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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

正男氏と正恩氏 金王朝の行方はどうなるのだろうか?

2017-02-20 11:46:56 | 社会評論
 挿入した写真は私が撮ったものですが、本文とは関係ありません。

 金正男(キム・ジョンナム)氏が暗殺された。
 韓国などはいち早く、これが朝鮮民主主義人民共和国の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)氏の指示によるものと断定している。
 その点については、容疑者の何人かを拘束しているマレーシア当局がまだ慎重な姿勢を崩してはいないが、状況証拠としては朝鮮民主主義人民共和国の組織的な行為を伺わせるものがあるように思う。

             

 もし、そうであるとしても、それがなぜこの時期にというのは、憶測の域をでない。ワイドショーなどで訳知り顔に述べ立てる人たちも、ほんとうに事態の背後を衝いているのかどうかは疑問である。
 もちろん、私にもその辺の事情はさっぱりわからない。

 ただ、ここにきてめだつのは、日本の各メディアが、金正男氏に対してかなり好意的に報じていることである。それが悪いといっているのではないが、最後に述べるように、多少の違和感がある。
 なぜ金正男氏は好意的に報じられるのだろうか。

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 あたりまえのことだが、そのひとつには彼が加害者ではなく被害者であったということである。一般的にいっても、被害者が極悪非道の人などでない限り、被害者の方にシンパシーが集まることは必然である。
 もしこれが、朝鮮民主主義人民共和国の指示によるとしたら、彼の死はスケープゴートのそれとしていっそう同情の的となる。

          

 さらにいうならば、ひょっとしたら金王朝の三代目を彼・金正男が継いだかもしれない可能性があったにもかかわらず、今や流浪の身であるということからして、ある意味での貴種流離譚(?)として受け止められている向きもある。

 もうひとついうならば、これは日本だけの特殊事情だが、その名前、「正男」が日本人の名前と類似性をもち、町内に一人ぐらいはいそうな感じを与えるからであろう。
 加えて、金正恩氏の私生活がまったく見えてこないのに反して、金正男氏の方は極めて断片的ながら、その語学力、教養などがほの見え、彼とメールの授受をしていた人なども現れるなど、人間としての顔が幾分知られているということもあろう。

          

 ところで、当の朝鮮民主主義人民共和国の方だが、ミサイル発射や核開発などに加えて、今回の暗殺=テロルが確定的になれば、ますます国際的に孤立するところとなるであろう。
 しかし、しかしである。あえていうならば追い詰めて孤立させればいいというわけではないと思う。むしろそれは、ますます独善的になり、窮鼠猫を噛むにいたり、ある種の悲惨を招く可能性すらある。

 私の持論はむしろ交流の深化、拡大の必要性である。
 これはわが国がいまも堅持している制裁とはまったく異なり、人、物の交流を拡大するということである。これらの拡大は、当然、情報の交流が伴う。つまり、朝鮮民主主義人民共和国の然るべき人たち、さらにはいまのところ金体制公認の情報以外が遮断されている一般の人々に、自分たちの外部の状況を知らしめるということでもある。

          

 彼らはいま、そのイデオロギー的な締め付けと抑圧のテロル、そして情報の遮断によって自己の体制を絶対視している。それに対し、外部からの情報の流入は、自らの置かれた状況を相対視し得るチャンスを与える。
 かつて、ソ連圏を覆っていた鉄のカーテンが崩壊したのも、人々が外部の情報に触れ、自分たちの相対的な惨めさを実感していたからに他ならない。

          

 折から、拉致被害者家族会が基本的な方針を転換したというニュースが入ってきた。これまでの会は、どちらかというと政府に対し、もっと強く高圧的に交渉に当たれという立場だったような気がする。しかしながら、一方では制裁を強化しながら、一方では譲歩を引き出そうとするのは所詮無理な話である。
 拉致被害者家族会の新しい方針は、より柔軟に、条件付きも含めて話し合うというよりソフトなものだ。これは正解だろうと思う。ただし、頑ななわが政府自身が、そうした姿勢に転じるかどうか問題ではあるが。

 おっと、話題を広げすぎた。金正男氏の話に戻ろう。
 率直にいって、被害者だからといって、いまさら金正男氏を持ち上げるのもどうかと思う。彼の立場は、金王朝の三代目選びの中で与えられた一つの立場、役割だったのであり、もし彼が三代目に選ばれていたら、逆に、金正恩氏を暗殺する側に回っていた可能性もあるからである。

          

 それを裏付けるように金正男氏自身がどこかで語っているという。
 それによれば、なぜ自分ではなく正恩氏が後継者に選ばれたかというと、自分より正恩氏の風貌が、初代、金正日(キム・ジョンイル)氏に似ていたからだという。世襲制の独裁体制のもとでは、後継者が、初代と風貌その他で共通点をもったほうが有利だという話はありうることである。
 そして、それが事実だとすると、その選択は極めて恣意的なものであり、私がいう両者の立場の逆転もあり得たということになる。

 いずれにしても、問題は金正男(キム・ジョンナム)氏と金正恩(キム・ジョンウン)氏の個性の問題などではなく、その世襲制の王朝の問題である。
 こうした世襲制の王朝を周辺の雑音なしに純粋に維持するために、邪魔者は消すということは常道であり、そうした世襲制にまつわる近親憎悪的なできごとは、これまでの歴史の中で、西洋でも、この国でも例外なくみられた事実なのである。
 

コメント
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