REオフステージ (惣堀高校演劇部)
120・落花狼藉の無礼講 ![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/4e/731505b1c90aa9afc1b35dd4753f5b5e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/4e/731505b1c90aa9afc1b35dd4753f5b5e.jpg)
三十分もすると無礼講は手が付けられなくなった。
最初は隣り合う席で喋るぐらいのものが、座を移るようになり、移った先で酒を酌み交わしながら口角泡を飛ばしての議論が始まる。
激してくると、裃姿の重役が割って入り、なにやら一言二言言うと、皆が手を打って腕相撲が始まったり放歌高吟したり。
それでも収まりがつかないと対立している双方から人が出て、扇子を刀に見立てての剣舞。剣舞はただの剣舞ではなく、隙を見ては持った箸や扇で相手を切ったり打ったり、大の大人が果し合いの真似事になる。相撲になるところもあれば、野球拳を始める者もいたり、あげくには「ウップ」と口を押えて庭に出て反吐をついたり悪態をついたり落花狼藉の大騒ぎになった。
「ここの慣わしなのです。お酒が入ったまま論じていては判断を誤ります。しかし、いったん火のついた対抗意識には決着を付けなければ、やはりもめ事になります。それで、歌ったり踊ったり腕相撲になったり、その場の優劣だけを決しておくのです。歌や踊り、せいぜい野球拳ですから、負けても恨みにはなりません。生活の知恵ですね(^ー^* )フフ♪」
瀬奈さんは傍に来て解説してくれる。瀬奈さんが居なければとっくに参っていただろう。
「勝負が付くと、勝者敗者の双方がやってきます。ご苦労ですが、双方に杯を渡して、できれば笑顔でこのお酒を注いでやってください。姫君から盃を頂いたということで双方納得いたしますから」
「は、はい(^_^;)」
「ここの慣わしなのです。お酒が入ったまま論じていては判断を誤ります。しかし、いったん火のついた対抗意識には決着を付けなければ、やはりもめ事になります。それで、歌ったり踊ったり腕相撲になったり、その場の優劣だけを決しておくのです。歌や踊り、せいぜい野球拳ですから、負けても恨みにはなりません。生活の知恵ですね(^ー^* )フフ♪」
瀬奈さんは傍に来て解説してくれる。瀬奈さんが居なければとっくに参っていただろう。
「勝負が付くと、勝者敗者の双方がやってきます。ご苦労ですが、双方に杯を渡して、できれば笑顔でこのお酒を注いでやってください。姫君から盃を頂いたということで双方納得いたしますから」
「は、はい(^_^;)」
いつのまにか『お嬢さま』が『姫君』になっている。
やがて、顔を真っ赤にした男たちが二人一組でやってくる、瀬奈さんが間に入ってくれて、わたしも引きつりながらも微笑み返し。で、丸く収まるのだが、酒臭いオッサンたちの入れ代わり立ち代わりには正直参ってしまう。
「松井家四十七代目様のお顔を見ることが叶って、もう言葉もござりません……」
「はい、お盃をどうぞ(^○^;)」
「これはこれは……」
「きゃ!」
書院番と言われるオッサンは杯を受け取ろうとして、そのまま覆いかぶさってきて眠ってしまう。
「〇〇さん、昔なら切腹ものですよぉ」「これはしたり」「ならば腹を……」「切腹は向こうでいたしましょうねぇ」「いかにも……」「はい、次の方ぁ……」
瀬奈さんがあしらって、他のメイドさんたちが酔っぱらいを引き立てて行く。
こんなことが十数回繰り返されて、お酒を飲まずとも参ってくる。
「ちょっと風に当たりたいわ」
「楓さん、お願いします」
瀬奈さんが声を掛けると愛くるしいメイドさんがやってきて肩に掴まらせてくれて廊下に出してくれる。
楓さんは廊下の角を二つ曲がったところまで案内してくれて、大広間とは庭を挟んだ反対側。廊下の幅が三倍ほどになっていて、廊下でありながら絨毯が布かれ椅子に座って休めるようになっている。
庭を挟んだ館に光芒が屋根の輪郭をなぞるように射した。
「御屋形様がお戻りになられたようですね」
「大お祖母ちゃんが……会いたいわ」
