●2月18日(水)
午後から県立図書館へゆく。既読分を返し、興味のあるものを3冊ほど借りる。返却まで3週間だから、これぐらいが限度だろう。
老齢による理解力減退と、ノートをとって読むための遅読、それに興味があると他の枝道へ行ってしまうでたらめな読書法のせいで、いつも読了は遅れる。
当初借りたのは、
「テロルの時代と哲学の使命」 ハーバーマス、デリダほか(岩波)
「革命の芸術家 C・L・R・ジェームズの肖像」ポール・ビュール
「デリダ 10年目の遺産相続」 「現代思想」臨時増刊号
の3冊。いずれもボリュームがあって読み応えがありそうだ。
それで出ようとして、ふとカウンターの掲示を見たら、次の返却日は3月の22日とある。棚卸しか何かで通常より一週間延びているのだ。
「ラッキー」とばかりに取って返し、もう一冊小むづかしいものと、小説「風の影」(カルロス・ルイス・サフォン)上下2巻を借り足した。
でも4週間で完読できるかどうかは自信がない。
図書館を出ると、黄昏の気配が漂っていた。
●2月19日(木)
出発前の岐阜駅付近と到着した名古屋駅付近
同人誌の編集会議で名古屋は上前津へ。欠席の人もいてやや寂しいが、それでも次号の最終段階の確認がとれてホッとする。
会議終了後、松坂屋に用があるというYさんと栄方面へご一緒する。
Yさんとはお互い18の時からの知り合いだから、もう60年近いお付き合いになる。はじめてお目にかかったあの紅顔の美少女と美青年(?)の頃からは想像もできなかった長いお付き合いだ。人の世のエニシは不思議なものだ。
Yさんの目的地で別れて私は愛知県芸術文化センターへ。
映画を見る予定があるのだが、それまでにずいぶん時間があるので、なにか面白い美術展でもやっていないかなと思ったのだ。
メインの催しにはなんとなく食指が動かなかったので、館全体で展開している「アーツ・チャレンジ」といういわゆるモダン・アートの展示を見て回ることにする。これは、「あいちトリエンナーレ」の前哨戦のようなもので、館内の各展示を観て歩くスタンプ・ラリーになっていて、それに従って回る。
会場は、12階、11階展望回廊、2階、B1階、B2階と分かれていて、結構の運動量になる。上前津から地下鉄二駅分を歩いてさらに歩くのだからかなりのものだ。
ちなみにこの日の歩数は約1万歩を記録した。これは昨年末、肺炎を患って以来のもっとも多い運動量といえる。
さて、肝心の作品だが、私が一番面白かったのは11階展望回廊の全体を使った鳴り交わす硝子の器たちであった。タイトルは、「Sound of the Sun」。
回廊の窓沿いに大小、色とりどりのガラスの器が並べられている。その器に入っている白い端子のようなものが振動すると、それぞれの器がチンチンとかカチカチとかかすかな音を立てる。一つ一つのそれらは耳を澄まさないと聞こえないぐらいなのだが、そうした器がズラリと100個近く並んでいるのだから、それぞれが放つ微音が混じりあったハーモニーとなって、優しく回廊中に響き渡っている。
もちろん、耳を聾するようでは決してないし、音源が多いせいで音の指向性が曖昧で、まさに全身を包み込む感じの音だ。
で、どうして端子が振動し硝子の器を鳴らすのか、その仕組を折から自分の作品を点検に来た作者(片岡純也氏)にじかに訊いてみた。それによれば、ガラス窓に取り付けられた超小型の太陽電池が、まさに太陽のエネルギーを振動に代え、それが器を打って音に代わるという仕掛けなのだ。したがってこれは、まさに「太陽の音」なのだ。
そして彼はこう付け加えた。
「今日は最高の音なんですよ」
というのは、太陽電池の性格からして、日照によってその機能は異なる。そして私が観に行ったのはこの時期としては最高にいい天気の日だったのだ。
音もだが、陽射しを受けた硝子の器のシルエットも美しい。
私はすっかり気に入って、この回廊を二往復した。
