大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

明神男坂のぼりたい・99〔The Summer Vacation・6〕

2022-03-14 06:41:27 | 小説6

99〔The Summer Vacation・6〕 

                 


『AKR47 鈴木明日香の24時間』

 このありがたくも「あんたら、そこまでヒマなんかいな!?」と言うテレビ取材の話は、昨日ユニオシの事務所から。実質業務命令の依頼できたもの。


 お母さんは嫌がったけども、お父さんは喜んでる。仕事柄、家に引きこもりみたいな毎日を送ってるお父さんにはいい刺激と宣伝の機会。

 いそいそと座卓の上に10冊ほどの自分の本を並べだす。低血圧のお母さんは、夕べ眠剤を飲んで早起きに努力の姿勢。

 あたしは、夏休みは早起きの習慣がついている(一時間でも早く起きて、休みを満喫しようという根性)ので、朝の6時にクルーが来た時には、すでに起きていた(^o^)V。


 クルーは寝起きのブチャムクレ明日香を撮りたかったらしいけど、残念でした。ハーパンにカットソーに、セミロングをポニテにして、お目目パッチリの迎撃態勢。さすがにお母さんも起きたけど、こっちは完全なブチャムクレ。三階で身づくろいと化粧にかかる。


「アスカちゃんは、いつも、こんなの?」

「はい。時間もったいないから、夏休みとかは早いんです」

「あ、朝ごはん自分で作るんだ」

「はい。うちは家族三人だけど、起きる時間も朝ごはんの好みもバラバラ……え、お父さんも一緒に食べるって!?」

 いつもは別々に食べてる朝ごはんをいっしょに食べる。ト-スト焼くとこまではいっしょだけど、お父さんはハム乗せてコーヒー。あたしはトーストの上にスクランブルエッグ載せてインスタントのコーンポタージュ。食後の麦茶は常温のにしといた。こないだみたいにお腹の夏祭り撮られたてはかないません(^_^;)。

「もう30分早かったら、朝シャワー撮れましたよ(^_^;)」

 そう言ってから、メールのチェック。麻友だけが「お早うメール」で、美枝とゆかりは「おやすみなさい」のまんま。

「学校の友達とは、ずっとメールのやりとり?」

「はい、夏休みになってから、ずっとお仕事ばっかりで、クラスの友達とは会えないから、お早うとお休みだけはやってます」

 それからFBのチェック。「お早うございます(^▽^)♪」と、取材クルーの写真付けて送信。

「ラジオ体操行きます?」

「アスカちゃん、ラジオ体操やってるの?」

「まさか、小学校までですけどね。たまにはええんちゃいます?」

 9時にカヨさんちに行く約束してあるので、それまでの時間稼ぎ。

 ラジオ体操はもちろん明神さまの境内。

「男坂駆け上がりま~す(*^^)v」

 坂の上と下にカメラ、両方にピースして、爽やかに駆け上がる。

 上がったところに箒を持った巫女さん……はいいんだけど、さつきと出雲阿国がだんご屋のノボリ持ってピースしてるのは不自然でしょ!

 テレビのクルーといっしょに行ったら、みんながびっくりしてた。半分はお年寄りなんだけど、子どもたちも混じってる。高学年の子たちは、昔いっしょにやった顔見知り。自分で言うのもなんだけど、明神男坂が出した初めてのアイドル。自然な形でどこに行ったら、いい絵が撮れるかは承知してます。

 五年ぶりに子供たちの組に混じってラジオ体操。終わったらスタッフが用意しているカードにサインしてあげる。ここで40分も尺とったけど流れるのは、せいぜい一分だろなあ。

 家に戻ると、お母さんがいつもの倍くらい身ぎれいにして、掃除と洗濯。「あら、やだ、いつの間に来られたのかしら~!」しらこいことを言いながらスタッフにお愛想。時間つぶしに両親のインタビュー。これもあらかたカットされるんだろうなあ……親の努力がけなげに思えたころに時間。

 アキバのジャンク通りまで自転車。スタッフの半分が付いてくる。

 神田白山線(都道452号)に出て北に向かう、ランドマークの昌平小学校が見えるあたりでカヨちゃんが待ってくれているはず。

 カヨちゃんの家は初めてなんで、迎えに来てくれてることになってるんだ。

 で、角を曲がるとえらいことになっていた……!?

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鳴かぬなら 信長転生記 63『豊盃 茶姫の陣営』

2022-03-13 14:49:40 | ノベル2

ら 信長転生記

63『豊盃 茶姫の陣営』信長  

 

 

 門衛に来意を告げると、入ってすぐのピロティーのようなところで待たされた。

 塀が高いうえに植栽が豊かなので、外から見当をつけることはできなかったが、入ってもよく分からない。

「学校のようでもあるし……城塞のようでもあるし……」

「刑務所のようでも、こわもて辺境伯の館のようでもあるな……」

 ここに立っている限り、この施設の中心部が見えない。尖塔らしきものも伺えないので宗教施設ではないようだ。寺にしろ教会にしろ、坊主も大名も同じように高さ大きさで権威を示したがるものだからな。

「お待たせしました、秘書官の劉備忘録と申します。これより茶姫将軍のところへご案内いたします」

 五分ほど待たされて、現れたのは、蘭丸を思わせる美少年だ。小具足姿で腋に週刊誌ほどの帳面を数冊抱えている。袖口が黒ずんでいるところを見ると、今まで帳付けでもやっていたのだろう。

「これはお恥ずかしい、仕事が溜まっておりましたので身を構う暇もありませんでした」

 こいつ、視線だけで俺のチェックを見抜きおった。

「どうぞこちらへ」

 建物と植栽が二度入れ替わって、やっと二階建て三階建ての建物群が現れる。

「え、こっちなの?」

 シイ(市)は奥の三階建てだと見当を付けていたようで、二階建ての手前で備忘録が曲がってタタラを踏む。

「はい、本日はこちらを使っておられます」

 目配せされた番兵が観音開きの戸を開けて、二度角を曲がって入った部屋は地図と書類で一杯であった。

「あんたの部屋みたい」

「そうか」

 あいまいに返事をしたが、俺も思う。

「将軍、お連れしました」

 なんで、書類の山に声を掛ける……と思ったら、その向こうから、これも、和風に言えば赤地錦の直垂の小具足姿で茶姫がメガネ型ルーペを掛けたまま顔を出した。

「おう、ご苦労であった」

「書類は、ここに置いておきます」

「いや、直ぐに目を通す。ダメ出しに呼んでは二度手間だからな。二人は、しばらく待っていてくれ」

 茶姫に帳面を渡すと、机上の書類の山を三つほど移動させる備忘録。そこに、自然な流れで帳面を広げる茶姫。その流れのままに、椅子を置いて、主の尻を降ろさせ、二歩ばかり離れたところで蹲踞する備忘録。

 おお……

 シイが小さく歓声をあげる。無理もない、まるで、主従で舞を舞っているようなのだからな。

 それに、チラリと見えた帳面の字は、上下二段組の新書の活字のようだ。注釈の字は、それよりもポイントが小さく、なるほど、メガネ型ルーペでも無ければ読めないだろう。

「質問が二つ」

「ハ」

「近衛と娘子憲兵に二名づつ欠員あるままなのは何故か? また、炊飯婆の定員が二名超えているのは何故か?」

「はい、お二人を配置するため、近衛、娘子いずれにでも編入できるように開けてあります。そのために、近衛・娘子合格者二名を炊飯婆に回しました」

「近衛・娘子合格者をか?」

「はい、これで辞退するような者は近衛や娘子憲兵には配置できません」

「この二人の成績は?」

「成績上位一番と二番であります」

「よし、三十分以内に決定する」

「承知」

 返事をするや否や、備忘録は、茶姫と同じ椅子を俺たちのために置いて出て行った。

「さあ、やっと話ができるなあ!」

 勢いよくこちらに向き直った茶姫。

 あるで向日葵が不意打してきたような笑顔であったぞ。

 

☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生
 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
 宮本 武蔵       孤高の剣聖
 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
 今川 義元       学院生徒会長 
 坂本 乙女       学園生徒会長 
 曹茶姫         魏の女将軍

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明神男坂のぼりたい・98〔The Summer Vacation・5〕

2022-03-13 07:26:07 | 小説6

98〔The Summer Vacation・5〕 

           


 鳥肌が立ってしまった!

 長崎県のS市で、友達殺して、その死体の手首と首を切った女子高生のニュース!