もう大お祖母ちゃんに会い、言うだけ言って、明日の朝一番で帰ってしまいたい。
さっきの書院番の一言で分かる。思った通り、わたしを四十七代目に据えて後を継がせようというのだ。
「お気持ちに沿えるように……瀬奈さんがお手配されています」
「え?」
楓さんが目配せした先は廊下のT字路のようになっていて、横棒のところを人がやってくる気配。
縦棒の所に居る美晴には足音しか聞こえないが、交差点に来たところで姿が見えた。
「大祖母ちゃん……?」
それは自分とは違う高校の制服を着た女生徒……その子がチラとこちらの方を見た。
歩きながらだけど、まるで宮様のようにお辞儀をする女生徒。わたしは、咄嗟のことに、廊下で生徒会の瀬戸内美晴に会った時のように、不機嫌そうに「オス」と返しただけだった。
女生徒は、そのまま廊下を進んで、宴たけなわの大広間に入っていった。
「さ、御屋形様のところに参りましょう」
楓さんがニッコリと笑った。
やがて、顔を真っ赤にした男たちが二人一組でやってくる、瀬奈さんが間に入ってくれて、わたしも引きつりながらも微笑み返し。で、丸く収まるのだが、酒臭いオッサンたちの入れ代わり立ち代わりには正直参ってしまう。
「松井家四十七代目様のお顔を見ることが叶って、もう言葉もござりません……」
「はい、お盃をどうぞ(^○^;)」
「これはこれは……」
「きゃ!」
書院番と言われるオッサンは杯を受け取ろうとして、そのまま覆いかぶさってきて眠ってしまう。
「〇〇さん、昔なら切腹ものですよぉ」「これはしたり」「ならば腹を……」「切腹は向こうでいたしましょうねぇ」「いかにも……」「はい、次の方ぁ……」
瀬奈さんがあしらって、他のメイドさんたちが酔っぱらいを引き立てて行く。
こんなことが十数回繰り返されて、お酒を飲まずとも参ってくる。
「ちょっと風に当たりたいわ」
「楓さん、お願いします」
瀬奈さんが声を掛けると愛くるしいメイドさんがやってきて肩に掴まらせてくれて廊下に出してくれる。
楓さんは廊下の角を二つ曲がったところまで案内してくれて、大広間とは庭を挟んだ反対側。廊下の幅が三倍ほどになっていて、廊下でありながら絨毯が布かれ椅子に座って休めるようになっている。
庭を挟んだ館に光芒が屋根の輪郭をなぞるように射した。
「御屋形様がお戻りになられたようですね」
「大お祖母ちゃんが……会いたいわ」
もう大お祖母ちゃんに会い、言うだけ言って、明日の朝一番で帰ってしまいたい。
さっきの書院番の一言で分かる。思った通り、わたしを四十七代目に据えて後を継がせようというのだ。
「お気持ちに沿えるように……瀬奈さんがお手配されています」
「え?」
楓さんが目配せした先は廊下のT字路のようになっていて、横棒のところを人がやってくる気配。
縦棒の所に居る美晴には足音しか聞こえないが、交差点に来たところで姿が見えた。
「大祖母ちゃん……?」
それは自分とは違う高校の制服を着た女生徒……その子がチラとこちらの方を見た。
歩きながらだけど、まるで宮様のようにお辞儀をする女生徒。わたしは、咄嗟のことに、廊下で生徒会の瀬戸内美晴に会った時のように、不機嫌そうに「オス」と返しただけだった。
女生徒は、そのまま廊下を進んで、宴たけなわの大広間に入っていった。
「さ、御屋形様のところに参りましょう」
楓さんがニッコリと笑った。
☆彡 主な登場人物とあれこれ
- 小山内啓介 演劇部部長
- 沢村千歳 車いすの一年生
- 沢村留美 千歳の姉
- ミリー 交換留学生 渡辺家に下宿
- 松井須磨 停学6年目の留年生 甲府の旧家にルーツがある
- 瀬戸内美春 生徒会副会長
- ミッキー・ドナルド サンフランシスコの高校生
- シンディ― サンフランシスコの高校生
- 生徒たち セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
- 先生たち 姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
- 惣堀商店街 ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)