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よくブラジルを飲みに行く喫茶店のスタンプがたまり、ケーキセットまたはモーニングの無料サービスを受ける権利を得たので、期限が切れる前に出かけなければと思い、とある土曜日の朝に券を差し出しサンドウィッチのモーニングを注文した。食べ終わったら、もう何もすることがないので呼ばれてもいない迎賓館(赤坂離宮)に足を運んだ。
することがないので前庭のカフェで紅茶を飲んでいると、目の前の人が何やらしきりに自撮りをしているので、おのぼりさんかと思ってよく見たらコスプレ者の中国人女性だった。なぜわかるかというと、カラコンを入れた瞳がシベリアンハスキーそっくりで時折つぶやく言語が日本語でも韓国語でもないから。見るに見かねてシャッターを押す身振りで「写真を撮りましょうか?」と声をかけたら、片言の日本語で「いーえー」といわれた。
することがないので東京タワーにきて、運動不足なのでエレベーターではなく階段を600段だか歩いてのぼり、おのぼりさんは自分ではないかフフフと力ない笑いがもれた。100段ぐらいでもう疲れてしまい、歩いてのぼるのではなかったと後悔したものの、いまさら引き返すわけにもいかず、しかたがないので残りの大部分をつまらない思いで淡々とのぼった。
どこにでもコスプレ者がいるもので、展望台のそこかしこに思い思いの装束に身を包んだ若者たちが誇らしげ回遊していた。どのコスプレ者もさっぱり元ネタがわからないから出くわしても勧興をあまり催さない。むくつけき男が女装して何らかのアニメの美少女キャラの恰好で練り歩いてるのに遭遇してしまうと、怖いとか、不気味だとか、気持ち悪いといった思いが先に立つ。
ホンモノかコスプレか見分けにくい人たちも佇んでいて、そんなときは近くにカメラを構えた地味なスタッフ(お友だち?)がいるかどうか確かめ、おとなしく撮られていたらコスプレ者だとわかる。あとは髪の毛の色だけど、ホンモノも奇天烈な髪の色をしている場合があるから要注意。こっちを向いたら、カラコンの有無がいくらか参考になるけど、よく見ようとしたらガンを飛ばしてると思われかねないので、トラブル回避のため偶然を装わねばならない。
せっかくの土曜の昼下がり、人の目を気にしてばかりいるのも何なので、もう目を合わせないことにして下界の様子に視線を集中してみる。あそこに見える徳川家の菩提寺のひとつ、増上寺の境内にもいまごろ戦国武将のコスプレした男女が行き来してるのかな? いかんいかん、コスプレ者を気にしないよう心がけるあまり、かえってコスプレ者のことが浮かんでしまう。
エレベーターで地上に降りて、そこらへんの地下の居酒屋に紛れ込み、おやじのコスプレをした人たちを眺めながら飲む昼酒はまた格別。しかし、あれはコスプレではなくホンモノかもしれない。なぜなら髪の色が地味(で尚且つ毛量が疎ら)だし、だれひとりカラコンを入れてないし、いっこうに自撮りもお互いを撮り合うこともしないから。よく見るとホンモノだけが持つ輝きが後頭部より放たれている。
冬の日が暮れるのは早く、朝からコーヒーと紅茶と日本酒をたしなんだら、すっかり夜になってしまった。さすがにもう行くあてもないし、うちに帰って長椅子にでも寝そべりながらネット配信の動画でも視聴するか……と家路をいそぐ身にたたきつける北風の冷たさがしみる。酒で体が温まるというのは気のせいにすぎず、実際かえって冷えるのではないか。
やれやれ、なんのかんのいったところで、やっぱり我が家がいちばん落ち着く。こうしてブログを書きながら1日をふりかえると、ごくあたりまえの、たわいない、ありふれた、どうってことない平凡な時間にすぎないとはいえ、代わり映えのない日常こそ貴重とも思える。最後に今日1日、朝から夜まで出歩いて人のコスプレをとやかく論評していた自分がとある美少女キャラのコスプレしてたら一応オチがつくところだけど、そんなこともなく、ありのままの自分の部屋からお届けしました。
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