「ゲー……!」

 こういうときには、かわいらしく「キャー」は出てこない。我ながらオバハンのリアクションだと思う。
 だけど、反応してる心は17歳。殺した子も殺された子も15歳の高校一年生。あたしと一学年しか変わらない。

「またか……」

 沸きたての麦茶に氷を入れながらお父さんがポツリと言う。それほどショックではないみたい。テレビのコメンテーターは、なぜかスマホのせいにしてしたり顔。

――やっぱ、コミニケーションの取り方が、この年齢では未熟なところにもってきて、今は、みんなスマホでしょ。分からないんでしょうね、距離の取り方。やっぱ、スマホというのは……――

「オレが高校生やったころもあった……」

 何十年前だ?

「友達と喋ってたら、知らんオッサンが来て因縁つけるんで怖くなって一人で逃げた。心配になって戻ってみたら、友達は殺されてて首を切り落とされてたいうのがあったけどな、結局殺したのも首落としたのも、そいつだった……」

 あたしも、スマホに罪は無いと思う。鳥肌が立ったのは、心のどこかで同じような鬼が住んでる気がしたから。

―― 鬼って、あたしのことか? ――

 さつきが言う。正成のオッサンは、ちがう意味で鬼だ。

―― 首切るなんて、昔はいくらでもあったぞ ――

「戦の時とかでしょ、手柄の証拠に首切ったり」

―― 頭に血が上って、殺した末に首を切って晒しものというのは、今で言えば交通事故で人が死ぬくらいにはあったぞ ――

「交通事故とは同じにならない」

―― そうかあ、人が死ぬということには変わりはないだろう ――

「交通事故は、殺そうと思って殺してないよ」

―― よけい残酷じゃないのか、たかが人や荷物が移動するだけで殺されるというのは、理不尽ではないか ――

「絡むねえ。今日は」

―― 先月、鳥居の前で事故があったの憶えてるか? ――

「え?」

―― なんだ、憶えてないのか ――

 ああ、そう言えば、車同士の接触事故で、危うく鳥居にぶつかりそうになった……あれか?

―― 鳥居が無事だったんで、胸をなでおろしてるけどな、あの時重症だった七歳の女の子、今朝死んだ ――

「え、あ、そうなんだ」

―― な、そうなんだ ――

「……うん」

―― 親父殿は、うちの門前で起きた事なのに幼子の一人救ってやれなかったって、ちょっとしょげてたぞ ——

「そうなんだ……」

―― また、団子でも食いに来い。じゃ、わたしは出勤だからな ――


 気を取り直して、お母さんがUSJのハリポタで買ってきたバタービールのジョッキに氷をしこたま入れて麦茶入れて一気飲み。そのままお風呂に行ってシャワー浴びてたら、お腹が夏祭りになってしまった!

 急いで体拭いて、タオルを頭に巻き付けて、パンツ穿くのももどかしくトイレに駆け込む。日本三大祭り(祇園祭、天神祭、神田祭)いっしょにしたみたいなお腹の夏祭り。

「エアコン点けっぱなしで、お腹出して寝てるからよ」

 トイレ出たとこでお母さんに怒られた。

 ムググ……

 陀羅尼助を二人前飲んで、スタジオへ。うちからスタジオまで歩いて汗流したら、お腹も治ってきた。

「今日は、大江戸放送に選抜が出て顔売りにいきます。暫定的にリーダーは明日香。他のゲストはベテランの人ばっかりだから心配いらないけど、生だから気をつけて放送事故なんかおこさないように。他のメンバーは勉強のために見学。終わったら戻ってレッスンと夜のステージ。よろしく!」

 市川ディレクターの説明で行動開始。

 番組では、やっぱり長崎の殺人事件が話題になっていた。

 フッてこられたので、さつきと交わした話をしてみる。人の首を切り落とすのも鬼だけど、事故とかで死ぬ人に感覚が鈍ってるのも鬼だって。

 メンバーも出演者も感心して聞いてくれた……とこまではよかった。

 調子に乗って、お腹の夏祭りの話までしてしまう。

「それじゃ、明日香さん、パンツも穿かずにトイレに……!?」

 スタジオ大爆笑。

 この時、あたしはAKRのお祭り女王という称号をいただく、その原因の半分はこれですわ。

 

 

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せやさかい・284『卒業式のあくる朝』

2022-03-12 10:41:54 | ノベル

・284

『卒業式のあくる朝』   

 

 

 うちはお寺の子やけど、毎日仏さんに手を合わせることはしません。

 

 テイ兄ちゃんは本業の坊主なんで、毎朝、お祖父ちゃん、おっちゃんと三人でご本尊の阿弥陀さんに手を合わせて、念仏を唱えます。

 詩(ことは)ちゃんもおばちゃんも、おっぱん(高坏に盛ったごはん)をお供えする時には手を合わせるけど、お念仏を唱えることはしません。

 お祖父ちゃんは住職としては引退してるんで、朝のお勤めが終わったら、しばらく本堂に居てることが多い。

 このごろは、春めいてきたんで、本堂の縁側に出て、胡座をかいてボーっとしてます。

「なんや、仏さんみたいになってきはったねえ」

 お寺の婦人部長である田中のお婆ちゃんは、そない言うて縁側のお祖父ちゃんに手を合わせたり。

「フフ、なんだか、即身成仏」

 詩ちゃんは、そんなことを言いながら、それでも田中のお婆ちゃんにはきっちりと頭を下げて大学へいきました。

「お茶でも持って行こうか?」

 気配りの留美ちゃんは、お盆に湯呑と急須を載せて、うちはポットをぶら下げて、本堂の縁側に行きます。

 内陣の方から縁側に向かうと、もう田中のお婆ちゃんは山門を出ていくとこ。

「すみません、遅くなってしまって」

 こういう時の返事も留美ちゃんは行き届いてます。うちやったら「ええ、せっかく持ってきたのにい!」とプータレルとこです。

「ああ、すまんなあ」

「お祖父ちゃんだけでも飲む?」

「しょんべん近なるからなあ……二人で飲みいや。日向ぼっこにはええ日和やでえ」

 これは、ちょっと相手していけということ。年寄の間接話法と頷きあって、お祖父ちゃんよりも一段低い階段のとこに腰を下ろす。

 下ろしたお尻が仄かに温い。その仄かな温もりのままにお祖父ちゃんがポツリ。

「卒業おめでとう」

「ありがとうございます」

 留美ちゃんの反応は早い。

 卒業式付き添いのくじ引きは、おばちゃんと詩ちゃん。

 けっきょくは、急なお葬式と専念寺さんのお手伝いが入って、とても卒業式どころやなかったんやけどね。

「どないやった?」

「はい、3月11日だったのを忘れてました」

「ほう……」

 え、なんか禅問答?

「一昨日は東京大空襲、昨日は東日本大震災について触れられました」

 あ、思い出した。校長先生の話や。

 たしかPTAの会長さんの祝辞のあとに言いはったんや。

「心温まる祝辞、身に余る謝辞をいただきまして、まことにありがとうございます。生徒たちの門出の姿に胸が熱くなりますが、11年前の今日、この姿を見せることも目にすることなく大勢の人たちが逝かれました……そう、あの東日本大震災であります……」

 二分ほど震災に触れはった。要は、普通に卒業して卒業生を見送ることが、どれだけ幸せなことかという話。

「アニメは、あまり観ないのですが、若い先生に言われて感心した場面があります。アイドルグル-プが合宿の為に震災後数年目の釜石を訪れるところです。メンバーは『こんな被害を受けたんだ』『復興はまだまだなんだ』と神妙な気持ちになります。民宿のおばさんにどんな言葉を掛けようかと迷いますが、おばさんの言葉はこうでした『よくお越しくださいました。ずいぶん復興しましたでしょう。こうして、お客さまをお迎えできて……』とすこぶる付の笑顔なんですね。人の身に立つということが、よく現れたエピソードだと思います……」

 ええ話やねんけど、式も終わりに近くって、うちは、正直寝かけてましたけどね(^_^;)。

「校長先生……ひょっとして、定年なんとちゃうか?」

「「え?」」

 なんで分かるのん?

「うん、年寄りの勘やねんけどな、卒業式の校長の話としては、微妙に踏み込んでる気ぃがするんや。大事な話やけども、門出に語るには、ちょっと言う感じやなあ……で、みんなの反応は?」

「あ、うん。神妙に聞いてたなあ」

 寝かけてたことは棚に上げます。

「実は……」

 留美ちゃんは前日の予行の時の大空襲の話も付け加えた。

「そうかあ……最後にええ話しはったんやなあ……ヨッコイショっと」

 お祖父ちゃんは立ち上がると外陣のご本尊さんの前に行きます。

 静かに数珠を出すと「なまんだ~ぶ なまんだ~ぶ」とお経を唱え始めました。

 うちらも、お祖父ちゃんの後ろに座って手を合わせます。

 経机の上には『お布施・田中』と書いた不祝儀袋。

 後で聞くと、お婆ちゃんの従姉妹さんが仙台で亡くならはったということです。従姉妹さんは、震災後は一人で介護施設に入ってはったとか。

 お婆ちゃんは、デイサービスの時間が迫ってるんで、お布施だけ置いて家に戻らはったということでした。

 

 

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明神男坂のぼりたい・97〔The Summer Vacation・4〕

2022-03-12 04:44:28 | 小説6

97〔The Summer Vacation・4〕 

 

       


 東京音頭しか取り柄がないんだからね!

