魔人の鉞

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内向型人間の時代!

2018-01-31 12:58:45 | 文明史・進化論・哲学

ここ数日、スーザン・ケイン「内向型人間の時代」を読んで
いました。古草秀子訳、講談社 2013年。

私は一昨年に1500世帯の町内会の会長になり、昨年初めて、
市コミュニティセンターで300人ほどの聴衆を前に15分程度の
事例発表をすることができましたが、もともとは内気な人間
でした。

この本の19-20ページに、内向的か外向的か判定する20項目の
質問が載っています。 〇が多ければ内向型だというのに、私は
なんと18個が〇、✖ は無しという結果でした。折り紙付きの
内向型ということでしょう。

アメリカでは20世紀前半に「セールスマン」が誕生し、「人格
から性格へ」という、価値観の大変動があったとしています。
以来、明るく社交的な外向的性格崇拝は信仰といえるほどです。
しかし著者はいま内向型が見直されるべきだという、素晴らしい
見解を表明しています。
少なくとも、外向的な人だけでは良くなく、両者がバランスよく
かみ合ったときに素晴らしい成果が生まれると言っています。
ブレーンストーミングや開放型オフィスなどの、ひと昔前に
流行した新集団思考は役に立たないと切り捨て。私もそれには
賛成です。

沈思黙考・人格高潔な人物は素晴らしい。何といってもかの
ガンジーです。スーザンはかれの言葉を引用していますが、
なるほどと思う言葉です。

「沈黙は真実を信奉する者の精神的規律なのだと経験から教え
られた。私の内気さは私の盾であり甲羅である。それは成長を
もたらす。私が真実を見抜くのをいつも助けてくれる。」252p

これまでたくさん失敗もありましたが、内気さを恥じず、もう
少し生きてみたいと思います。
    (わが家で  2018年1月31日)

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情けは人のためならず~進化心理学から

2018-01-28 13:00:16 | 文明史・進化論・哲学

久しぶりに本を。 「野蛮な進化心理学」 
原題 Sex,Murder,and the Meaning of Life. 
ダグラス・ケンリック著、山形澄生・森本正史訳、白揚社 2014年。

たいへん読み応えのある、素晴らしい考えがたくさん詰まった、密度の濃い本です。
人の心に棲む殺人願望や浮気、偏見といった非道徳的なことも、母性愛や分かち合い、公正さといったことも、自然のプロセス、つまり進化によって育まれてきたのではないか、というのが進化心理学の考えです。88 p

動物たちもそれぞれの種で感じ方や集団行動の型を持っていますが、それも進化の産物でしょう。
遺伝学者ショーン・キャロルは、遺伝子の数が思ったより少ないこと、「その大半がゴキブリと人間といったかけ離れた種の間で共有されていることに驚きを隠せなかった」と書いているそうです。257p 
私は、動物には精神がない、といった決めつけは誤りだと思います。サルはもちろん、いろいろな野生動物がかなり社会的な集団を作っています。心も、それぞれの種の生存と繁殖に有利なように進化してきたと考えてなんの不思議もありません。

それからすると、宗教もそうした心の進化の結果として生まれてきたのではないかと考え、研究が進められているそうです。212p  
私は、宗教が道徳を規定するのではなく、ヒトが生存し繁殖するために有益な道徳が進化し、宗教が形成されてきたと考える方が妥当だと思います。そう考えたときに、宗教とくにイスラム教やヒンズー教が新しい人間道徳にマッチしたものに変わる可能性が出てくるのではないでしょうか。まだ数百年かかるかもしれませんが。

また著者は、自己は一つの自己ではなく、いくつもの下位自己があると考えています。知覚や記憶などの神経回路はそれぞれに異なっていることが分かってきましたが、自己というものも立場や相手関係によっていくつもの下位自己があり、情況によってそのどれか一つがその場の主導権を取って判断し行動する、と考えるほうが理にかなっていると主張します。116p  複雑な人間行動を理解するのに、たいへん参考になる理論です。

マズローの動機のピラミッドは、人間の動因を生理的欲求から自己実現に至る5段階で考えたものですが、著者はその上に配偶者の獲得、配偶者の維持、子育てという3段階を上乗せし、子育てを最上位の動因としました。子育て中の著者の実感から生まれたものでしょう。149p

また、力学における複雑系の理論を取り入れて、心理学に応用しています。256-257p
それによると、
1.多方向の因果関係 
  原因-結果は一方向ではなく、多方向で逆向きもある。
2.自然は自己組織化に満ちている  
  秩序はランダム性から自然発生的に生まれ、支配権力ではなく、集団の成員が単純で利己的なルールに基づいて行う局所的な相互作用によって維持される。
3.相互作する要素がごく少数しかなくても、とんでもない複雑性が生まれることがある。

