宇宙戦艦三笠・44
[小惑星ピレウス・1]
[小惑星ピレウス・1]
三笠は、用心してピレウスの衛星アウスの陰に出た。
ピレウスは目的地だが、正体が分からない。
それは覚悟の上だったが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの中間に位置し、両惑星から絶えず監視されているに違いない。ピレウスの大気圏内に入ってしまえば、どうやらピレウスが張っているバリアーで分からないようだが、そこにたどり着くまでの間に発見されてしまっては元も子もない。
「ピレウスが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの間に入るのを待つ」
ピレウスは目的地だが、正体が分からない。
それは覚悟の上だったが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの中間に位置し、両惑星から絶えず監視されているに違いない。ピレウスの大気圏内に入ってしまえば、どうやらピレウスが張っているバリアーで分からないようだが、そこにたどり着くまでの間に発見されてしまっては元も子もない。
「ピレウスが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの間に入るのを待つ」
「そうするだろうと思って、惑星直列になる時間を狙ってワープしておいた」
修一と樟葉は艦長と航海長としてもツーカーであった。
「でも、ピレウスに敵が侵入していたら……」
美奈穂が珍しく弱気なことを言う。普段は心の奥にしまい込んでいるが、父が中東で少女を救ってゲリラに殺されたことがトラウマになっている。もう大事な仲間を一人も失いたくない気持ちが、美奈穂を、らしくない弱気にさせている。
「その時は、その時。全てのリスクを排除しては何も行動できなくなる」
「美奈穂の心配ももっともだから、ここからできるだけピレウスと、その周辺をアナライズしておくわ。クレアよろしくね」
「ええ、ピレウスの自転に合わせて表面と地中10キロまではアナライズしておきました」
「結果が、これだな……」
モニターにピレウスの3D画像が出た。
「地球に似てるけど、人類型の生命反応がないです。文明遺跡は各所で見られるんですけど」
「まるでFF10のザナルカンドみたいな廃墟ばかりね」
「何かの理由で、人類は破滅したんだな……」
みんながネガティブな印象しか持てないほど、その人類廃墟は無残だった。
「この星には、負のエネルギーを感じます。アクアリンドよりももっと強い……これシミレーションです」
クレアが、モニターを操作すると、海に半分沈みかけた三笠が写った。
「三笠が沈みかけてる……」
「中を見てください」
三笠の中には、4人の老人と、一体の壊れかけたガイノイドの姿しかなかった。
「あれ……オレたちとクレア?」
「はい、一か月滞在していると、ピレウスでは、ああなります」
「いったいどうして……」
「推測ですが、かつてピレウスに存在した人類の最終兵器が生きているんだと思います」
「兵器……あれが?」
「はい、人類と人類が作ったものを急速に劣化させる……そんな装置があったんだと思います。装置そのものも風化して、どの遺物がそれか分からないけど、その影響だけが今でも残っているようです」
クレアは、予断を与えないように、あえて無機質な言い方をした。
「これなら、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手の出しようがないわね」
「でも、それで何万光年も離れた地球に目を付けられてもかなわない」
「それよりも、あんな死の星から誰が地球に通信を……それも地球寒冷化防止装置をくれるなんて」
ブリッジは沈黙に包まれた。
「あの……」
「なんだ、トシ?」
トシの一言で沈黙は破られたが、事態を進展させるものではなかった。
「三笠のエネルギー消費が微妙に合わないんです」
「どのくらい?」
樟葉が敏感に反応した。
「誤差の範囲と言ってもいいんですけど、1/253645001帳尻が合わないんです」
「ハハ、トシもいっぱしの機関長だな。それはアクアリンドのクリスタルを積み込んだせいだろう。あれだって、人間一人分ぐらいの質量はあるから」
修一の結論にみんなは納得した。
ただ、トシは、それが人間一人分であることが気にかかっていた……。
修一と樟葉は艦長と航海長としてもツーカーであった。
「でも、ピレウスに敵が侵入していたら……」
美奈穂が珍しく弱気なことを言う。普段は心の奥にしまい込んでいるが、父が中東で少女を救ってゲリラに殺されたことがトラウマになっている。もう大事な仲間を一人も失いたくない気持ちが、美奈穂を、らしくない弱気にさせている。
「その時は、その時。全てのリスクを排除しては何も行動できなくなる」
「美奈穂の心配ももっともだから、ここからできるだけピレウスと、その周辺をアナライズしておくわ。クレアよろしくね」
「ええ、ピレウスの自転に合わせて表面と地中10キロまではアナライズしておきました」
「結果が、これだな……」
モニターにピレウスの3D画像が出た。
「地球に似てるけど、人類型の生命反応がないです。文明遺跡は各所で見られるんですけど」
「まるでFF10のザナルカンドみたいな廃墟ばかりね」
「何かの理由で、人類は破滅したんだな……」
みんながネガティブな印象しか持てないほど、その人類廃墟は無残だった。
「この星には、負のエネルギーを感じます。アクアリンドよりももっと強い……これシミレーションです」
クレアが、モニターを操作すると、海に半分沈みかけた三笠が写った。
「三笠が沈みかけてる……」
「中を見てください」
三笠の中には、4人の老人と、一体の壊れかけたガイノイドの姿しかなかった。
「あれ……オレたちとクレア?」
「はい、一か月滞在していると、ピレウスでは、ああなります」
「いったいどうして……」
「推測ですが、かつてピレウスに存在した人類の最終兵器が生きているんだと思います」
「兵器……あれが?」
「はい、人類と人類が作ったものを急速に劣化させる……そんな装置があったんだと思います。装置そのものも風化して、どの遺物がそれか分からないけど、その影響だけが今でも残っているようです」
クレアは、予断を与えないように、あえて無機質な言い方をした。
「これなら、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手の出しようがないわね」
「でも、それで何万光年も離れた地球に目を付けられてもかなわない」
「それよりも、あんな死の星から誰が地球に通信を……それも地球寒冷化防止装置をくれるなんて」
ブリッジは沈黙に包まれた。
「あの……」
「なんだ、トシ?」
トシの一言で沈黙は破られたが、事態を進展させるものではなかった。
「三笠のエネルギー消費が微妙に合わないんです」
「どのくらい?」
樟葉が敏感に反応した。
「誤差の範囲と言ってもいいんですけど、1/253645001帳尻が合わないんです」
「ハハ、トシもいっぱしの機関長だな。それはアクアリンドのクリスタルを積み込んだせいだろう。あれだって、人間一人分ぐらいの質量はあるから」
修一の結論にみんなは納得した。
ただ、トシは、それが人間一人分であることが気にかかっていた……。