 夏木先生の言うことは三日で変わってしまった。

 三日前からあたしのブログアクセスは30000を超えてしまった。事務所にも6期生の河内音頭が聞きたいという電話やメールが殺到。

 で、市川ディレクターと夏木先生らエライさんが相談して、6期生をシアターのレギュラーにすることにした。

 普通、研究生は一か月目ぐらいで一人15秒ほどの自己紹介と先輩らのヨイショがある。
 それから新曲がついて、グループデビューには3か月。それまでは選抜のバックと営業と決まっている。

 それが、ステージ紹介から、わずか6日でステージデビュー。

 日本で数ある女性グループで民謡、それもレトロな東京音頭。それとオールディーズのVACATIONとの組み合わせが、レトロでありながら、とても新鮮に映ったらしい。とにかく目先の人気第一主義のユニオシ興行が見逃すわけがない。

「ええ、では6期生の選抜と、チームリーダーを発表します」

 取り柄の変更の次に、これがきた。


「緒方由香、羽室美優、山田まりや、車さくら、長橋里奈、白石佳世子、鈴木明日香。あとは決まり通りバックね。ただ人気の具合では選抜入れ替えもありだから、がんばって!」

 落胆やらガッツやら、戸惑いやらが一遍に起こった。で、それを噛みしめる間もなく、夏木先生の檄。

「VACATIONの振り付けをきちんとやります。全員バージョン、選抜バージョン、1分バージョン、4分フルバージョンやるから、3時までには覚えること。3時からは東京音頭の特訓。はい、かかれ!」

 さすがは夏木先生、完全に新しい振り付け。オールディーズの匂いを残しながらも、今風の目まぐるしいまでのフォーメーションチェンジ。これはいけると思った。

 午前中で、全員バージョンと選抜バージョンをこなす。上り調子のときは覚えも早い。レッスン風景をカメラ二台で撮ってたとこを見ると、プロモも撮り直しの感触。ユニオシから予算が付いたんだろうね。

「昼からは、短縮とフルバージョンだけだからコス着けてやります。新調した衣装が来てるから、それ着てやるよ。シャワ-浴びて下着からとっかえてね」
「あの、下着の着替えは持ってきてません」

 という子が半分ちかく。充実はしてるけど、こんなハードなレッスンになるとは思っていなかった。

「あ、そっちの連絡はいってないか。仕方ない。全員分のインナー買ってきて!」

 これは、さすがに男のアシさんと違って、事務の女の人が買いに行った。全員のスリーサイズは登録済みなんで、サイズ表持っていったら、一発でおしまい。
 シャワーはいっぺんに十二人が限界なんで、大騒ぎ。衣装は着替えなきゃだし、頭もセットのしなおし。こないだのロケバスでも、そうだったけど、裏では女を捨ててかかってる。学校でこれだけ早やくやったらガンダム喜ぶだろうな。と、一瞬だけ頭にうかぶ。

 みんなスッポンポンで着替えて交代。AKRに来る子はルックスもバディーも人並み以上だけど、その人並み以上でも胸やらお尻の形が千差万別やのは新発見。

 夏木先生の言った通り、短縮とフルバージョンの違いは二回ほどでマスター。先生の指導がいいのはもちろんだけど、みんなのモチベーションが高いというのが大きいと思う。コスは赤と白を基調とした水玉。全体のデザインは同じだけど、襟やポケット、タックの取り方が微妙に違うので、自分のコスはすぐに分かる。

 三時からは、武蔵野菊水さんが来て、東京音頭の特訓。武蔵野さんは東京音頭の第一人者。ちょっと緊張したけど、あたしと同じ神田のオジサン。フリはスタンダードを教えてくれたけど、ステップさえ間違えなかったら、アレンジは自由。

「明日香ちゃん、あんた上手いなあ。それだけやれたら、盆踊り、いつでもヤグラに立てるぜ」

 本番前に、先輩の選抜さんたちに挨拶。メイクとヘアーの最終チェック。全員で円陣組んで気合いを入れる。

「今日から、6期を入れて新編成。気合い入れていくぞ!」

「おお!!」

 座長嬉野クララさんの檄で気合いが入る。

 6期の受け持ちは15分ほどだったけど、舞台も観客席もノリノリだった!

 そのあと、初めての握手会。あたしのところには長い行列。嬉しかった。

 そやけど、その中に関根先輩が混じってたのには気がつかなかった。

 鈴木明日香、一世一代の不覚だった……。

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せやさかい・283『卒業式予行』

2022-03-10 18:19:19 | ノベル

・283

『卒業式予行』   

 

 

 起立! 着席!

 

 ……もう十回以上やらされてる。

 なんや、もう罰ゲームっちゅう感じ。

 気合いが足らんいうのは分かってる。せやけど、もうええやんか、予行やねんし。

 

 そう、今日は卒業式の予行で、久々に登校。

 

 昨日は公立高校の入試やったんで、予行が始まるまでは、教室のあちこちで入試の話で盛り上がってた。

 うちと留美ちゃんは聖真理愛学院、つまり、私学の専願やったんで、まあ、聞き役というか、その他大勢。

「あれ?」

 留美ちゃんが呟いた。

「え?」

「ううん、なんでも……」

 留美ちゃんは人の陰口叩いたりせえへんので、ちょっと目につく子がおっても口にせえへん。

 うかつに「ちょっと、あれ……」とか言うたら、さくらのハートに火がついて、あとの展開が恐ろしいからと、頼子さんなんかは言う(^_^;)。

 それで、留美ちゃんの視線が向いていたあたりを探ってみると、瀬田が静かに座ってるのが目についた。

 瀬田は田中とワンセットで、一年からの腐れ縁。

 一年の時に凹ましたったんで、うちらにチョッカイ出すことはないけど、まあ、アホのイチビリ。

 いっつも二人でワンセットで、しょうもないこと言うたりやったりしては先生に怒られとった。

 それが、今日の瀬田は……なんや静か。

 田中は、相棒がかもてくれへんので、廊下に出て、ひとりウロウロしとおる。

 

「ちょっ……」

 

 留美ちゃんに注意されて前を向くと、ペコちゃん先生が入ってきた。

「では、これから体育館で予行です。入場の練習から始めるから、廊下に並んで」

 そして、廊下に並んで瀬田の事は忘れてしもた。

 で、体育館で、何べんも起立・礼の練習をやらされてるんですわ。

「何べんもごくろうさんでした。では、最後に、わたしから少し話をさせていただきます」

 校長先生がマイクの前に立った。

 明日の本番にも校長先生は、贈る言葉的な話をするはずやのに、なんやろ?

「今日は三月の十日ですね、昨日が公立高校の入試で、明日は卒業式。それでいいんですが、この谷間の十日は、日本人にとって特別な日なんです」

 え、なんやろ?

「じつは、七十七年前の今日、東京大空襲がありました。一般には、一度の空襲で一番多くの人が亡くなったのは広島と長崎の原爆だと言われていますが、実は東京大空襲が一番多いんです。記録では六万人ですが、記録から漏れた人たちが多くいらっしゃって、一説では十万人ぐらいではないかと言われています。今月に入ってから、連日のようにクリミアの戦闘の様子がテレビやネットで伝えられていますね……」

 そうか、三月十日は、そうなんや。広島の原爆忌の時は留美ちゃんと散歩に出てて、たまたま通りかかった家から原爆忌中継のテレビが聞こえたから、思わず手を合わせて、神妙な気分になったけど、三月十日は、ぜんぜん頭にも無かった。

「東京は、その四十年あまり前に関東大震災があって、壊滅状態になりました。昭和天皇は摂政の時に震災の状況を視察されておられましたが、大空襲のあと、東京の街を視察されて『関東大震災の時よりもひどい』とおっしゃいました。陛下の御所も焼け落ちてしまったので、陛下は御文庫と呼ばれた防空壕で生活されて、その生活を、いまの上皇陛下が御結婚される時まで続けられました。むろん、周囲の人たちは『もう、御所を再建されては』と勧めるのですが『いや、国民はまだまだ困っている人も多いのだから』とご遠慮されてきました。御文庫はひどいところで、特に湿気がひどく、上着を吊っておくと、二日もすると湿気でずっしりと重くなったそうです。アメリカから大使がやってきた時に信任状を陛下に渡すのですが、大使は、御文庫のひどさにビックリしてしまいます。すると、陛下は『いや、申し訳ない。戦争で、君の国が焼いちゃったからね』と言って笑われたそうです。まあ、一矢報いたというところでしょうか」