著者は「文化・歴史・経済といった大規模なパターンは、集団を構成する各個人のそれぞれの意思決定相互作用をした結果として生まれてくる」 と主張します。「全てを監視するビッグブラザーなど存在しないし、一部の意思決定者が世界の行く末を握っているわけでもない」と。271p
これは少し楽観的すぎると思いますが、庶民こそが主役である、ということならば賛成です。

そしてこの本のまとめにはこうあります。
「人間は他の人間を支える網の目に組み込まれるようにできているのだ。」283p
「人間には、周りの人たちと固い絆を結んだときに気分がよくなるように設計されたメカニズムが、しっかりと組み込まれているらしい。」259p
これを読んであることわざが頭に浮かびました。

「情けは人のためならず」。今日では、人のためにならないという逆の意味に取る人も多いようですが、人のためではなく、自分のためなんだ、ということです。アメリカの最新の心理学者が、日本の古いことわざを裏打ちする学説を発表していることに、感じ入りました。
    (わが家で  2018年1月28日)

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「オレ様化する人たち」 を読んで

2018-01-16 13:02:10 | 文明史・進化論・哲学

「オレ様化する人たち」 片田珠美、朝日新聞出版、
2016年。

この頃は大統領や総理ばかりか一般人もオレ様化しているな、と思っ
て手に取りました。

読んでみると、トランプ大統領にほとんどすべて当てはまるので、
なるほどと妙に納得。
成功体験に酔い、自分が万能だと思い、人の意見を聞かない。イエス
マンばかりが集まってしまう、どうしようもないダメ男です。あれで
はアメリカは駄目になってしまう。次のリーダーは中国でしょう。
仲良しの安倍氏も、類が友を呼ぶというところではないでしょうか。

傲慢な人物がのさばる要因としてもっとも大きいのがイネイブラー
(支え手) の存在だそうです。(113p)
「嗜癖その他の問題行動を陰で助長している、身近な人のこと」(NPO
法人 日本トラウマ・サバイバーズ・ユニオンによる) だそうです。
その行動は3段階に分けられるといいます。

第1段階  許容  しょうがないなで済ます。
          理由は、主として怠惰、自己保身、恐怖。
          家庭から会社や町内会、どこにでも誰でも         
          あることです。
第2段階  忖度  傲慢人間の気持ちを推し量って、欲望を満たす
          ように計らう。東芝の不正経理事件が例と
          してあげられていますが、森友・加計問題も
          そうです。忖度は悪くない、という人まで
          出てきました。それが美しい日本ですか??
第3段階  称賛  ここまでくると、どうしようもない。

韓国の文大統領が南北会談の実現についてトランプ大統領の貢献をほめ
讃えたのはあからさまなおべっかだが、トランプは気に入ったらしい。
安倍氏の周辺でも、第3段階まで来ているのではと心配です。
小林よしのり氏のゴーマンも、それで売れてしまったのでますます
傲慢になり、まったく鼻持ちならないですね。とてもまともな言論人
とは言えません。もてはやされているのは危険です。 

しかし自分が傲慢人間になっていないか、第6章で点検してみました。

①.自分は絶対正しいと思っていないか
時々、個別の事柄ではそう思うこともあります。しかしそれを強硬に
主張しないように気をつけています。

②.自分が一番よく分かっていると思っていないか
町内のことはよく分かっているつもりだが、知らないことも少なく
ありません。人の話を聞くことが大切。

③.周囲が全員馬鹿にみえることはないか
まだまだ勉強する事が多いので、こんなことはありません。
著者は 「能ある鷹は爪を隠す」 ことを推奨していますが、現代では
嫌みにならない程度に爪を見せるのが良いのではないかと思います。
「能ある鷹はさりげなく」 でどうでしょうか。

④.成功した時ほど要注意
まだ成功といえるほどのことをしていないので。

⑤.許せないという思いにとらわれていないか
いろいろな事があり、腹が立つこともある。しかしいつまでも根に
持たないよう、心がけたいもの。相手の良いところを見直そう。

⑥.風通しが悪くなっていないか
自分では開放的なつもりでも、相手が時に威圧的に感じることもあり
得る。そうなると意見が出にくくなる。言葉遣いや物腰に気をつけ
よう。

自己採点では大丈夫ですが、家内にはときどき傲慢だと怒られます。
自分で気づかないところは人に言ってもらうしかありませんね。

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