Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

「秘密」と「排除」

2013-07-27 | Weblog
米軍ヘリパッド基地建設に反対する東村高江の住民らを追った、琉球朝日放送(QAB)制作のドキュメンタリー『標的の村』劇場映画版をめぐり、那覇地裁と福岡高裁が、法廷内と裁判所敷地内の映像の使用は「目的外使用に当たる」とする見解を示して映像の不使用を求め、使用した場合には「何らかの対応をする」と、制裁を予告する発言をしていたことがわかった。映像は許可を得て撮影しており、同じ素材をテレビ放送した際は裁判所からの指導はなかった。映画になって急にストップをかけたのだ。裁判所側は新聞の取材を受けた後は「見解は伝えたが、不使用の要請や制裁の意図はない。報道の自由を制限する意図は毛頭ない」としている。しかし、いったん制止しようとした意志は明らかで、自分たちに都合が悪いことを少しでも隠蔽したいのだろうと思う。弱者である市民を根拠なく訴えた政府の側に加担したことを、裁判所は少しは恥ずかしいと思っているのか。映画「標的の村」に描かれるのは、高江住民に対する嫌がらせ・見せしめのSLAPP裁判。日本政府+裁判所は、根拠は「秘密」にしたまま、ただただ「国に楯突く者」たちを「排除」しようとしてきたのだ。

米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向けた埋め立て申請をめぐり、県内外から寄せられた「利害関係人」による意見約3500通のうち、県が利害があると認める意見は1割に満たない見通しだという。経済活動以外は「利害」じゃないんだと。環境保護や基地反対を訴えることは「一般的な意見」で、「利害」の対象外なんだと。利害関係人に該当した場合でも、埋め立てに伴う損害の救済措置が沖縄防衛局が提出した申請書に記載されていれば「問題ない」とされ、参考意見としかみなされないんだと。あの美しい海を「埋め立てる」ことを正当化するために、エクスキューズとして「意見を募った」だけなのだと。環境保護や基地反対がなぜ利害と認められないのかの理由は示されない。理由は「秘密」で「排除」の現実だけがある。

安倍政権、秋の臨時国会に秘密保全法案を提出予定。これまでさんざんなことをしておいて更に「公務員の罰則強化」だという。どうかしている。さらに「公共の安全及び秩序の維持」は、拡大解釈であらゆるものを取り締まろうという考えだ。「反政府」を謳うだけで対象になりかねない。国民の知る権利は認められず、情報リークは犯罪扱いとなる。いつの時代の話だ。「治安維持法」復活である。自民党勢力は85年に「国家秘密法」が廃案になったことを恨みに思ってどうしても今回は実現させようということだろう。平和主義・自由主義者が疲れきった今こそチャンスだと思っているのだろう。「国家は国家であるが故に国家である」というトートロジーに立脚し、根拠は「秘密」に(根拠がないから秘密にせざるを得ないのだ)、「排除」の権限だけを強化しようとしている。

福島第1原発の敷地内から海へ放射性物質を含む地下水が流出している。敷地海側のトレンチ(地下の配管用トンネル)にたまっている水から、1リットル当たり23億5000万ベクレルの高濃度で放射性セシウムを検出。これが今発表されるということは、裏でもっとよくないことが起きているのではないかという気にさせられる。東電は「高濃度の汚染水は坑道の中にとどまっている状態だと考えている」と説明。同原発2号機で原発事故直後の2011年4月に、取水口付近などで高濃度汚染水が漏れ、その際1リットル当たり36億ベクレルの放射性セシウムが検出されている。その後薄まって今の濃度ということなのか。海に漏れないように地盤を固める工事を進めるというが、間に合うのか。少しでも外に出しておきたくて工事を遅らせたのではないかという声もある。とにかく秘密だらけだ。しかし今そこにある放射性物質は、虚偽の工作では排除することはできない。

日本が初参加したマレーシアでの環太平洋連携協定(TPP)交渉会合が終了。この協定も徹底した秘密主義。交渉入りするまでどんな分野が対象になるか分からず、各国が何を主張しているかも分からないのだ。今後も、何が自由化されるのか、協定締結まで内容は国民に一切知らされない。あまりに異質な協定だ。国を越えて「白紙委任」を正当化する制度である。アフラックを郵政が受け入れるなど焦りのあまりの譲歩の連続が始まっている。こんなことで遺伝子組み換え食品が流入してくるのを止められるのか。医療について比較的格差のなかった日本の常識が覆される怖れもある。「農業の重要5品目の例外扱いが得られなければ撤退も辞さない」と啖呵を切った自民党だが、彼らがこれまでどれだけ前言を翻してきたかは、言うまでもない。

この国で、以上のことがたった二日ほどの間に起きた。「秘密」と「排除」によって公正さを失い、自らを蝕んでゆく精神の荒廃が、破滅の一途を辿りつつある。確信犯の自滅志願者たちはなぜ国民を道連れにしようとする。どうしてそんなことで人々の命が危険にさらされなくてはならないのか。
コメント (1)
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