MUSIC MAGAZINEから発行されたアイドルソングクロニクルという本が書店に並んでいます。この十年間に発売されたアイドルソングから約300曲をセレクトしてレビューするというページがメインで、巻頭にはつんく♂×前山田健一インタビュー、アイドル好き有名人による私的ベスト10、なかなか手に入りにくいアイドルの曲を集めた付録CDと盛り沢山な内容。
そのアイドルソングクロニクルで取り上げられている約300曲は有名無名問わず様々な人がアイドルとして対象になっているのが好感で、単に知名度を優先させたら何曲もノミネートされそうなAKBが二曲であるのに対して、スマイレージは五曲もレビューに取り上げられています。これはハロプロ勢では最多。
レビューが載っているのは、「明日はデートなのに、今すぐ声が聞きたい」、「スキちゃん」、「ショートカット」、「タチアガール」、「プリーズ・ミニスカ・ポスト・ウーマン」。個人的にはナットクな選曲。スマイレージのやってきた路線がよくわかる選曲であります。
これらの曲を思い浮かべると、如何にスマイレージはアイドルソングとしての普遍な魅力を兼ね備えているかが見えてきます。「明るい」「楽しい」「ちょっぴり切ない」。最初の二つを備えたアイドルグループはたくさんいても三つ目がなかなか難しい。そして、この「ちょっぴり切ない」がほどよくスパイスされていなければアイドルソングは完成しない。
「プリーズ・ミニスカ・ポスト・ウーマン」の歌詞に「物語は続く」とあるのが、これこそゆうかりんがいなくなってもスマイレージの物語はまだ続くという所信表明である。そんな事がこの本のレビューにも書かれてあります。この短いフレーズが、わかる人にはわかる言葉として聴き手に迫りながら、明るい曲でありながらなんだか切ない気持ちになってくるという印象につながってくる訳です。
最近のハロプロ曲の多くは「魅せる」事を大事にしているから、この「ちょっぴり切ない」的なニュアンスが弱めな感じに見えます。だからこそ、ハロプロが他のアイドルとは一線を画するという見方も生まれてくるのでしょう。しかし、持ち歌全体に先ほど挙げた三要素を盛り込んでいるスマイレージは良い意味でアイドルであり、「他のアイドルと近い位置にいるっぽい」と思わせる事に繋がり、他のハロプログループとは違ったファン層、違った雰囲気の現場を作ってきたのでしょう。「ハロプロであってハロプロっぽさが他グループより薄め」。勿論ポジティブな意味の持ち味と言えると思うのです。