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これはこれで良作『コイコワレ』by乾ルカ

2019年08月31日 | 小説レビュー
~太平洋戦争末期。敗色濃厚の気配の中、東京から東北の田舎へ集団疎開してきた小学生たち。
青い目を持つ美しい少女、六年生の浜野清子もそのひとりだった。
その目の色ゆえか、周りに溶け込めない孤独な彼女が出会ったのが、捨て子で疎開先の寺の養女、那須野リツ。
野山を駆け巡る少年のような野性を持つリツも、その生い立ちと負けん気の強さから「山犬」と揶揄される孤独な少女だった。
だが、それは「海」と「山」という絶対に相容れない宿命の出会い。
理由もなくお互いを嫌悪するふたりだが、ひとりの青年をめぐり、次第に接近してゆく…。
これは、戦争という巨大で悲劇的な対立世界を背景に、血の呪縛に抗い、自らの未来を変えようとした、ふたりの少女の切ない物語。「BOOK」データベースより


伊坂幸太郎氏の「シーソーモンスター」を読んだときにも書きましたが、「螺旋(らせん)」プロジェクトの中の一冊です。

螺旋プロジェクトの中から、いくつか図書館で予約しているんですが、乾ルカさんという作家が書いている作品「コイコワレ」が一番先に届いたので、これから読み始めました。

螺旋プロジェクトの共通ルール、

①「海族」と「山族」、2つの種族の対立構造を描く
②全ての作品に同じ「隠れキャラクター」を登場させる
③任意で登場させられる共通アイテムが複数ある

を見事に物語の中に織り込み、素晴らしい仕上がりになっています。

太平洋戦争の末期、いよいよ本土の主要都市に爆撃が開始され、敗色濃厚の日本を舞台に描かれています。

疎開先の山村の方言が、物語に良いエッセンスを加えて、なかなか読み応えのある文章に仕上がっています。

登場人物が少なく、読みやすい内容で、スラスラと読めてしまいます。「うまくまとめたねぇ~。」という感じでした。

それだけに、物足りなさを感じてしまいますが、螺旋プロジェクトの作品なので、全部合わせて一つのストーリーとするならば、これはこれで良作と言えるでしょう。

★★★3つです。