min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

極点飛行

2005-08-09 18:33:05 | 「サ行」の作家
笹本稜平 著  光文社 1,785+tax

南極、ブリザード、黄金、ナチス、CIA、ときて美女、ツインオッター(航空機)の日本人パイロットなるキーワードが並ぶともうこれは胸がわくわくの「冒険小説」のお膳立てが出来上がろうというもの。
特にくそ暑い真夏に氷点下60度なんていう世界が舞台だとぐ~んと涼しくなる。以前マクリーンの『北極戦線』を読んだのも真夏だったなどと、どうでもいいことを思い出してしまう。
今回は対極の南極が舞台。南極を舞台にして「ナチスの金塊」伝説をめぐる血なまぐさい争奪戦が繰り広げられるのであるが、一見荒唐無稽な物語に真実味を与える手立て、お膳立てをこの作者笹本稜平はしっかりと整えている。
元ジャンボジェットの副操縦士であるアキラの一途な生き方に共感するとともに脇役陣が多種多彩で魅力的である。特にアイスマンと呼ばれる日系二世の強烈な生き様と個性が周囲を圧倒し、唯一アイスマンを制御できるのがその姪っ子である女医だったりする。
敵側の悪党もこれまた役者ぞろい。「冒険小説」に欠かせない自然の猛威と強大な敵がてんこもり状態で物語は思わぬ方向に突き進む。
綿密な歴史の虚構を組み立てながらナチスの亡霊と南米の独裁国家の謀略と欲望が交錯する、久々に堪能した本格的冒険小説の傑作である。