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不況の間、老後に備えて貯蓄をしようと毎日せっせと働くアリがいました。
せっせ、せっせと働いていると、ゴルフをしてたキリギリスが、何をしてるのかと訊ねてきました。
アリが、老後に備えて低賃金で長時間労働に従事していると答えると、キリギリスは「生まれつきの
特権もなく働くなんてバカなやつだ」と心の中で笑いながら、口先で「75歳まで働き甲斐のある社会を
実現するのは素晴らしいことだ。働き方改革!」と励まして、昼も夜も働かず、お友達と悪だくみを
したり、雨の日に酒盛りをしたり、公金で外遊したり、陰でアリに嫌がらせをして楽しみました。
「みなさん老後に働けなくなったら不安でしょうから、わたしが年金というものを集めて運用しましょう。
みなさんが稼いだお金を少しずつ、森羅万象を司るわたしに預けてください。心配は一切ありません。
わたしは立法府の長ですから嘘をつくはずありませんし、わたしが国家……最高の責任者ですから、
禁治産者でんでんという批判はまったく当たらない! こんな人たちに負けるわけにはいかない!」
なぜかキリギリスは目を泳がせて、ときに激昂しながらアリの稼ぎをかすめ取り、使えもしない武器を
外国から大量に購入したり、株に投入して大穴を空けたり、統計を偽装して経済が発展しているような
ふりをしつづけました。自分でも嘘と本当の区別がつかなくなったのです。
やがて、まやかしの景気が終わって経済が破綻すると、アリたちは働き口を失ってお腹を空かせて
凍えていましたが、年金のデータなど破棄されてしまって、どこにもありません。アリはキリギリスが
「最後のおひとり、おひとりにいたるまで必ず年金をお支払いする」と腕を振り上げて約束したことを
思い出し、年金を分けてもらいに行きました。
「年金をお支払いすると、わたしが約束したことはない」と笑いながら、キリギリスはアリの頼みを
断わりましたが、気の毒に思ったので電子決済にかぎりポイントをアリに還元することにしました。
アリはカードなど持っていません。「カードも持たずに現金で生活するなんてバカなやつらだ!」 と
キリギリスはアリを心の底から軽蔑し、こんな人たちが多数決で何を決めようと立法府の長である
わたしが従う理由はないと心に誓い、ゴルフクラブを振ったり、バンカーで転んで逆さに回転したり、
アリの巣穴に土砂投入したりして幸せに暮らしました。
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