素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

人生ぼやき講座\'78 大好きでした

2009年11月26日 | 日記
人生ぼやき講座'78


 人生幸朗・生恵幸子のような漫才は今はない。世相風刺というのはネタとしてはとてもむずかしいと思う。発する側のキャラクターがまず一番であろうが、人生幸朗というネーミングや風貌などピッタリはまっている。プラス相方の生恵幸子の存在が大きい。包容力と鋭いツッコミが絶妙のバランスである。今の世相をどうぼやくか聴いてみたい。どうにもならぬとわかっていても一瞬でも笑い飛ばしたい気分になる。
 
 しかし、ぼやき漫才を成立させるには、受け取る側の余裕、物事を第三者の目で見る力などが絶対条件と考えた時、ゆとりのなくなった今、もう無理かなという思いにもかられる。

 『特別支援教育 4年間で4万7000人増加 教員の確保課題』という見出しを昨日の夕刊で見た時、またぼやきたくなった。特別支援教育を受ける児童生徒の急増に対する文科省のコメントが「はっきりした理由は不明だが、特別支援教育の社会的認知度が上がり、手厚い支援を求める親が増えてきたことが背景にあるのでは」となっていて、思わず「ハア?何をのんびりとしたことを言うとるんや!」とつっこんでしっまった。

 特別支援教育は、06年の学校教育法改正で位置づけられた。注意欠陥多動性障害(ADHD)・学習障害(LD)・知的障害を伴わない高機能自閉症など従来の特殊教育の枠に入らなかった軽度発達障害の児童生徒も支援の対象に含めたのである。

 先だって05年度あたりから、市教委のほうから特別支援対象の生徒の数の報告を求められた。校内研を通じて全体的な理解を深めながら、学年会の中で対象生徒を検討していった。とてもむずかしい作業であった。単なる落ち着きのない生徒なのかADHDなのかという見極めは専門的な訓練を受けていない者にとって不可能に近い。

 それでも数の報告をしなければならないので、限りなく近いと考えられる生徒を選び、報告した。それを受けた市教委からの指示は「少なすぎる」であった。「8%ぐらいの割合でいると言われているから、クラスに2~3人はいるはずだ」ということで見直しを命じられた。この時感じた違和感は今だに覚えている。

 たしかに、従来見過ごされてきた視点で生徒を把握し、担当教師の感性だけにたよってきた指導からの脱却を図るということは必要である。“小学校1年の荒れ”という表現でベテラン教師が今までの指導の枠からはみ出る児童が増えているという報告が全国のあちらこちらから出てきたのもこの時期である。

 私自身も、従来の指導の枠では収まらない典型的なADHDであろう生徒に入学以来振り回されていた。3年生で担任したのだがなかなかドラマチックな1年間だった。日々格闘している中での市教委からの指示はむなしささえも感じた。

 現場では生徒にラベルを貼って、「ハイ オシマイ」ではないのである。アメリカでの実践報告に追随しての文科省の動きだったと思う。しかし、アメリカではADHDの生徒のための特別な教室(無刺激な部屋)が用意されたり、専門に学んだ教員が配置されたりして具体的な支援策が実行されていたが、日本ではまことにあいまいな基準で統計をとるだけで具体的な動きは何もなかった。

 特殊教育でも本当に専門的に学んできた人の配当は現場にはない。時間数の関係から担当になった教師が手探りの状態で取り組んでいるのが実態である。

 司書教諭でもそうである。法律通りに各学校に配当されていない。看板は立派なのだが中身が伴っていないのである。予算の裏づけがなされないよいうのが大きな原因だと思うが、「教育は国家百年の大計」といわれているように、大切なものだと思う。

 今の現場は、特別支援教育の対象生徒への無策から、5年前よりも深刻な状況が広がりつつあるように思える。退職教員をパートのようにお手軽に名前だけつけて穴埋めしようという小手先の対処では限界がある。

 ADHDやLDやアスペルガーの子を持つ親は、特別支援教育が位置づけられたことで学校に期待を寄せ、要求をすることは当然のことである。物理的に何ら保障されていない学校側の態勢とぶつかり、学校不信に陥ることも充分予測できる。このことは教師、保護者、生徒にとって悲しいことである。

 「少子化なのだから、人員削減をして人件費を抑えろ」という声に対して、世間一般の空気は「そうだ」と流れやすい。民意というものももう一度考え直す必要もある。

 久しぶりに根幹の部分での議論が生じているように思う。そのこと自体はいいことだと思う。

 「何をごちゃごちゃ言うとるんや、教育のことも大事やけど、第九の暗譜もできてないやないか。自分の目の前のことにもしっかりせんかい!」という生恵幸子師匠のツッコミの声が聴こえる。
 

コメント
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