素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

中村桂子さんから見たコロナの時代

2021年03月13日 | 日記
 昨日の夕刊の★特集・ワイド★は「生命誌」を提唱した理学博士の中村桂子さんへのインタビューであった。今のコロナ禍を中村さんはどう考えているのかを聞きたかったので飛びついた。

 中村さんのことを知ったのは、妻が中村さんが館長をされていたJT生命誌研究館主催のイベントに何度か参加していて、そのパンフレットからである。人間を含むさまざまな生きものの関係や歴史を整理し、私たちが「どう生きるか」を探る学問が《生命誌》である。JT生命誌研究館はJR高槻駅の近くにあり見学できると聞いていて一度行ってみたいと思っていた。

 去年の秋、コロナ禍対策で交野市が地域振興券を発売した。そこに京阪バス一日フリーチケットが特典として付いていた。ゆうゆうバスという無料の地域循環バスをみんなの反対を押し切り廃止したばかりなので、その見返り策である。

 車があるので路線バスを使う必要はないのだが、せっかくあるのだから使おうということで、第一弾は八幡市の石清水八幡宮まで路線バスを乗り継いで行けるか?ということを思いついた。調べてみると5つの路線を乗り継ぐと行くことができた。車だと40分ほどで行くことが出来るが、乗り継ぐと2時間以上かかったが、違う景色を見ることができ楽しめた。第2弾がJT生命誌研究館へ行くことであった。これは4つの路線で行くことができた。JR高槻駅から歩いて10分余りだった。地球上に生息する数千万種の生きものの共通性や多様性を「ゲノム」をキーワードに解き明かした成果を視覚的にわかりやすく展示されていた。しかし、知識の乏しい私は半分くらいしか消化できなかった。何回か通ううちに見えてくるものがあると思った。

 中村さんは新型ウイルスについての質問に「感染したら困るのは当然だが、生きものとウイルスは大昔からのお付き合い。細胞のあるところにウイルスあり。ならばお互いうまくやっていきましょうよ」という観点が大事だと答えた。「新型コロナは、人間が生きものであることを再認識させました。生命誌の視点では、コロナウイルスの自然縮主たるコウモリと人間は同じ哺乳類。ウイルスが増殖する場として、互いに近い仲間です。そして、ウイルスも人間も続こうとしている。その姿をとらえ『戦い』と表現するのはちょっと違うのでは。ましてや『人間様は偉いのだからウイルスを駆逐できる』などと考えるのは人間のおごりではないでしょうか」と続けた。

 そして厄介な病原体であることには変わりないコロナとの向き合い方は「どう消すかではなく、どうおとなしくさせるか。ウイルスとのお付き合いは結局そこに尽きる。傲慢な人間中心主義ではなく、今後は少し謙虚に人間尊重主義といきませんか」と話す。

 近年ウイルス感染症が頻発するのは、過度な利便性や物質を求めた人間の行動様式がもたらしたのではと見ている。「ウイルスは細胞を持たないため、宿主の生物がいなければ生きていけない。本来は相手(宿主)が病気になったり、死んでしまったりしては困るのです。森にいたウイルスの多くは、長い時間をかけて弱毒化するなどし、近隣の動物たちと平和共存してきました。そこに突然、開発の名のもとに人間が踏み入り、ウイルスたちを都市に引きずり出してしまいました。進歩拡大をよしとする競争社会というものが私たちに真の幸せをもたらしているでしょうか。私には、新型コロナの流行が『人類よ、考えよ』という自然界からのメッセージに思えます」という言葉は重い。

 予防策は「一にも二にも手洗い」と即答されたという。
 
 なかなか読み応えのある特集だった。佐倉さんの「科学とはなにか」とも通じる内容もあったが、それは別の機会に紹介したい。

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