一年後に我々の仲間になるつもりがあれば会おう」のため東京に舞い戻って来たのだ。
柿沢たちは非合法の組織、ヤクザやマフィアそして裏金を選挙資金に当てる政治屋どもから金を強奪するプロの犯罪集団(といっても2,3名だが)だ。
いわゆる闇の世界で更にその上前をはねるという「猛禽類」の世界の住人たちだ。そのためには一切の自分の過去、現在のしがらみから一度抜かねばならない。もちろん親兄弟との縁も絶たねばならない。そのための“覚悟”を柿沢はアキに執拗に確認しようとする。
アキは迷うことなく彼らの仲間入りを決意したのであった。翌日からアキの裏の顔、身分を確保する作業に入るのであった。
先ずは他人の戸籍の入手。住民票を整えアパートを探す。表の勤務先を桃井の自動車修理会社にし銀行口座も開く。
身辺の整理をすると「仕事」に使用する車を購入、チューンアップ作業に入る。同時に日経、朝日といった新聞を毎日かかさず目を通し内容を把握する。警察から秘密に入手した犯罪組織の調書を読む。車のチューン完了後は試走に入り更に運転テクニックの特訓を桃井から受ける。時々柿沢が“勉強”の進捗具合をチェックにくる。
海外に飛び銃の取り扱い、シューティングの特訓も受ける。かくしてアキが一人前のギャングスターになる訓練が物語の大半を占める。予行演習と本番を迎えるのだがこれがまた面白い。
彼らは間違いなく犯罪者ではあるのだが、相手が相手だけに読み手側も一切罪の意識を感じることなく彼らを応援できるしくみになっている。
全編が軽いタッチで描かれ絶好のエンタメ小説となっている。お暇な方には是非おすすめしたい作品だ。
正直なところ文庫化されなければ読まなかったかも知れない・・・・