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よく考えられているが・・・『シーソーモンスター』by伊坂幸太郎

2019年07月04日 | 小説レビュー
『シーソーモンスター』by伊坂幸太郎

~我が家の嫁姑の争いは、米ソ冷戦よりも恐ろしい。
バブルに浮かれる昭和の日本。一見、どこにでもある平凡な家庭の北山家だったが、ある日、嫁は姑の過去に大きな疑念を抱くようになり…。(「シーソーモンスター」)。
ある日、僕は巻き込まれた。時空を超えた争いに―。舞台は2050年の日本。ある天才科学者が遺した手紙を握りしめ、彼の旧友と配達人が、見えない敵の暴走を阻止すべく奮闘する!(「スピンモンスター」)。「BOOK」データベースより


話題作の伊坂幸太郎氏の作品です。長編かと思いきや、『シーソーモンスター』と『スピンモンスター』という作品の二本立てで、数十年のときを超えて繋がっている連作です。

しかも読み終えてから巻末を見て、さらに驚いたのは、「小説BOC」という雑誌の企画『螺旋プロジェクト』というものがあって、その中で連載された、8人の作家による文芸競作企画とのことでした。そのルールとは、

①「海族」と「山族」、2つの種族の対立構造を描
②全ての作品に同じ「隠れキャラクター」を登場させる
③任意で登場させられる共通アイテムが複数ある

というルールを遵守しながら、古代から未来までの日本で起こる「海族」と「山族」の闘いをそれぞれの作家がオリジナルで物語を紡いでいくという壮大なプロジェクトの中の作品だったんですね。全然知らなかったんでビックリしました。

他の『螺旋プロジェクト作品』も、早速、図書館の予約を入れました!

さて、本作のないようですが、『シーソーモンスター』75点、『スピンモンスター』60点と、思っていたより評価は上りません。

強くカッコいい嫁、軽い言葉で人を死に追いやる知人など、伊坂氏の小説に良く登場するキャラクターの雰囲気や、独特の言い回し等が随所に見られて、読んでいて楽しいです。
また、ストーリーも緊張感があり、なかなか惹きつけられます。

『シーソーモンスター』が、爽やかなに締めくくられて、『スピンモンスター』が、始まるんですが、これが近未来の時代設定で、現代を生きる我々世代にとって、すぐ手が届くところにある未来予想図が、ある種の警告とともに描かれています。

こちらは舞台設定が近未来ということもあって、色々な小道具や設定に、伊坂氏のこだわりと独創性を感じますが、設定に凝りすぎたために、物語自体の説得力に欠ける部分や無理筋のところが目に付き、伏線の回収率も下がったような気がします。

しかしながら、さすがは伊坂氏という作品であり、読んで損はありません。

★★★3つに留めます。


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