ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

バッハ:カンタータ第198番「候妃よ、なお一条の光を」 by リリングほか

2009-11-19 | CDの試聴記
同期入社の仲間が、突然逝ってしまった。
1年以上にわたる闘病生活だった。
仕事でもプライベートでも、もう一花も二花も咲かせたかったことだろう。
彼の無念さを思うと、悔しくてならない。

今夜、冷たい小雨の降りしきる中、彼のお通夜があった。
彼の遺影を見ながら、私は「うそだろう。何をにっこり笑ってるんだ。はやく戻ってこい。」と心の中で呟いていた。
やり残したこともいっぱいあったはずだし、奥さんとお嬢さんを遺していったいどうしたんだ。
どうして今日に限って黙っているんだ。いつものように喋ってくれ。
彼は根っから明るい性格で、とにかくよく喋る奴だった。
でも彼の話は人情味にあふれ、いつでも相手を暖かい気持ちにさせてくれた。
寂しいというよりも、悔しさのほうがずっと強い。

そんな彼のことを思いながら聴いた音楽は、自分でも意外なことにレクイエムではなかった。
バッハのカンタータ第198番。
ザクセン候国の選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世の妃であるクリスティアーネ・エーバーハルディーネが亡くなった時に、その追悼式のために書かれた音楽がこのカンタータ。
国民的人気を誇った王妃を讃えるこのカンタータは聴くほどに素晴らしい作品だが、今まで8曲目のテノールのアリアに最も惹かれていた。
でも今夜は、4曲目のアルトのレチタティーヴォと続く5曲目のアリア「候妃は何と心安らかに死にたまいしか」が、なぜか一番私の胸に響く。
このピュアな美しさに満ちた天国的な音楽こそ君にふさわしい。
ゆっくり休んでください。
本当にありがとう。

<曲目>
■バッハ:カンタータ第198番「候妃よ、なお一条の光を」
<演奏>
■リリング(指揮)
■ゲヒンガー・カントライ
■アーリン・オージェ(ソプラノ)
■シュレッケンバッハ(アルト) ほか
コメント (4)
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