ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

アルフレート・ブレンデル/フェアウェル・コンサート

2009-11-14 | CDの試聴記
今日出張先の鹿児島から戻ってきた。
関東地方の天候不良とかで、鹿児島空港は30分以上遅れて出発、羽田空港へは1時間以上遅れて到着した。
羽田空港に着陸した後、時間を気にしながら何気なく窓を眺めていると、「ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ」という珍しい航空会社の飛行機を発見。
何だこの航空会社は?
えっ?ひょっとして、これがあの「エアフォース・ワン」(米国大統領専用機)?
ピンポーン。
来日中のオバマ大統領が乗るあの飛行機だった。
滅多に見れないエアフォース・ワンの実物を見ることができて、これは災い転じて何とやらだったのかも・・・

さて、自宅に帰った後は、先日届いた名ピアニスト・ブレンデルのラストコンサートのディスクを聴いた。
これは昨年12月に行われたソロとコンチェルトの二夜にわたるコンサートを収めたものだが、胸が熱くなるような内容だった。
ジュノームは、最初この曲にしてはいささかエネルギー不足のような印象をもったが、聴き進むにつれて次第に独特の味わい深さが私を魅了する。
とくに感銘を受けたのは第2楽章アンダンティーノ。
「ソ♭-ファ-ミ♭」と下降する音型をピアノが奏でる箇所では、ブレンデルが聴衆に向かって心の声で「アディオ」と語りかけているように思えた。
また、フィナーレの中間部メヌエットのしみじみとした表情も、本当に格別のものだ。しみじみとした情感を湛えてはいるが、決して涙の痕をみせないところがブレンデルらしい。
一方、ソロの演奏もいずれも素晴らしいが、とりわけハイドンの変奏曲とシューベルトの最後のソナタに私は心打たれた。

ブレンデルはまだまだ弾けるし、もっともっと私たちに大家の至芸をみせてほしかった。
でもこの引き際の鮮やかさも、ブレンデル一流の美学かもしれない。
彼の残してくれた珠玉のモーツァルトやシューベルトのディスクを、これからじっくり聴きなおしてみようと思う。

<曲目>
■モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番変ホ長調『ジュノーム』 K.271※
■ハイドン:変奏曲ヘ短調 Hob.XVII/6
■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18番ヘ長調 KV533/KV494
■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調 作品27-1
■シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D960
■ベートーヴェン:バガテル イ長調 作品33-4
■シューベルト:即興曲第3番変ト長調 作品90-3,D899
■J.S.バッハ:コラール・プレリュード『いざ来たれ、異教徒の救い主よ』BWV659
<演奏>
■アルフレート・ブレンデル(ピアノ)
■サー・チャールズ・マッケラス(指揮)※
■ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団※
<録音>
2008年12月19日:ウィーン、ムジークフェラインザール(ライヴ)※
2008年12月14日:ハノーファー(ライヴ)
コメント (4)
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