今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

ベルリンは晴れているか

2021年11月30日 | 「本」のひきだし

ブクログより


《本書帯解説文より》
1945年7月、ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4か国統治下におかれたベルリン。
ソ連と西側諸国が対立する状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人に当たる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。
米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。
しかもなぜか陽気な泥棒(元俳優)を道連れにする羽目になり・・・

甥を見つける旅はたった二日間。
でもその合間にアウグステが生まれたころからの回想があり、アウグステの過ごした時間は優しい両親に守られた幸せなものだったけれど、そのほとんどは戦争という暗い時代で、その当時のドイツには壮絶な人種差別があり、隣人同士の監視、告げ口など気の休まることがない。アウグステ一家は正式なアーリア人でありながらも、父親が共産党の活動家であったため、捕らえられ処刑され、母親も捕らえられる前に自ら命を絶ってしまう。
一人になったアウグステは昔の父の同志などに助けられながら、からくも暮らしていくうちに、昔の事件やいくつかの謎にたどり着き、その謎解きの結果の旅ともいえる二日間の旅である。

その当時のユダヤ人への迫害は、アンネの日記などでも広く知られているが、ドイツの市民みんながユダヤ人を迫害していたわけではない、政府の目を恐れてやむなくという人々も大勢いたということ、ユダヤ人の少女たった一人を匿う大変さ、世界上で起こっている戦争の中でも特異なものだろう。


この壮大なストーリーを日本人女性が書き上げたことに驚く。
まるでドイツ人作家による小説の忠実な翻訳を読んでいるかのような迫力だった。

この作品からドイツ・ユダヤ人問題を題材とした諸々の書物に目が行くようになりました。



 ベルリンは晴れているか / 深緑野分
 久々の☆☆☆☆☆ 5つ

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