かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

旧額田郡公会堂(愛知県岡崎市)

2012-05-20 | 西三河の近代建築

岡崎建築散歩~その6

 六供浄水場から南へ、岡崎市民会館の前を通り伝馬通りを東へ向かいます。国道1号線沿いに建つ岡崎市役所東庁舎のすぐ東側に、国の重要文化財に指定されている旧額田郡公会堂と旧物産陳列所があります。 旧額田郡公会堂と物産陳列所は岡崎市郷土館として再利用されていたのですが、今回訪れてみると老朽化のため平成22年から閉館になっていて、内部の一般公開は中止になっていました。

 建物内部が見られないのは残念でしたが、重要文化財に指定された建物だけに保守管理がしっかりとできているためか、外観は比較的良い状態で維持されているようでした。内部の修理や耐震補強なども早急に行い、国民の財産である重要文化財として末永く保存活用する手立てを望みたいと思います。


 
■中央玄関扉に貼ってある郷土館閉館のお知らせ



■隣接する作業棟(旧看守室)~規模を縮小して写真パネルや棟札などが展示されていました


 建物は木造平屋建、桟瓦葺で講堂を中心に全面中央に玄関を設け、東西両翼に控室と貴賓室を張り出したE字型平面で、大正2年創建時の姿をとどめています。大正から昭和初期にかけて、全国各地で大きな集会施設が建てられました。規模は違いますが大阪中央公会堂(大正7年)や名古屋市公会堂(昭和5年)もこの時期に竣工しており、一地方都市の旧額田郡公会堂は大都市と比べてもかなり早いものであったと思われます。
 
 この時期地方の本格的西洋建築は珍しく、施工にかかわった地元の大工や左官、石工が、細部にわたり忠実に西洋の様式を取り入れようと試行錯誤し、情熱を注いだ姿がルネサンス様式の建物から伝わってきます。特にポーチ周りや妻のレリーフ、内部の漆喰塗りの天井飾りや舞台のアーチなど、当時の左官職人の匠の技が随所に光ります。このような国内最初期の郡立の公会堂、物産陳列所建築がそろって現存する例は極めて珍しく、門柱も当時の姿のまま残っています。 

◆旧額田郡公会堂/愛知県岡崎市朝日町3-36-1
 竣工:大正2年(1913)
 設計:吉田榮蔵(愛知県土木技手)
 構造:木造平屋建
 撮影:2012/04/29
 ※国重要文化財




■中央には半円形の妻がのる玄関ポーチ、両翼前面の妻壁には三角ペディメントを設ける



■玄関ポーチ周りにも軒蛇腹や手摺飾を設け洋風意匠を演出



■中央玄関正面の櫛形ペディメントにはスタッコのレリーフ装飾、講堂部分の寄棟屋根には棟飾の金物が巡る
 


■西翼の旧貴賓室~軒下は漆喰塗、窓上端より下を横板張り、窓より下の腰部分は竪板張りにし、窓廻りやコーナーをフレームで枠取ります





■東翼の旧控室~切妻前面の三角破風を強調したペディメントに施されたレリーフ(浮彫り)





■東翼の控室脇にある通用玄関~持送りの金物は植物をモチーフにしたデザイン
 


■講堂内部~漆喰塗の大壁や天井飾り、演壇背後の壁面のドリス式円柱と楕円アーチ、小壁の花房飾りなどに左官職人の技が冴えます
 (撮影:2006/05)


 
■公会堂と同時に造られた門柱が今も残されています