min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

冬の狙撃手

2006-06-18 00:14:43 | 「ナ行」の作家
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題名:冬の狙撃手
著者:鳴海章
発行:光文社文庫 2002年12月20日 一刷  初出:2001年5月ケイブンシャノベルス
価格:819+tax
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独断と偏見というのは恐ろしい。昨年本作品が店頭に並んだ時、本の表紙のイラストと見て、さらに帯かカバーの後ろかに<子守唄>と呼ばれる伝説のテロリスト云々とあるのを読んで「ま、安手の対テロリストものでしょ、これは。」と判断。そのまま平積みの場所に戻して購入しなかった。

今回文庫になったのを機に買って読み始めた。これが面白い、とにかく面白いのだ。久しぶりの“ページターナー”というやつ。中味が満載という感じ。いろんな他作品のエッセンスが凝縮されちりばめられたとでも言おうか。

先ず、テロリストのスナイパーとの一騎打ち対決というのは大沢在昌の『標的はひとり』を想起させ、公安警察の暗部については逢坂剛の『百舌の叫ぶ夜』を彷彿とさせる。またその公安と刑事警察との対立については再び大沢在昌の『新宿鮫』にも通じる。
スナイパーの狙撃銃と狙撃術に関しては海外の作家、例えばS.ハンターに一歩譲るものの、国内では大藪春彦ばりの薀蓄をかたむける。前作『撃つ』でもしっかりディテールまで描写した知識が今回も披露される。

また、冒頭に近い部分でジャンボジェットのコックピット内の描写場面が出てくるのであるが、やはりこの方は国内作家では他の追随を許さないほどの航空小説の大御所であったことを思い出させてくれる。
エンターテーメント小説としては良くできた作品だ。


この感想は「第四の狙撃手」に関連して2002年に読んだ感想文を掲載いたしました。