109シネマズから名古屋駅方面を見る
映画をよく見るわりには、はじめていったシネコンである。
名古屋駅から徒歩10数分。
他でもやっている映画なのだが、時間の都合と、このシネコンの上映環境を見ておきたかったからだ。
結論から言うと、なかなか快適な雰囲気である。
109シネマズのスクリーン
ただし、平日であったということもあって入場者が少ない。
以下の二本の映画を観たのだが、そのうち前者は二人、後者は六人(後者は18:10の開始だから昼間ではない)という淋しさ。
駅前のミッドランド(駅から三分)にシネコンがオープンしたのも痛いのだろう。
でも、静かな環境で観たい私にとってはこの方がいい。
しかし、つぶれてしまっても困る。ウ~ン。
映画を観終わったあと、名古屋駅近くの居酒屋のディスプレー
*映画に関する感想は以下に記しました。ネタバレのないように具体的なことは書いていません。
『オリヲン座からの招待状』
昭和30年代を舞台とした『続・3丁目の夕日』が話題になっているが、この映画も又その頃が舞台で、往時を知っている人には懐かしい光景や風俗が盛り沢山出てくる。
それを背景とした恋愛映画だが、それは同時に、『ニューシネマ・パラダイス』の日本版として、映画へのオマージュともなっている。
中盤が少し描写不足なのと、若かった主人公二人と老いた二人との時間の経過による断絶が幾分気になるが、全体としてはしっとりとした味が出ていてよかったと思う。
私としては、好きな女優さん二人、宮沢りえと樋口可南子に出会えたのだから、それだけでも満足だったといえよう。
蚊帳の中のりえちゃん素敵だった。
可南子さん、大人の情感が溢れていた。
『クワイエットルームへようこそ』
私たちはおしなべて何らかの過剰を抱えながら生きている。
それらを飼い慣らし、平均値の中に押しとどめている内はいいのだが、そこからの逸脱は「異常」として、牢獄か病院に隔離される。
この映画はこの後者の方であるが、面白いのは、その異常とされたものの範囲内に、「普通の」異常とさらにそれを「超過した」異常があることである。
牢獄に於いては、これは懲罰牢に相当するのだろうが、病院に於いては、それが「クワイエットルーム」なのである。まさに、異常の頂点ともいえる空間なのだ。
要するに、「異常」と烙印を押された人たちの中に又新たな社会関係が生まれ、階層が形成されたりする。これには、治療スタッフも巻き込まれ、それをも含めた世界が、一見、外部と遮断されたようなところに出来上がっているように見える。
映画はそれらを、豊富なエピソードで綴って行く。それを追っていくうちに私たちは、一見、奇異に見えたこの隔離された空間が、それなりの論理と倫理のうちに形成されていることを知るところとなる。
そして、いつの間にか、彼女たち(女性病棟なのだ)に感情移入している自分を発見することとなる。
こんな風に書いてしまうと小難しくなってしまうが、これらが実にテンポよく、それぞれの登場人物のキャラが解きほぐされるように進むのだ。何よりもそれらが面白い。
松尾という監督は遊び心に満ちていて楽しい画面を作るのだが、どこか押さえるべきところは押さえているように思う。
劇中の集団ダンスシーンは、くったくから解放された彼女たちのそれぞれの表情が素敵だし、ラストシーンにも目が離せないシリアスな挿話と、コミカルなエピソードが用意されている。
そしてそれらが、隔離された内部と、外の世界との通路のようなものを象徴している。
出演者では主役の内田有紀が、「フラガール」の蒼井優などを従えて堂々たる演技を展開しているし、大竹しのぶの怪演も見逃せない。この人が出ると完全に場を支配する重みがある。