ラリーのスタンプを埋め尽くしてすべてを観たのだが、やはり私のイチ押しはこの「太陽の音」だった。
これは、この回廊にあっても決してじゃまにならないから、常設でもいいくらいだと思った。
スタンプを埋め尽くした記念品にちょっとした小物を貰った。
そうこうするうちに、予定していた映画の時間が近づいたので駅西のシネマスコーレへ。
駅西から見たツイン・タワー
その映画についてはもう「つぶやき」に書いたので、そこからの引用。
「安藤サクラ主演の『百円の恋』を観る。(安藤さんは)『かぞくのくに』で好きになった。この映画でも素晴らしい。前半の表情、ボクシングに熱を入れはじめた表情、試合の 表情、それぞれが別のキャストと入れ替えたかのように変わる。やっぱり役者だ。最後、勝ってしまったらつまらないなと思って観ていたが、監督は期待を裏切 らなかった。」
昼食以後あちこち歩きまわったので腹ごしらえをということで、スコーレの前の「cafeロジウラのマタハリ春光乍洩」へ。
店主のりりこさんとはネット上でおなじみだからあまり久しぶりという感じはない。
カウンターで、彼女が応援していてくれる同人誌などの話や最近観た映画の話をする。
横では私の孫ぐらいの若い子が二人、何やら「片思い」について話している。帰りがけに、隣へ、学生時代にシネマテークへよくきていたという女性がやってくる。こちらは私の若い姪ぐらいの歳頃だろうか。
ちょっとめげそうな家庭の状況の中で、転職を巡って努力をしているところらしい。ある意味では深刻な内容を含むのだろうが、それを話す彼女の表情や声は意外と明るい。
「片思い」の子たちも、隣に来た人も、ここへ来る女性(男性はあまり知らない)はみんなとても素直な人が多いようだ。やはり、りりこさんの人柄だろうか。
「みんながんばれ!」と胸の内で叫んで店を出る。
久々の長時間の外出で、しかも結構歩いたせいで疲れてはいたが、なんとなく夜風が清々しく感じられた。
午後から県立図書館へゆく。既読分を返し、興味のあるものを3冊ほど借りる。返却まで3週間だから、これぐらいが限度だろう。
老齢による理解力減退と、ノートをとって読むための遅読、それに興味があると他の枝道へ行ってしまうでたらめな読書法のせいで、いつも読了は遅れる。
当初借りたのは、
「テロルの時代と哲学の使命」 ハーバーマス、デリダほか(岩波)
「革命の芸術家 C・L・R・ジェームズの肖像」ポール・ビュール
「デリダ 10年目の遺産相続」 「現代思想」臨時増刊号
の3冊。いずれもボリュームがあって読み応えがありそうだ。
それで出ようとして、ふとカウンターの掲示を見たら、次の返却日は3月の22日とある。棚卸しか何かで通常より一週間延びているのだ。
「ラッキー」とばかりに取って返し、もう一冊小むづかしいものと、小説「風の影」(カルロス・ルイス・サフォン)上下2巻を借り足した。
でも4週間で完読できるかどうかは自信がない。
図書館を出ると、黄昏の気配が漂っていた。
●2月19日(木)
出発前の岐阜駅付近と到着した名古屋駅付近
同人誌の編集会議で名古屋は上前津へ。欠席の人もいてやや寂しいが、それでも次号の最終段階の確認がとれてホッとする。
会議終了後、松坂屋に用があるというYさんと栄方面へご一緒する。
Yさんとはお互い18の時からの知り合いだから、もう60年近いお付き合いになる。はじめてお目にかかったあの紅顔の美少女と美青年(?)の頃からは想像もできなかった長いお付き合いだ。人の世のエニシは不思議なものだ。
Yさんの目的地で別れて私は愛知県芸術文化センターへ。
映画を見る予定があるのだが、それまでにずいぶん時間があるので、なにか面白い美術展でもやっていないかなと思ったのだ。
メインの催しにはなんとなく食指が動かなかったので、館全体で展開している「アーツ・チャレンジ」といういわゆるモダン・アートの展示を見て回ることにする。これは、「あいちトリエンナーレ」の前哨戦のようなもので、館内の各展示を観て歩くスタンプ・ラリーになっていて、それに従って回る。