 へえ、そんなことがあったんや。

「あ、空襲の話でした。まあ、ウクライナのニュースを見ていて、そんなことを思ったわけです……じつは、わたしのお祖母ちゃんは、深川というところで、この空襲に遭いました。家族四人で逃げて生き残ったのはお祖母ちゃん一人だけでした。ひいお祖母ちゃんも、その子どもたちも亡くなってしまいました。お祖母ちゃんは、逃げる途中、下駄の鼻緒が切れて、そのためにはぐれてしまって、結果的に生き残りました。そのお祖母ちゃんが生き残ったから、わたしの母が生まれて、その息子であるわたしがみんなの前に立っています……」

 そう言うと、校長先生は、コンビニに持っていくマイバッグみたいなをゴソゴソしだす。

「これが、その七十七年前にひいお祖母ちゃんが履いていた下駄です」

 おお……

 みんなから、溜息みたいなどよめきが起こる。

 その下駄は、今やったら小学四年くらいの子が履くようなちっこい下駄。

 桃色……もとは赤やったんかもしれへんけど、印象は、めっちゃ儚げな、でも、存在感のある下駄や。

「実は、わたしの宝物なんです。仕事で苦しいとき、くじけそうになった時は、この下駄を見て勇気をもらってます。大学を出て、学校の先生になる時にお祖母ちゃんからもらいました。おかげで、三十八年間無事に勤め上げることができました」

 え……勤め上げる? それって?

「気づいた人がいるかもしれませんが、わたしが見送る卒業生は、君たちが最後です。この三十一日で定年を迎えます。先生方、微力なわたしを良く支えてくださいました。卒業生諸君、君たちからもいっぱい力をいただきました。きょう無事に揃って、そして、明日元気に巣立って行ってくれる、この姿が先生の力で、誇りです。ありがとう諸君、ありがとうお祖母ちゃん」

 そう言って、校長先生は、下駄とうちらに深々と頭を下げました。

 あちこちで、鼻をすするような音がします。

 あかん、うちもボロボロになってきた。

 ハンカチ……あれへん。

 思たら、横の留美ちゃんが、そっとハンカチまわしてくれました。

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明神男坂のぼりたい・96〔The Summer Vacation・3〕

2022-03-10 06:59:06 | 小説6

96〔The Summer Vacation・3〕 

              

 

「勝手に東京音頭なんか流すんじゃないわよ!」

 夏木先生が、鬼の顔になって怒った。

「すみません!」

 ワケは分からないけど、研究生は怒られたら、とりあえず謝る。この世界のイロハです(^_^;)。

「あんたたちはオールディーズのイメージで売り出すんだからね。一人違う色を出されると困んのよ!」

「はい。すみませんでした!」

 そこに横から市川ディレクターが口をはさんだ。

「夏木さん。でも明日香のアクセス、3000件超えて、まだ伸びてますよ。6期生のブログじゃ最高だよ」

「うそ……ほんとだ」

 夏木先生と、市川ディレクターは20秒ほど話して結論を出した。さすがは芸能プロ。良くも悪くも頭の回転は早い。

「よし、今日一日で5000超えるようなら残してよし。超えなかったら、即刻削除。いいわね!」

「はい(*゚O゚*)!」

 と、返事したあとは、カヨちゃんたち研究生が笑って、もう別の話題になっていた。

「ええ、一昨日のバケーションの評判がいいので、急きょプロモーションビデオを撮ることになりました。ただし、製作費は安いから、無料で撮影できるところだけで撮ります。じゃ、衣装に着替えて。バスに乗り込むよ!」

「はーい!」

 で、20分後には衣装に……と言っても、一昨日のありあわせのままだけど。

 まずは、近場でアキバの駅前。バスからサッと降りたかと思うと……

「カメラ目線でもいいから、とにかくハッチャケて。フォーメーション? そんなのいいから、とにかく一本いくよ」

 マイクも何にも無し。カメラ2台。照明さん二人。音声さんは、たった一人で口パクを合わせるためだけに曲を流す。夏木先生は選抜の人たちの振り付け指導で残留。市川ディレクターとアシさんが二人っきり。

 10分で撮り終えると……どうやら撮影許可をとってないようで、お巡りさんから言われるまえに撤収。   

 次にスカイツリーが見えることだけが取り柄の、親会社ユニオシ興行の屋上。ここは自前の場所なんで、リハも含めて、一時間。それからユニオシの前。日本橋、浅草、東京タワーなんかで、ゲリラ的に数人ずつ撮影。さすが物見高いオーディエンスの人たちも「なんかやってんぞ!」と集まったころには撤収。上野のパンダ橋でやったときは、見物のオバチャンがみんなにアメチャンをくれた。たぶん大阪の団体さん。

「次は不忍池!」

 池の前、弁天堂の向こうにスカイツリーを背景に十分。大江戸放送が『東京ローカル』のロケに来てたんで、無理矢理割り込んで一曲やらせてもらう。これは市川さんのアイデアと違って、あたしたちと大江戸放送の世紀のアドリブ。生放送に5分も割り込む。お互い低予算同士の助け合い。

 バスに戻ったら、アシさん二人がロケ弁を配ってくれた。さすがにAKRのアシさん、この移動の最中に贔屓の弁当屋さんに手配してくれたらしい。

 感心してたんだけど、アシさん二人は、みんなが食べ終わるまで、打ち合わせやら、次の手配やらで走り周り。

「ロケの許可下りました」と、アシさん。

 急きょ都庁の前に行って30分。終わりの方では三月後に選挙を控えた都知事さんも出てきてノリノリ。これも互いのPR。芸能プロと政治家のやることに無駄はありません。

 さすがに衣装が汗びちゃ。


「その衣装は、ここまで。次は海水浴!」

 で、一時間半かけて湘南の海へ。その間にバスのカーテン閉めてみんなで水着に着替える。

「みんな、高画質で撮ってるから、ムダ毛の処理なんかは、忘れずに。シェーバーはここにあるから、よろしく!」

 22人の勢いはすごい。とても文章では表現できんようなありさまで、着替えたり、ムダ毛の処理したり。朝からのハイテンションで、スタッフのあらかたが男の人だということも気にならなかった。

 江ノ島海水浴場に着いたのは4時前。海水浴客が少なくなる時間帯を狙ってる。なんか思い付きで撮ってるようだけど、市川ディレクターの頭には、ちゃんとタイムテーブルがあるみたい。

 江ノ島では、フォーメーション組んで、二回撮った後は、みんなで時間いっぱい遊んだ。カメラさんは腰まで水に浸かりながら撮影……してたらしい。あたしたちは、そんなもの忘れてはしゃぎまくり!

 その日、家に帰ってパソコン見たら、アクセスは5000件を目出度く超えておりました……(^0^)!    

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やくもあやかし物語・128『八房のお礼』

2022-03-09 11:33:22 | ライトノベルセレクト

やく物語・128

『八房のお礼』 

 

 

 

 窓を開けると、八房が宙に浮いていた。

 

「あら、八房って宙に浮けたの?」

「はい、脚はまだ直りませんが、やくもさんたちが二匹も妖を退治してくださいましたので、心が軽くなり、これくらいの高さなら浮いていられるようになりました」

 なるほど、腰を落としたお座りの姿勢だ。

「伏姫さまもお喜びになって、これは、直ぐにでもお礼を申し上げねばとうかがったしだいなのです」

「まあ、それはそれはご丁寧に」

「つきましては、ほんの気持ちばかりなのですが、お礼のしるしとして、これをご笑納くださいませ」

 スっと八房が横滑りすると空中に洗面器ほどの桶が現れた。

「まあ!?」「檜のお風呂じゃないの!?」

 左右の肩に乗ってきて、チカコと御息所が感激する。

「はい、実は、今の今まで悩んでいたのです。里見家にはもう昔の勢いがございません。それで、取り急ぎお礼をと、伏姫さまがお渡しになったのが……」

「このお風呂なのね!」

「なんて気が利いているんでしょ!」

「そうね、ついさっきまで二人とも言ってたものね」

「いえ、実は、姫さまから預かったのはこけしほどの原木なのです。いえ、原木と言っても、甲斐の山奥で御神木と崇められていた由緒のあるものでして」

「原木がお風呂に?」

「はい、御神木には霊力がございます。不肖、八房にも少しばかりの呪の力もございますので、みなさんのお声を漏れ聞いて、ついさっきお風呂に変化(へんげ)させた次第なのです」

