魔人の鉞

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加藤陽子先生に 歴史の見方を

2023-08-05 08:37:40 | 第2次大戦
明日はヒロシマ原爆記念日。
きのう、加藤陽子東大教授の「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」(朝日出版社 2016年) を読みました。
高校生に講義するというスタイルですが、当時の状況と、世界各国の思惑、それらを的確に把握して歴史を再構築するという、なかなか読み応えのある内容でした。

私が知らなかったことで一番驚いたことは、森山優氏の研究で日本もアメリカの暗号電信 (ハル国務長官~在日アメリカ大使館) を90%ほどは解読していた、という事です。(313p) 日本の暗号が解読されていたが日本は相手のものを解読できていなかった、というのは大変な思いこみだったのです。

そして近衛総理の対米交渉はかなり実現可能性があったようです(334p~)。アメリカも当時は対日開戦を避けたかった。「日米諒解案」は私人の作文と批判する人もいるが、決してそうではなく、米政府も暗黙に一枚かんでいたのです。関わっていても公式にはそう言わないのが外交交渉というものでしょう。足を引っ張ったのは、権力と戦争が大好きな日本軍人とその応援団です。
(天皇は交渉支持だったが、だんだんと開戦に傾いていき、ついに最強硬派の東条を総理にし、開戦に突っ込んでしまいました。何が「虎穴に入らずんば」ですか。まったくグズ、優柔不断な大元帥でした。)

また、三国同盟は対米軍事同盟とみなされていたが、じつはドイツ勝利が確実と思われた戦後の世界分割支配について、日本が「大東亜」の支配権を確保することが日本の最大の狙いだった、と加藤氏は解説します (277-278p)。各国の勢力圏を規定していますが、対米自動参戦条項はなく、日本はあくまで自分の都合で参戦すればいいという形です。

そして、井口武夫氏の研究により、真珠湾直前の対米通告の遅れは大使館員の怠慢ではなく、軍部が通告文を分割した最後の第14部の発信をぎりぎりまで遅らせるよう命令したからだという事 (411p)。おまけに軍は、「一切の責任はそちら」という最後通告の文言を発信直前に削除してしまったというのです (412p)。これでは最後通告になっていないことになります。

アメリカにも妥協派がおり、強硬派がいた。けっして一枚岩ではなかったというのも理解できる話です。

分かっているつもりでまだまだ分からないことがあります。
謙虚でないといけませんね。
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