会場は、12階、11階展望回廊、2階、B1階、B2階と分かれていて、結構の運動量になる。上前津から地下鉄二駅分を歩いてさらに歩くのだからかなりのものだ。
ちなみにこの日の歩数は約1万歩を記録した。これは昨年末、肺炎を患って以来のもっとも多い運動量といえる。
さて、肝心の作品だが、私が一番面白かったのは11階展望回廊の全体を使った鳴り交わす硝子の器たちであった。タイトルは、「Sound of the Sun」。
回廊の窓沿いに大小、色とりどりのガラスの器が並べられている。その器に入っている白い端子のようなものが振動すると、それぞれの器がチンチンとかカチカチとかかすかな音を立てる。一つ一つのそれらは耳を澄まさないと聞こえないぐらいなのだが、そうした器がズラリと100個近く並んでいるのだから、それぞれが放つ微音が混じりあったハーモニーとなって、優しく回廊中に響き渡っている。
もちろん、耳を聾するようでは決してないし、音源が多いせいで音の指向性が曖昧で、まさに全身を包み込む感じの音だ。
で、どうして端子が振動し硝子の器を鳴らすのか、その仕組を折から自分の作品を点検に来た作者(片岡純也氏)にじかに訊いてみた。それによれば、ガラス窓に取り付けられた超小型の太陽電池が、まさに太陽のエネルギーを振動に代え、それが器を打って音に代わるという仕掛けなのだ。したがってこれは、まさに「太陽の音」なのだ。
そして彼はこう付け加えた。
「今日は最高の音なんですよ」
というのは、太陽電池の性格からして、日照によってその機能は異なる。そして私が観に行ったのはこの時期としては最高にいい天気の日だったのだ。
音もだが、陽射しを受けた硝子の器のシルエットも美しい。
私はすっかり気に入って、この回廊を二往復した。
ラリーのスタンプを埋め尽くしてすべてを観たのだが、やはり私のイチ押しはこの「太陽の音」だった。
これは、この回廊にあっても決してじゃまにならないから、常設でもいいくらいだと思った。
スタンプを埋め尽くした記念品にちょっとした小物を貰った。
そうこうするうちに、予定していた映画の時間が近づいたので駅西のシネマスコーレへ。
駅西から見たツイン・タワー
その映画についてはもう「つぶやき」に書いたので、そこからの引用。
「安藤サクラ主演の『百円の恋』を観る。(安藤さんは)『かぞくのくに』で好きになった。この映画でも素晴らしい。前半の表情、ボクシングに熱を入れはじめた表情、試合の 表情、それぞれが別のキャストと入れ替えたかのように変わる。やっぱり役者だ。最後、勝ってしまったらつまらないなと思って観ていたが、監督は期待を裏切 らなかった。」
昼食以後あちこち歩きまわったので腹ごしらえをということで、スコーレの前の「cafeロジウラのマタハリ春光乍洩」へ。
店主のりりこさんとはネット上でおなじみだからあまり久しぶりという感じはない。
カウンターで、彼女が応援していてくれる同人誌などの話や最近観た映画の話をする。
横では私の孫ぐらいの若い子が二人、何やら「片思い」について話している。帰りがけに、隣へ、学生時代にシネマテークへよくきていたという女性がやってくる。こちらは私の若い姪ぐらいの歳頃だろうか。
ちょっとめげそうな家庭の状況の中で、転職を巡って努力をしているところらしい。ある意味では深刻な内容を含むのだろうが、それを話す彼女の表情や声は意外と明るい。
「片思い」の子たちも、隣に来た人も、ここへ来る女性(男性はあまり知らない)はみんなとても素直な人が多いようだ。やはり、りりこさんの人柄だろうか。
「みんながんばれ!」と胸の内で叫んで店を出る。
久々の長時間の外出で、しかも結構歩いたせいで疲れてはいたが、なんとなく夜風が清々しく感じられた。