今年は豊作であった。収穫は四度に及び、その一度一度の量も多かった。また、その粒も例年よりやや大きかったように思う。そのそれぞれは、娘が勤務する学童保育の子どもたちのおやつになった。
収穫時期も明らかに早かった。かつては連休明けからの収穫だったが、今年はこの三日をもってもう終了だ。厳密にいえば、むろん多少は残っている。しかしこれらは、これまでぶら下げていた鳥よけの10枚以上CDを取り除いて、鳥たちの食に供したいと思っている。
ところで今年は、その終焉にあたってひとつの物語があった。4回目の収穫をしていたら、近くのケーキ屋のオーナーパテシエが通りかかった。このケーキ屋、評判が良くて岐阜市内で2軒目を営み、X’masには顧客の車で渋滞するので、警備員が出たりする。
このオーナーパティシエ、私より年下だが、自宅が近く、かねてより顔見知りで、また、彼の趣味が植物いじりとあってけっこう話が弾む。
収穫時期も明らかに早かった。かつては連休明けからの収穫だったが、今年はこの三日をもってもう終了だ。厳密にいえば、むろん多少は残っている。しかしこれらは、これまでぶら下げていた鳥よけの10枚以上CDを取り除いて、鳥たちの食に供したいと思っている。
ところで今年は、その終焉にあたってひとつの物語があった。4回目の収穫をしていたら、近くのケーキ屋のオーナーパテシエが通りかかった。このケーキ屋、評判が良くて岐阜市内で2軒目を営み、X’masには顧客の車で渋滞するので、警備員が出たりする。
このオーナーパティシエ、私より年下だが、自宅が近く、かねてより顔見知りで、また、彼の趣味が植物いじりとあってけっこう話が弾む。
「ところで、お宅なんかでも桜桃をお使いになるでしょうが、佐藤錦のような高級なもので、こんなのは使えないでしょう」
というと、
「いえいえ、とんでもない、こんな可愛い実をポチンと乗せたら魅力的なケーキができるなぁと思っているところですよ」
との返事が。
「そうなんですか、じゃあ残りもので悪いですが、まだ実がついている分全部差し上げますからどうぞお穫りになってください」
「いいんですか。じゃあ、遠慮なく頂いて、若い衆に穫りにこさせますが」
「どうぞどうぞ」
その後、表の方でゴソゴソしている気配はあったが、私が顔をを出すと指図がましくなるので敢えて控えていた。その気配が収まってから出てみると、熟したものはほとんど穫られていたが、まだ残っているものもけっこうあった。
しかしその段階で、人間のための収穫はこれでおしまいと、上に書いたように、鳥たちに任せるようにしたわけだ。
その日の陽が落ちてからのことだった。玄関のチャイムが鳴る。誰がこんな時間にと思ったら、若い女性がにこやかに立っている。
「ご用件は何でしょう」
と訊くと、あのケーキ屋からとのことで、
「先ほどはありがとうございました。社長がお礼の印にこれをお持ちしろとのことで・・・・」
と、ケーキが入った箱を置いていった。
私は左党だから、ケーキなど自家消費用に買ったこともなければ口にしたこともほとんどない。その箱の中で知っている唯一のケーキ、ショートケーキを何十年ぶりかで味わった。あえて合わせるなら白ワインかななどと考えるのだから、やはり左党健在というところか。
かくて、わが家の桜桃の今季は終了に至った。
樹の勢力は今が全盛期、来年も同様の豊作が期待される。
唯一の難点は、この私が健在でいられるかだ。