「まあ、そうだったの!」

「いやはや苦肉の策、お恥ずかしゅうございます」

「ううん!」

「そんなことはない!」

「あ、ちょ……うわ!」

 スッテーーン

 二人が身を乗り出したので、わたしはバランスを崩して、スノコに尻餅をついてしまった。

「あいたた……」

「あら、ごめん」

「だいじょうぶ?」

 ちょっとおざなりだけども、二人も窓枠から下りてきて腰をさすってくれる。

「あ、八房は?」

「ああ、帰ったわ」

「八房も、長い時間は浮いていられないみたい」

「そう、こっちこそ、きちんとお礼を言いたかったのに」

「でも、これで三人揃ってお風呂に入れるね」

「うん、さっそく入ろう!」

「ダメだよ、一番風呂はお爺ちゃんなんだから」

「ちぇ」

「年寄りの一番風呂は体に悪いぞよ」

「はいはい、今度は夕飯のお手伝いするから、あんたたちは部屋に帰りましょうね」

「むー」

「仕方ない、やくもにも立場があるよね」

 むくれる御息所をチカコがなだめてくれる。

 なかなかいいコンビになった。

 

 部屋に帰ると、お湯も張っていないお風呂に入ってニコニコの二人。

 なんか、子どもじみてるって思ったけど、顔を近づけてみると、檜のいい香りがして、なるほどと思う。

 これで、お素麺とかいただいたら美味しいかも……思ったけど、二人のお風呂と共用じゃねえ(^_^;)。

 それから、ちゃんと晩御飯もいただいて、後片付けも手伝って、三人でお風呂に入ったよ。

 

 あ~~ごくらくごくらく(^▽^)/

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 アカアオメイド アキバ子 青龍 メイド王

 

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明神男坂のぼりたい・95〔The Summer Vacation・2〕

2022-03-09 06:58:39 | 小説6

95〔The Summer Vacation・2〕 

 

 

 バスケット一杯のもぎたてレモン!!         

 昨日の初舞台の新聞の評さ!

 家で一番早起きのお父さんに、朝の6時に起こされて知らされた。

 いっぺんに目が覚めてしまったよ。

 あたしたちのデビューは昨日、夏休み初日の劇場公演の二番目だった。選抜メンバーのヒット曲とトークの最後に紹介された。

「ちょっと異例の早熟デビュー。でもどこか面白くて新鮮! 名無しの6期生初のお披露目! バケーション! どうぞ!」

 選抜センターの石黒麗奈さんの紹介で、あたしたちは舞台のカミシモから11人づつ出て、バケーションをかました!

 VACATION(ブイエーシーエーティアイオーエン)!

 舞台のリハは一回しかできなかったから、ぶつかったり、イントロの間にフォーメーション整えたり、はっきり言ってドンクサイ。

 だけど、歌とダンスは二日で仕上げたとは思えないくらいにイカシテタ!

 衣装は急にオソロは間に合わないので、親会社のユニオシ興行の衣装部から借りてきたオールディーズ。衣装さんの工夫で、ブラウスとスカートが半々の割合で揃ってる。それをいろいろ組み合わせてバリエーションを工夫。スカーフは首に、それぞれの工夫で巻いて、バラバラの中にも統一感。

 曲はオールディーズの代表曲なんで、たいていのお客さんもノリノリ。

 あっという間に一曲終わって、石黒さんのMCで全員が10秒ずつの自己アピール。

「東京音頭でオーディション通りました。神田明神男坂下のオネーチャン。佐藤明日香! 明日の香り! では明るく元気に東京音頭の一節を!」

「やられてたまるかあ! 一人10秒だぞ。アキバはジャンク通り。お電気娘のカヨちゃんこと白石佳代子で~す!」

 てな具合に続いて、ボロが出る直前の7分あまりで退場。

 一応観客席は湧いていた。だけど、これは選抜の人たちが作ってくれた空気に乗ってなんとか恥をかかずに済ませた程度……だと思っていた。

 ところが、新聞の評は思いがけずに好意的だった(^▽^)!

 ネットで、スポーツ新聞とか見てみると、三面のトップとはいかないけど、各紙とも二三段くらいのコラムで書いてくれてて、さっきの「もぎたてレモン」やら「異色の6期生デビュー!」とか書いてくれていた。

「そだ、ブログだ(*゚▽゚)!」

 あたしたちは、研究生になった時からブログのソフトを渡されて毎日更新してる。AKRだったらいっぱいアクセスがあると思ってたけど、まだ顔も見たことない研究生へのアクセスは少なくて、日に300ほどだったけど、昨日は1000件を超えた。

 コメントが20個ほど着てて「明日香の東京音頭が聞いてみたいぞ!」いう書き込みが多かった。

 動画で東京音頭を撮って、さっそく流そうと思って、美枝、ゆかり、麻友の三人にメール。いきつけのカラオケ屋で動画を撮ってYoutubeでアップロード。ほんとは、そのままカラオケで遊んでいたかったけど、夏休みは午後からみっちりレッスン。

「ごめん、また今度!」

 で、スタジオに行ったら、夏木先生に怒られた……(^_^;)。
 

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せやさかい・282『ジャンケン⇒阿弥陀くじ』

2022-03-08 17:37:37 | ノベル

・282

『ジャンケン⇒阿弥陀くじ』   

 

 

 堺の街では、グー・チョキ・パーで勝ち負けを決めるのをジャンケン。あるいはインジャンと言います。

 そのジャンケン、あるいはインジャンを、さっきから五人でやって、五回も失敗してます。

 なんで失敗かというと、揃わへんのです。

 

「ジャンケンホイ!」「ジャンケンで、ホイ!」「ジャイケンホイ!」「インジャンホイ!」の四種類があるからです。

 お祖父ちゃんが「インジャンホイ!」

 おっちゃんが「ジャイケンホイ!」

 テイ兄ちゃんが「ジャンケンで、ホイ!」

 あたしと留美ちゃんが「ジャンケンホイ!」

 

 一回目、みんなバラバラで揃えへんかった。

 そうでしょ、掛け声がちゃうさかい「ホイ!」がズレるだけちごて笑ってしまう。

「え、なにそれ?」「ちょ、ちゃうやんか!」「ちがいますねえ(^_^;)」「ちょ、揃えようやあ!」

 掛け声を揃えていうことになるねんけど、みんな、子どものころからのやり方があって、簡単には引き下がれへん。

「じゃ『ホイ!』のタイミングにだけ気を付けて、みんなでやり直しましょう!」

 留美ちゃんが穏当な妥協案を提示するんやけど、『ホイ!』を言う前に誰かが笑ってしまって勝負になれへん。

 

 で、なんでジャンケンしてるのかと言うと、あたしと留美ちゃんの卒業式に出る人を決めてるんです。

 

 え……なんで、自分の卒業式やのに、自分が参加してるかて?

 それはね、おばちゃんの代わりをうちが。詩(ことは)ちゃんの代わりをうちがやってるからです。

 二人とも留守?

 いえいえ、二人ともソファーに座って笑てます。

「ぜったい笑っちゃうから代わって」と、おばちゃんも詩ちゃんも言うからです。

 じっさい、やってみて笑いっぱなしやねんけどね。

 

 実はね、コロナのために参列は保護者一名に限られてるんですよ。

 それで、家族みんなでジャンケンをやってるという次第です。

 お祖父ちゃんは、いちばん古くて「インジャンホイ」

 おっちゃんが「ジャイケンホイ」

 テイ兄ちゃんが「ジャンケンで、ホイ」

 うちと留美ちゃんは「ジャンケンホイ」

「昔は、みんなインジャンやった!」

 お祖父ちゃんが譲らんもんやから、おっちゃんもテイ兄ちゃんも自説を曲げません。

 まあ、ジャンケンごときで笑えるんは家族円満な証拠やねんけど、これではラチがあきません。

「しかし、一家にひとりだけいうのは殺生やなあ」

 テイ兄ちゃんが根源的な文句を言う。

「まあ、スペイン風邪以来やさかい、しゃあないなあ」

「お祖父ちゃん、スペイン風邪罹ったん?」

「わしは、そこまでの年寄りやない」

「スペイン風邪て、大正時代やからなあ」

「あ、もう百年も前なんですねえ!」

 年号言われて、すぐに何年前か言える留美ちゃんはさすがや。

「じゃあ、いっそ、阿弥陀くじでやったらどうですか?」

「おお、いかにも真宗のお寺いう感じやなあ」

 おばちゃんの提案にテイ兄ちゃんが賛成して、さっそくあみだくじ。

「じゃ、さっそく作るわね」

 詩ちゃんが、広告の裏を使ってあみだくじを作る……。

 

