ハロプロに数々の名曲を提供してくれたロックミュージシャン中島卓偉さんが三月いっぱいでアップフロントグループのジェイピールームを円満退社しました。そして、新生第一弾曲が公開されました。
中島卓偉『風に飛び乗れ』
ビジュアル的にはアップフロント移籍前の路線を彷彿させ、メッセージ性のある楽曲はアップフロント時代を継承していて、曲はキャッチーで耳にまっすぐに入ってくる。
振り返ってみても卓偉兄さんのハロプロ提供曲もそうだった。一度聴くと耳に残るメロディ。サビが印象的。音がカッコイイ。その一貫した作りは自身の楽曲と共通する魅力をハロプロにも注いでいたと言ってよいでしょう。
卓偉兄さんは、ハロプロに提供した楽曲をセルフカバーしたアルバムも出していて、そのアルバムを引っ提げてのツアーも行いました。
楽曲提供は2005年の安倍なつみ「鳴り止まないタンバリン」に始まり、真野恵里菜の「My Days for You」、アンジュルム第一弾シングル「大器晩成」、℃-uteの「次の角を曲がれ」、Juuce=Juiceの「愛・愛・傘」、つばきファクトリーの「今夜だけ浮かれたかった」などなど。いずれも、一度聴くと耳に残るメロディ。サビが印象的。音がカッコイイ曲ですね。
卓偉兄さんの曲作りは洋楽的に感じます。AメロBメロサビという歌謡曲の方程式に拘らず、様々な形式で作ってきた。そういう枠にハマらない曲作りという点は、つんく氏がハロプロで長年実戦してきた方向性であり、それを踏襲しながら、自らの色も出しています。
ハロプロ提供曲の中には自分が歌う予定だった曲もあったり、自分も歌うことを前提とした曲もあったりして、そういうシームレスな曲作りだったからこそセルフカバーアルバムが可能だったのかもしれません。
ライブ会場に足を運んでみて気が付いたことがあります。それは「中島卓偉ライブはハロプロヲタとの親和性が高い」という点。
ハロプロ提供曲、たとえば「大器晩成」は通常のアルバムにも収録されている曲ですが、掛け声が入れやすいし、提供曲以外の曲もハロプロヲタなら自然と体が動くような曲が多い。一連のハロプロ楽曲の根底にある音楽と、中島卓偉ナンバーの根底にある音楽が同じであるか近いのでしょうね。
先ほど例として上げた四曲、たとえば「大器晩成」に代表されるように、サビの繰り返しで聴き手に曲の世界観を強くインプットさせるのも、中島卓鰓提供曲の特徴です。カントリー・ガールズの「どーだっていいの」がわかりやすい例ですね。
一連の楽曲のキャッチーなメロディラインに繰り返しのフレーズのインパクト。私は初期ビートルズの曲を連想します。卓偉兄さんはビートルズの大ファンで、自身のファンクラブ名を「BEAT&LOOSE」と名付けたほど(同名の曲も作ってアルバムに入れている)。
近年の中島卓偉楽曲はメッセージ性の強い曲が多かったけれど、ハロプロに提供した曲もその傾向があるように思います。アンジュルムに提供した「大器晩成」はまさにそうで、歌詞を書き直したという経緯があるこの曲は、卓偉兄さんがアンジュルムに寄せたメッセージであるように思えます。流されずに自分の信じたままに。アンジュルムのメンバーも、そのファンも、そうあってほしいという思い。
作り手がメッセージソングを作ってくれるということは、ハロプロの存在を発信者としてリスペクトしてくれているからこそではないかと思えるし、そうであると信じたい。
だからこそ所属事務所は違っても、「これからもどうぞよろしくね」なのです。