幻燈機のナイアガラは
落下しながら吠えたものだ
ここに世界がある
お前のいるところはフィクション
大陸横断鉄道の驀進は
身をくねらせて挑発し続けた
ここに世界がある
お前のいるところはフィクション
でも昭和の戦争は終わったばかり
ほら焼け跡からは煙が燻っている
居酒屋でうたた寝をするオヤジは
座敷わらしの淡い嘆きをを夢見る
世界に呼ばれても出て行けない
縁側の日溜りにも出て行けない
ナイアガラに虹がかかるとき
その弧は大陸横断鉄道の軌跡
ここに世界がある
お前のいるところはフィクション
そのフィクションの縁側辺り
昭和のネコが大あくびをする
幻燈機のくすんだ映像が揺れ
大陸横断鉄道はもはや赤い矢
ナイアガラヘと垂直に落ちる
オヤジが酔い覚めてしまうと
座敷わらしは当惑を袖で隠し
昭和のネコは思わず爪を研ぐ
世界はどこにある
フィクションでも構わないのだが
オイ、誰か別の幻燈機を持って来い!