「やったー、おばちゃんの勝ちでーす!」

 おばちゃんが栄冠を勝ち取る。

「あんたも、自分で『おばちゃん』いうようになったんやなあ……」

 おっちゃんが、半分負け惜しみで、それとなく嫌味を言う。

「そういうあなただって、近所の子供に『おじいちゃーん』て呼ばれてたじゃないですか」

「あ、あれは、ちゃんと『おっちゃーん』て言いなおしよったで」

「そう言わなきゃ、ボール拾ってもらえないからでしょ」

 詩ちゃんが止めを刺して、食後のリビングは笑いに包まれました。

「せやけど、オレ、行きたかったなあ……」

 テイ兄ちゃんが組んだ足の指をクネクネさせながら悔しがる。

「まあ、こんなご時世やさかい、しゃあないなあ」

「さくら、おまえ、なんで嬉しそうやねん!?」

「ああ、せやかて、たった一名の枠を巡って、家族みんなで熱くなれるんは嬉しいやんか」

「あ……せやなあ、さくら、ええこというなあ」

「ちょ、お祖父ちゃん、髪の毛クシャクシャにせんとってえよ(^_^;)」

「お茶、淹れなおしましょうか?」

「あ、わたしやるわ」

 おばちゃんと詩ちゃんがお台所に向かうと、留美ちゃんがスマホを掲げた。

「二人いけますよ!」

「「「「「え?」」」」」

「先生にメールしたんです、そしたら、わたしとさくらとで二軒分の枠があるらしいです!」

 あ、そうか。

 

 そういうことで、もう一人を阿弥陀くじで選ぶことになりました。

 せやけど、それって、うちと留美ちゃんは別の家の子やいうことやねんけども、これは気ぃつかへんかったいうことにしました。

 あしたは、公立高校の入試。

 あさっては卒業式の予行。

 その次が、いよいよ卒業式です……。

 

 

 

 

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鳴かぬなら 信長転生記 62『豊盃』

2022-03-08 11:05:01 | ノベル2

ら 信長転生記

62『豊盃』信長  

 

 

 豊盃には無事に入ることができた。

 茶姫にもらった手形は掛け値なしの本物のようだ。

 

「ちょっと緊張した」

 通関を済ませると、無意識に深呼吸するシイ(市)。

「あ、ヤバイよね、こんな緊張してちゃ」

「そうでもないぞ、周りを見てみろ」

「え、ああ……」

 さすが南部の首邑、それも我が転生国との戦を前にして、人の出入りが激しい。

 急な徴募のために、万余の新兵や兵役志願、加えて、その部隊を養うための輜重部隊、工兵隊などが移動して来ている。部隊移動を当て込んだ商売人や風俗の者たちも、その倍ほども入関している。

 その多くは、豊盃のような大都会には縁のない若者たちで、いずれも、豊盃の大きさと活気にあてられて、頬を染めている者ばかりだ。

「みんなお上りさんだぁ(^_^;)」

「ほんとにな」

「深呼吸しているのはシイだけじゃないぞ」

「アハハ、走り回ってるやつも居る」

 ほかにも、やたらと写真を撮るやつ、飲茶や屋台の店をハシゴするやつ、方向や目的地が分からず、地図と睨めっこするやつ、迷子の仲間を探すやつ。とにかくゴチャゴチャしている。

「安土の賑わいよりもすごいねえ」

「当たり前だ、安土は16世紀の街だぞ」

「ここは、新旧ごっちゃだね」

「ああ、そうだな……」

 言われてみると、ちょっと危なかしいほどに統一感が無い。

 中国の古い胡同(フートン)に見まごう町があるかと思えば、その向こうに原色のビルが建っていたり。我勝ちに付けられた看板も、墨痕あざやかな繁体字もあれば簡体字も、中には横文字やハングル、日本語に横文字まで入り乱れ、看板自体も電飾が付けられたり、今風のパネルディスプレーであったりする。

「見てよ、ファッションも、まるでコミケのコスプレだよ!」

「なかなかの傾き(かぶき)ようだな」

 多いのは三国時代か水滸伝かという感じの中国風だが、現代風やモダンレトロのチャイナドレス、人民服、上海あたりのニューファッションからファッションモンスター的な者までぞめき歩いている。

 ガタガタ プシュー ガタガタ

 振り返ると、自動車と言うよりは汽車と呼んだ方がいいのが、馬と並んで走っている。

「でも、飛行機とかドローンはないんだね」

「それは、転生の街でもないだろう」

 自分で言って思い当たった。

 転生の国は、ほとんど今風の日本国だが、転生してきて以来、飛行機を見たことが無い。

 二宮忠八という飛行機の神さまめいた者もいるが、奴も飛ばしているのは紙飛行機だけだ。

 

 キャー! ウワア!

 

 悲鳴に振り返る。

「なんか揉めてる?」

「関所の役人と……あの顔は、曹素の手下だ」

 どうやら、曹素の手下が関所で揉めて役人に制止させられている。

「あ、なんか、こっち見てる」

「退散した方がいいようだな」

「うん、曹素のやつ、まだ諦めていないんだね。しつこい男は嫌われるっちゅうの!」

 シイ(市)の眉間に皴が寄る。本気で怒ってるぞ。

「あ、こっちも!」

 角を曲がると、同じように手下と巡邏の兵隊が揉めている。

「チ!」

 それから、二三度道を変えるが、そこでも揉めている。

 道幅があるので、シカトして通過することもできるのだが、シイは目にするのも穢れとばかりに踵を返す。

 

「「あ?」」

 

 いつの間にか『曹茶姫将軍本営』の前にまで来てしまったぞ。

 

☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生
 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
 宮本 武蔵       孤高の剣聖
 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
 今川 義元       学院生徒会長 
 坂本 乙女       学園生徒会長 
 曹茶姫         魏の女将軍

 

 

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明神男坂のぼりたい・94〔The Summer Vacation・1〕

2022-03-08 06:11:58 | 小説6

94〔The Summer Vacation・1〕 

         


 夏休み(The Summer Vacation)が始まった!

 

 なんの予定も目標も無くても、夏休みの初日は楽しいもんだと決まってる……いつもは。

 今年は、ちょっとちがう。

 美枝の連れ子同士の、それも女子高生と大学生のデキチャッタ結婚も丸く収まった。アメリカの高校まで行く必要も無くなった。

 一昨日の晩、美枝の家でお父さん・お母さん・お兄さん兼ダンナ・美枝本人と2時間ケンケンガクガクの大論争。

 だけど、あたしがAKRの研究生だということが分かったとたんに、コロッと話が片付いた。

 AKRの看板が水戸黄門の印籠になるとは思わなかった。

 

 さつきに言われて考えた。

 

 お父さんもお母さんも、美枝の顔見てたら無理だというのが分かってきた。しかし、話の勢いで簡単に引き下がるわけにはいかなくて。そこで、あたしのAKRの話に感心したふりして、矛先を収めた。

 男坂で待ってくれていたのも嬉しかった。出雲阿国も来てくれて……ゆず餅おいしかった。

 水天宮さまも気に掛けてくださったみたいだしね、お団子食べに来たついでというのが奥ゆかしいよ。

 水天宮さまの本性は建礼門院。

 あとで調べたら、平清盛の娘の徳子。壇ノ浦の戦いで、子どもの安徳天皇といっしょに海に身を投げて、平家一門の中で、ただ一人助かった人。

 きっと、子どもの安徳天皇への気持ちの強さから水天宮になったんだ。

 ググったら、安徳天皇、母親の二位の尼もいっしょに祀られていて、今は幸せそう。

 そうだよね、自分が幸せでないと、人の気持ちに寄り添ったりはできないだろうしね。

 

 あたし、ちゃんとお礼言えたかな……言ったような気はするけど……ゆず餅もらって「ありがとう」しか言えてないかも。

 

 で、昨日スタジオにいくとびっくりした。

「君らのデビュー曲が決まった」

 市川ディレクターが直々に言った。

「ええ!?」「ウワー!」いうのが22人のメンバーの反応。

「正直、デビューさせんのはまだ早い。未完成。ただ、他の期の研究生と違って、えらくハッチャけた感じが、とても新鮮で面白い。この新鮮さは、上手くなるに従って失われていくと、ボクや笠松さん、夏木さんも感じてる。AKRは元々ファンの人たちに押されながら成長するのがコンセプトだった。ところが競合するグループの完成度が年々高くなるので、いつのまにか完成度が高くなりすぎて、高止まりのマンネリの傾向にある。そこで、君たちは、あえて未完成過ぎるくらいのところで出すことになりました」

 後を夏木さんが続けた。

「この方針は決まったばかりで、曲も振り付けも一からでは間に合わないので、逆手にとって、リメイクでいきます!」

 パチン

 夏木さんが指を鳴らすと曲がかかった。

 V・A・C・A・T・I・O・N 楽しいな(^▽^)/    

「コニー・フランシスの名曲。オールディーズの代表曲。これをひと夏やります。さ、立って、振り付けいくわよ!」

 あたし、あたしたちの「バケーション」という名前の目標というよりは、戦いが、ここから始まった!

