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ドン・キホーテばかりが「どんき」ではない 三河の奇祭

2015-12-30 01:31:24 | 写真とおしゃべり
 過ぐる20日、三河の奇祭「どんき」を見に、地域のクラブの人たちと愛知御津へ出かけました。
 100km以内は一日乗り放題というJR東海の「青空フリーパス」を利用。これだと正規の料金だと往復3,320円のところ2,570円と割安で、豊橋にも足を伸ばせるし、途中下車や支線も乗り放題です。


 岐阜を8時頃に発ったのですが、10時にはもう目的地へ着いてしまいました。それはいいのですが、祭りのスケジュールもろくすっぽ調べないで来たせいで、午後から始まるという祭りには随分余裕があります。そこで町を流れる音羽川沿いに海の方角へと南下して田園風物などを堪能することに。

 途中、東海道新幹線の橋梁があるのですが、けっこうダイヤは過密です。東西からひっきりなしに列車が差し掛かるのです。先般、こだまで三島まで行ったのですが、ひと駅で2本の列車に追い抜かれるさまを経験した折にも、それを実感したのでした。



 時間も迫ったので祭りの会場へ。祭りと聞くと神社を連想しますが、ここの祭りは長松禅寺という寺の行事なのです。
 祭りの前半は、寺の本堂で厳かに行われます。もちろん、私たちは中へは入れないのですが、漏れ聞こえるのは禅宗独特の打楽器を交えて祈りと「火の用心」や「喝!」という言葉。パンフによるとこれらは防火の祈りとのことです。

 ただし、この祈りの儀式が行われる本堂には、児童たちとその保護者と思われる人たちの参列(ただし位置取りは別。仏事は児童中心で保護者は参観席)が許されます。そしてこれが、祭りの後半の子どもたちの参加に関わることとなるのです。
 儀式が終わった一行は街を少しだけ練り歩き、また寺へと戻ってきます。


 
 そしてここからが奇祭の始まりなのです。
 行列でも練り歩いた天狗と烏天狗、それに白狐二匹が、手にした用具に紅殻を含ませ、それを子どもたちの顔に塗りつけてまわるのです。このとき、白狐のもつ棒状のものが、鐘を叩く撞木であり、それが「どんき」といわれることがこの祭りの名称の由来のようです。
 そして、この紅殻を塗られた子は無病息災で育つといわれています。


 
 子どもたちはこの紛争したもののけを囃し立てて逃げまわるのですが、そこは毎年の行事のこともあり、馴れあいもあってだいたいは捉まって顔に朱色の紅殻が塗られます。なかには本気で逃げてしまう子もいますが、反面、「塗って!」といって顔を差し出す子もいます。



 母親に抱かれた幼児未満の子もいます。母は子供の健康を願って子を差し出します。火がつくように泣き出す子もいれば、訳がわからずきょとんとしている子もいます。
 ある若いお母さんは、子供が暴れたのでしょうか、自分の白いブラウスも赤く染まっています。インタビューをしました。
 「紅殻って簡単におちるのですか」
 「いいえ、なかなかおちません」
 「でもブラウスが・・・・」
 「大丈夫です。毎年のことですから、汚れてもいいものを着てくるのです」



 白狐のパフォーマンスが圧巻でした。たぶん、もう祭りの酒がかなり入っているのでしょう。しぐさがオーバーで、嫌がる子を本気で追いかけねじ伏せて紅殻を塗っていました。

 写真には一見、祭りとは関係のない子どもや若い母親のものがありますが、前半の本堂での仏事から出てくる祭りの参加者です。みんないい表情でしょう(って私の好みがそのまま現れている)。



 この祭り、行政区分でいえば愛知県豊川市(お稲荷さんで有名なところです)の一地域のお祭で、参加者自体はさほど多くはないのですが、奇祭とあってカメラマンが多いのには辟易しました。せっかく良いシーンを撮ったつもりなのに、その前景やすぐ横にカメラを構えた人たちが写っていて台無しです。まあしかし、かくいう私もほかのカメラマンにとっては障害物であったかもしれないという点ではお互い様です。
 ちなみに関西訛りの人たちがいたので、「どちらから?」と尋ねたら、「神戸のグループです」とのこと。



 師走にこんなお祭りがあるなんて、いいですね。
 紅殻を塗られた子、塗られなかった子、ともにいいお正月を!

【蛇足】なぜ、この仏教行事で紅殻を顔に塗るのかはよくわかりませんが、インドの女性が顔に赤い点をつけることや、稚児行列でやはり額に赤い点をつけるのと関連があるのかもしれません。
 顔ではないけど、チベット仏教などでは紅殻色は高貴な色とされ、その寺院の柱や格子などは紅殻塗りのようです。







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