「1941 決意なき開戦」 堀田江理著、人文書院 2016年。
日米開戦に至る経緯をたどり、国際情勢の推移も踏まえつつ、日本指導部が 「決意なく」 なし崩しに開戦を決定するに至ったことを明らかにします。
しかし、組閣後の連絡会議で、東条氏が開戦論を抑えるために尽力したかのように書いていますが (285P~)、根拠が薄弱です。「東条の心中で、ますます開戦への疑問が募っていた。」(298P) 東条は、開戦を強硬に主張する杉山参謀総長に、「『オ上ニゴ納得シテイタダクノハ容易デハナイト思フ』と述べた。オ上のほうは、東條が開戦強硬派を抱き込むことを大いに期待していた。それこそが、東条内閣に課された使命なのだった。」(299P)
とするのですが、天皇が開戦に反対で、そのために東条氏を首相にしたというのは天皇の責任を回避するための後講釈だと思います。交渉継続のことは明示されてはいなかった。東條内閣成立時に、海軍に、互いに協力して、といえば東条に協力してやれという意味に取られる可能性も大いにあったはず。
東條自身は、組閣にあたって東郷重徳に入閣を打診したとき、「強硬意見を持した自分に大命が降下したのであるから、駐兵問題については何処迄も強硬なる態度を持続していい筈と思ふ」 (「東郷重徳外交手記」160-161p ~安井淳 「開戦過程の研究」 40p) と発言しています。
東條総理という、肝心なところがあいまいなので、折角の大著も画龍点睛を欠く、と言わなければなりません。
(わが家で 2019年3月13日)
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