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魔法少女マヂカ・262『取り返す』

2022-03-07 14:24:46 | 小説

魔法少女マヂカ・262

『取り返す語り手:マヂカ  

 

 

 千年も魔法少女をやっていると、いろんなことに慣れてくる。

 妖や魔法使いや魔法少女に対してもそうだが、人間のやる事なら、たいていのことは見通せる。

 むろん泥棒やかっぱらいに対してもね。

 

 四百年前、調子に乗った石川五右衛門を捕まえたのも、雲霧仁左衛門に引導を渡したのも、わたしだし。義賊に徹することを条件に見逃してやったのも、魔法少女の片手間に女義賊弁天のマヂカとふたつ名持った、このわたしだ。

 だから、震災直後の銀座とはいえ、盗られ

 三越の屋上で周囲を観察して、あたりを付け、霧子たち三人に休憩を命じて八丁目に飛んだ。

 一筋曲がれば新橋と汐留の分岐というところで、そいつを見つけた。

「おじさん、そのステッキ返してくれないかなあ」

 声を掛けると、尻っ端折りに鳥打帽というオッサンがギクリと立ち止まったが、振り返った顔は緩んでいる。

 こいつ、声で女だと舐めたな。まあいい、軽快な再生服とは言えスカートだ、走って追いかけるのは面倒だしね。

「言いがかりはやめてもらおうぜ、これは、親父の形見の……」

「ほう、そいつが仕込み銃と知ってのハッタリかい?」

「仕込み銃だと!?」

「悪いことは言わない、お巡りさんに見咎められたら御用になるよ。どうせ前があるんだろうし、今度捕まったら二三年は物相飯(もっそうめし)喰うことになるぞ」

「女のくせに伝法な口ききやがって、てめえ……」

「四の五のいってないで……ほれ!」

 ポコン

「い、痛てえ!」

「いい音だ。頭丸めて寺に行きゃあ木魚の代わりに雇ってもらえるよ。じゃ、返してもらうよ」

 ステッキを取り上げると、鳥打帽は這う這うの体で逃げて行った。

 大事にならなくてよかったな……

 仕込み銃は、ステッキとしても樫材に金細工の獅子頭、目には小粒のダイヤが嵌められていて、かなりの高級品。置き引きが目を付けるのも無理はない。

 四丁目目指して歩いて帰る。

 十七歳の女学生らしく、いかにもお爺ちゃんの忘れ物という風に胸に引き付けて持つ。

 その健気な姿に、自分で可笑しく笑いそうになる。これで四丁目まで戻るのは骨だなあ……そう思って五丁目まで戻ると、向こうの歩道から三人が手を振ってやってくる。

 オーーイ

「心配なんで、きちゃった!」

 JS西郷が二人のおねえちゃんを従えた小学生のように駆けてくる。

「ありがとう、取り返してくれたんだね!」

「ああ、今度はしっかり持っているんだぞ」

「ハーイ!」

 二人にも「しっかりね!」と言われて、テヘペロのJS西郷。

 

 一瞬の気配。

 

 アッと息をのんだ時には、黒い鳥がステッキのヘッドを加えて空高く舞い上がった。

「くそ、トンビか!?」

「今度はあたしも!」

 二度も取られて、JS西郷も子どもとは思えない顔つきになって力こぶを見せる。

「待ってろ!」

「待ってられっか!」

 ピョン ピョン ピョーン!

「「西郷ちゃーん!」」

 JS西郷は、驚く霧子とノンコを尻目に、街灯や電柱を猿のように跳び上がり、飛び移り、ビルの屋根や店の庇をジャンプしながら付いてくる。

「見えた!」

 さすがに仕込み銃のステッキは重量があって、トンビは高く飛べないでいる。

 パシ!

 スピードも落ちてきたところを、JS西郷は、いつの間にか取り出したパチンコでトンビを撃った。

 キエー!

 背中に当ったトンビは悲鳴を上げてステッキを放す!

「返してもらうぞ!」

 ジャンプして受け取って、JS西郷に渡してやる。

「ごめん、また、面倒かけちゃったね(;'∀')」

 さすがに、申し訳なさそうに頬を染めている。

「帰るまで持っていてやろうか?」

「え……あ、そうだね……いや……」

 手渡そうとした瞬間にJS西郷がためらってしまった。

 ズドン!!

「「ウワ!!」」

 二人とも手が滑って、ステッキが暴発してしまった。

 銃弾を発射したステッキは、反動で三メートルほども飛び上がって……また、持っていかれた!

「今度は犬だぞ!」

 黒い犬が、器用に咥えてビルの谷間を逃げていく。

「待て! 犬!」

「こんにゃろ!」

 同時に駆けだして犬を追う。

 瞬間目をやった歩道には、ステッキの仕込み銃とは思えない弾痕が穿たれていた。

 まるで重機関銃の弾痕だ。

 いや、ゆっくり思い出してなどいられない。

 三丁目に向かって追っていくと、いつの間にか、向こうの歩道を霧子とノンコが追いかけているのが視界に入った。

 仕方ない。

 及ばずとも、みんなで追うしかないか……

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

 

 

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明神男坂のぼりたい・93〔人生出来たとこ勝負でゆず餅〕

2022-03-07 08:40:40 | 小説6

93〔人生出来たとこ勝負でゆず餅〕 

       

 


「人生って、出来たとこ勝負だと思うんです!」

 なんともヘタクソに大見栄を切ったのは、夕べ。

 AKRのレッスンが終わって、なんと夜中の10時に美枝の家のリビングで中尾一家を前に大演説をぶった!


「それ、出たとこ勝負じゃないの?」

 元凶の兄貴が鼻先で言いう。

「いいえ『出来たとこ』です。お腹の中の赤ちゃんが、まさにそうです!」

「そうか、言葉のあやで、来ようってか」

「美枝に赤ちゃんが出来て、二人で夫婦になる。この大前提は了解してもらえますね?」

「ああ、だから、こんな夜中にみんなに集まってもらってる」

 お父さんが鷹揚なんか嫌味なんか分からん言い方をする。

「それを了解してもらえたら、結論は一つです。美枝を東京に置いて、全うさせるのが正しいんです」

「だけど、美枝は、こう見えてプレッシャーには弱い子なんだ。学校や世間で噂になったら耐えられないよ」


 ムカついた。

 

 耐えられんような現状にしたんはあんただろ! 

 それに、いかにも秘密がバレるのはあたしたちからだろうという上から目線!


「あたしたちがバラさなくても、見学ばっかりの体育とか、体つきの変化なんかで必ず分かってしまいます。確かに、アメリカに行けば一時秘密は隠せます。だけど、お兄さん……ダンナさんには分からないでしょうけど、それは逃げたことと同じです」

「逃げて悪いのかい? 母親の心理はお腹の中の子供にも影響するんだ。プレッシャーの少ない環境で、出産させてやりたいと思うのが配偶者のつとめだろう?」

 どの口が言うとんねん! アメリカ行きの費用持つのはあんたの親だろが!

「逃げたという負い目は一生残ります。それこそ、赤ちゃんに悪い影響……場合によっては、流産、切迫早産の危険もあります」

「そんなことは……」

「あります。これ、厚労省の資料です。『高校生などの若年出産のリスク』という統計資料です。社会的な体面などを考えて妊婦の環境を変えた場合の問題点に、逃避的対応をとった場合の影響に出てます」

 お母さんが、興味を示してスマホの画面を見た。美枝自身は俯いたまんま。

 美枝はもともとは内弁慶な子だ。親しい仲間や地域の中でこそ大きな顔して『進んだ女子高生』ぶってるけど、アメリカみたいに、まるで違う環境に入ってしまったら青菜に塩になるに決まってる。

「無事に出産できたとしても、美枝には逃げ癖がつくと思うんです。なにか困ったことがあったら、親が助けてくれる。逃がしてくれる。その方が本人のためにも生まれてくる子にも、長い目で見ると悪い影響が出ます」

「しかしねえ、鈴木さん」

 お母さんが口を開く。

「無事に出産することが大事だと思うの。万一の事があって、生まれてくる子供や母体に影響が出て……場合に寄っちゃ流産したり、子どもに障害が残ることもあるのよ。そういうリスクを小さくしてやることも親の務めだと思うの」

 親の務め……もうちょっと前に発揮しておくべきだよ。

「美枝を出産するときも、ちょっと大変だったのよ」

「え、美枝の時もですか?」

 ニュアンスで母体の事では無くて、出産する環境の事だと思った。

「え、まあ……」

 言葉を濁すくらいなら言わないでほしい。

「でも、お母さん、美枝は無事に育ってきたじゃありませんか!」

 理屈じゃない、無事健康に育って出産までしようって美枝そのものをタテにする。

 ひょっとして、美枝の体や生まれてくる赤ちゃんの事とではなく、世間の聞こえを意識?

