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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

ナチスの開発した技術の恩恵にあずかる

2010-02-20 12:36:38 | 歴史を考える
  

 戦争が様々な技術などを開発するという事実がある。
 原子爆弾などの核兵器の開発がその最たる例であるが、その他にも様々なものがある。ナチスのロケットは今なお大陸間弾道弾として活躍している。季節風に乗せて爆弾を運ぶという日本の風船爆弾は、そのプリミティヴさと不正確さで、技術として残ることはなかった。

 ナチス・ドイツは、先に見たロケットにとどまらず、様々な殺戮の技術、とりわけ大量殺戮のそれを開発した。ユダヤ人やロマ(当時の呼称ではジプシー)、コミュニストなどの反体制分子を殺し尽くすのがその政策の根幹にあったからである。その数おおよそ六〇〇万人であったという。

 大量の人間を殺すのに、ソビエト軍がカティンの森(ポーランド)で銃弾でもって一万二千人のポーランドの将兵を殺戮したという例もあるが、それは非効率的であるし、 一方で戦争を継続している中にあって、その弾薬も惜しまれる。六〇〇万人を殺すには六〇〇万発の銃弾が要るからである。
 
 そこでもっと効率がよく、一挙に大量の人間を「処分」できるようにと開発されたのがアウシュヴィッツなどに設置されたガス・シャワー室であった。これでもって一挙に効率は「改善」された。

 なぜ「改善」といったかというと、その前段階があったからである。その前段階というのは、箱形のトラックに人間を詰め込み、そこへガスを発射するという装置であった。この場合は、死体を埋める地点へ行く途中で殺戮を完了できるという利点があったが、一方、トラックに乗せることができる人数しか殺せないという点での限界があった。

 その「改善」による効率化がガス・シャワー室だったのである。中には、ちょっとした講堂にに相当する広さもあったという。かくして効率は「改善」された。さあ、ユダヤ人でもロマでもコミュニストでも、皆さんいらっしゃいということで、ドイツの支配するヨーロッパの地域から「最終処分」の対象者が集められた。

 今日の「朝日」朝刊は、徳島県と奈良市で、このガス・シャワー室の前の段階、つまりトラックの中で野良猫や野犬を処理する方法が採用されていて、既に一万数千匹がそれによって処分されていると伝えている。
 理由は、処分場近くの住人による処分場建設時の受け入れ条件にあるという。ようするに、「ここでは殺さないでくれ」ということだ。

 それに対して行政が応えたのが前述の方法である。
 それについての是非は敢えていうまい。ただし、住民たちや行政はナチスの開発した技術に感謝しながらも、たまにはそうした方法を含む殺戮手段によって六〇〇万人の人間が「処分」されたことを思い起こすべきだろう。

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4 コメント

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Unknown (さんこ)
2010-02-20 22:43:25
私も、新聞を読み、慄然としたのです。地域住民と
動物愛護を叫ぶ人たち等の非難を避けるために、施設でない搬送途中の車の中なら、良いだろうと考えるその思考回路が、怖ろしいです。ナチスがそれをやっていたのですか。なるほど。心が暗く重くなります。
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Unknown (N響大好き。)
2010-02-21 12:59:11
犬猫を捨てる人が多いのも、問題ですね。
ちなみに、犬は、現在は保健所ではなく、動物愛護センターの所管なのですが、月曜日の朝に、保健所に箱に詰めた犬猫を捨てていく人が多くて、困っています。保健所は犬猫を捨てるところではありません。動物を飼う以上、責任を持ってもらいたいものです。
なお、犬は行政の仕事ですが(繰り返し、保健所ではなく動物愛護センターです)、猫は行政の仕事ではありません。相談されても何ともしようがありません。猫については、住民が自分で何とかしてください。(蛇その他の猛獣は警察です)。
それから、道路で車にひかれて死んでいる猫は、ゴミですから、市の清掃センターに連絡して清掃してもらってください。ちなみに、家族のように可愛がっていた飼い犬、猫でも、死ねば「ゴミ」ですから、清掃センターに電話してください。電話で相談を受けて、「死んだ犬はゴミです。」と言ったら、怒鳴られたことがあります。こちらも忙しく、そこまで配慮した受け答えまではできません。
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Unknown (六文錢)
2010-02-22 00:23:55
>さんこさん
 あなたもおばママの目を盗んでうかつに外へ出ると危ないですよ。気をつけて下さいね。
 人間はさんこさんたちと違って「効率」とかいう名目でいろいろ残虐なことを考え出します。
 ガスの出るトラックというのは、ナチスのユダヤ人「移送」の責任者だったアイヒマンという人に対する尋問調書の中に、ガス・シャワー室の前段階で使われていたと出てきます。

> N響大好き。さん
 >>動物を飼う以上、責任を持ってもらいたいものです。
についてはまさにその通りですね。勝手に猫っかわいがりをしていたかと思えば都合が悪くなると急に捨てる、その無責任さが野良を増やしています。
 
 そんなこともあてか特に猫の場合、野良は都会の方がはるかに多いような気がします。今池にも沢山いて、夏場など調理場の戸を開けて仕事をしていると、仕込み途中や調理途中のものをかっさらわれたりするぐらいいいました。ビルの地階でですよ。
 しかし、いまの岐阜の片田舎ではほとんど見かけません。

 それから、確かに死んだ犬猫は法的にはゴミかも知れませんが、飼っていた人にとっては家族のようなものですから、やはり面と向かってゴミといったら怒ると思います。

 私はいままで三匹の犬と、一匹の猫を飼ったことがあり、猫はまだ月賦が終わっていない椅子のセットなどをひっかいてダメにしてしまうなどでもてあますところとなり、欲しがっていた義理の妹のところにやりました。
 犬のうち二匹は、まだその頃はうちの回りに人家がほとんどなかった時代なので、わが家の敷地内に埋葬しました。一匹は桜の木の下です。
 最後の一匹は火葬場へ運んでゆきました。すぐに焼いてくれるのかと思い花など用意していったのですが、ある程度たまったら焼くからそこへおいて置いてくれとのことでしたので、持っていった箱に花を乗せて帰ってきました。

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Unknown (さんこ)
2010-02-23 10:54:36
おばままが、もう30年以上前に書いた短編小説に「犬」というのがあります。野良犬が死んでいるところから、始まります。どうしようかと、自身が野良犬のような寄る辺ない身の、少女が「電話すれば、ゴミの車が持ってゆくよ」という大人の言葉に、どうしても、同意できなくて、アルバイトを休んで、犬の亡骸を、火葬場まで運んでゆくというそれだけの小説です。井上光晴さんにも、これはいいねと褒められた短編です。
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