 でも、それを言ったら、きっとご破算になってしまう。

 最後の最後は美枝自身の気持ちなんだけど、大事なとこで俯いたまんま。

 

 それから、一時間近くも議論した。

 

「もう時間も遅い。日を改めて話そうじゃないか」

「無理言いますけど、結論出しましょう。延ばしたら美枝が苦しむだけです」

「もともとね、こんな平日の夜中に話そうってのが無茶なんだよ。土曜でも日曜日でも……」

「土曜は都合がつかない。そうおっしゃったのはお父さんです。日曜はお兄……ダンナさんが都合が悪いって、伺いました」

「じゃあ、一週間延ばせばよかったじゃん」

「その一週間、美枝は苦しいままなんですよ!」

「でも、こう言うとなんだけど、今日は私は昼からスケジュールが空いていた。こんな時間に設定したのは、鈴木さん、あんたの都合……責めるような言い方で申し訳ないけど。あんたが、そこまで言うんだったら……なあ」

「すみません、それはあたしの都合で……」

 雪隠づめの沈黙になってしまった。

 ヤバイ……。

「明日香は、AKRのレッスンがあるんだよ……」

 美枝が呟くように言う、せめてもの義理立てなんだろうけど、もっと自分のこと言えよなあ。

「AKRって、あのAKR47のことかい?」

「は、はい。なりたての研究生ですけど……」

「「「え!?」」」

「すごいよ、あれ2800人受けて20人ほどしか受からなかったんだろ!?」

 意外なとこで、美枝の家族が感動した。

「さぞかし、ダンスやらボイトレとか、普段から習っていたんだろう!?」

「いいえ、進路選択の一つで体験入学みたいなつもりで受けたら通ったんです。で……出来たとこ勝負でやってます」

 あたしが、その時、初めて見せてしまった弱み……だけど、これが功を奏した。

「AKRに合格するような子なら、こちらも真剣に耳を傾けなきゃ!」

 え、今までは真剣じゃなかったの?

 で、美枝のアメリカ行きは沙汰やみになった。

 

 お疲れさん

 

 美枝の家を出て二十分、クタクタになって家に入ろうと思ったら、男坂の上の方から声がする。

 ……さつき?

 団子屋のお仕着せのままで、オイデオイデする。

 話があるんなら、そっちから来いよ……思いながら石段を上がる。

 すると、さつきもゆっくりと下りてきて、真ん中の踊り場のところで、揃って腰を下ろす。

「うちで話すんっじゃダメだったの?」

「いや、ちょっと、ここで話したい気分でな。今の今まで仕込みの手伝いしてたしな」

 そういえば、さつきから柑橘系のいい匂いがする。

「こんどゆず餅を出すんでな。また食べに来い」

「うん」

「よくやったよ明日香」

「うん、でも、AKRで納得されてもね……」

「けっきょく、親の意地なんだよ。明日香の言うことも美枝の事も分かってるんだけどな、言い出した手前引っ込みつかなかっただけさ」

「そうなの?」

「そうさ、まあ、明日香の熱意に『こういう友だちがいるなら』って、賭けてみようって気になったこともあると思う」

「う、うん……」

「自分たちの都合で再婚した夫婦だから、子どもに負い目がある。それが、ああいう気づかいになった」

「そうなの?」

「ああ、そうだ、人間には、そういうところがある。親も兄貴も問題ありだけどな、美枝が受け入れて愛情を感じてるんだ、明日香には分からない美点もあるんだ」

「うん、それは分かってる」

「だったらいい」

「うん」

「とにかく、よくやったぞ、明日香は」

「……あのさ」

「なんだ?」

「なんで、今夜は優しいの? いつもは、もっとツッケンドンじゃん」

「ああ……たまたまだ」

 さつきが目をそらすと、柑橘系の匂いが強くなってきた。

 

 水天宮さまよ

 

 びっくりして振り仰ぐと、二段ほど後ろに出雲阿国が同じお仕着せで立っている。

「水天宮……ああ、こないだ行った?」

「うん、お団子食べにいらっしゃって『みんな良い子たちですね』って仰ってたわよ」

「……水天宮さまって?」

 お参りには行ったけど、御祭神とかは確認しそこねた。

「ハハハ、『何ごとのおわしますかは知らねども』というやつだな」

「え?」

「水天宮の御祭神は建礼門院さまよ」

「建礼門院……」

「子どもを産んで育てることに、人一倍の想いのあるお方。その水天宮様に来られちゃねえ、さつきさん」

「いや、そういうわけじゃ……」

「ちょうど、ゆず餅あがったから……試供品よ、どうぞ」

「あ、ありがとう」

 竹の皮で包んだゆず餅を受け取ったところで意識が飛んだ。

 

 気が付くと、着替えもしないで自分のベッドで寝ていた。

 いつもより十分早く目覚めた部屋は、ゆずの香りに満ちていた。

 

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銀河太平記・097『リングを付ければ?』

2022-03-06 12:51:08 | 小説4

・097

『リングを付ければ?』 加藤 恵    

 

 

 仕方ありませんね……。

 

 一言もらすと、社長はパチパチたちの頭脳の二割をブロックした。

 一割は、今回の銀行業務をやるために増設された部分。残りの一割は、パチパチたちが長年の間に自己修正してきた部分だ。

 ピューーン

 なにか萎むようなノイズがして、パチパチたちの目から光が無くなった。

『……なんだか、バカになったような』

『……閉門いたしたような心地でござる』

『……脳みそがのびたラーメンみたいになったアル』

「ハア……いっそ、作業体か元のオートマ体に戻してやった方がよくねえか」

「シゲさん、それって、今のオートマ体にしてやった倍の手間がかかるんですけど」

「それもそうだな、このオートマ体はグミ(恵の愛称)会心の作だあ……戻すこと前提にはやってねえわなあ」

「いまのオートマ体の外装はバイオだから、日々のメンテやってやらないと、すぐにミイラみたいになってしまうし」

『ミイラいやだ』

『切腹の方がマシでござる』

『ミイラは干物、干物はお湯で戻すよろしアル』

「また事態が変われば元に戻してもらうからね」

 社長が、これで終わりにしようとすると、立ち合いに来ていた及川の部下が立ち上がった。

「バイオでは一見して作業機械とは分かりません」

「ああ……そうですね。でも、島の住人は三人がパチパチであるのは十分承知しています。問題はないでしょう」

「困ります、西ノ島は日本の領土なのですから、日本の法律が適用されます」

「でも、作業体に戻すには……」

「いえ、それには及びません。みなさん、パチパチには愛着をお持ちのようですし、そこまでは干渉いたしません」

「では、どうしろって言うんですか」

「いや、そんな怖い顔をしないでくださいよ加藤さん」

「でも、どうすれば!?」

 及川と、その部下には、いいかげん我慢も限界に来ていたので、ついつい言葉も荒くなる。

「リングを付ければ問題ありません(^▽^)」

「「「リング!?」」」

 わたしとシゲさん社長の声が揃うと、ラボの前の島民たちからも「「「リングだとぉ!?」」」と声が上がる。

 リングは先の満州戦争以前、ロボットに義務付けられていたシグナルだ。

 頭の上に円形ビルの広告のようにリングのホログラムが回転して、遠くから見てもロボットであることが明確になるようにロボット法で義務付けられていた。

 ロボット差別が問題になった前世紀の末、ロボット人権法が可決されると同時に廃止されたしろものだ。

「あ、いえ、広告塔のようなものでなくてもいいんです。ロボット人権法でお蔵入りになりましたが、ステルスリングでも構わないと思います。あれなら、ハンベを使わない限り認知されませんから」

「同じことでしょ、その気になったら誰にでも視認できる」

「はあ、作業機械は自走いたしますので、基本的に道路交通法の適用を受けますので、どうしてもナンバープレート的な物は必要でして」

「仕方がない、斎藤さん(及川の部下)に罪があるわけじゃない。ステルスで手を打ちましょうか……」

「「「「「社長!」」」」」

「ご理解いただいて、まことにありがとうございます。これで、及川も安心することだと思います」

「別に及川さんを喜ばせるためじゃないのよ」

「も、申し訳……あ、及川から連絡がきました」

 背中を向けてハンベを操作する斎藤、二言三言やり取りすると、満面の笑みを浮かべて振り返った。

「みなさん、喜んでください! 島内の主要道路が国道に指定されました!」

 え?

 この「え?」は感激の「え!?」ではない。

 それがどうした? の「え!?」だ。

 

 どうも、及川たち国交省と島民の間には越えがたい認識の相違がある。

 

※ この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ
  • 森ノ宮親王
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室                西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
  • 村長                西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地

 

 

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